有廣昇司氏(国立循環器病研究センター) |
非弁膜症性心房細動(NVAF)を有する脳梗塞患者における再発予防には,抗凝固療法が不可欠である。わが国では2011年3月にはダビガトランが,2012年4月にはリバーロキサバンが臨床で使用可能となり,治療の選択肢が広がった。しかし,出血発症時の対応や脳梗塞再発時の血栓溶解療法の適否など,解決すべき問題が多い。
そこで,NVAFを有する脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)患者における多施設共同前向き観察研究が計画され,第37回日本脳卒中学会総会(2012年4月26〜28日)にて,有廣昇司氏(国立循環器病研究センター)が4月27日に研究デザインを発表した。
●研究デザイン
Stroke Acute Management with Urgent Risk Factor Assessment and Improvement (SAMURAI)-NVAF研究は,発症7日以内に入院または外来診療を開始したNVAFを有する急性期脳梗塞・TIA患者において,抗凝固療法の選択内容によって脳梗塞の再発や出血イベントなどの転帰にどのような差異が生じるかを解明することを目的としている。
対象患者の性別,年齢の制限は設けず,急性期に脳外科手術を受けた症例も登録可とした。除外基準はリウマチ性僧帽弁疾患・人工弁置換術・僧帽弁修復術の既往のある症例,活動性感染性心内膜炎を有する症例などとした。
研究期間は2011年9月1日〜2015年12月31日であり,目標登録数は1,000例としている。
●研究内容
登録は暗号化されたwebデータベースにて,対象症例を匿名化し,性別,年齢,NVAFの特徴(初発/再発,持続性/発作性),抗血栓薬服用歴,脳梗塞・TIAの性状,重症度といった内容を入力する。また,必要事項を入力すれば,CHADS2スコアに加え,CHA2DS2-VAScスコア,HAS-BLEDスコアについても自動算出されるようになっており,これらの数値にもとづき,リスクの層別解析なども行う予定である。
その他,退院時,3カ月後,1年後,2年後時点での生存,転帰(modified Rankin Scale,mRS),観察期間内の虚血・出血イベントの有無を調査する予定である。
●進捗状況
2011年5月に第1回の班会議が行われ,国立循環器病研究センターでは9月に登録を開始した。12月にはUMIN臨床試験登録システム(UMIN-CTR:UMIN000006930),2012年4月にはClinical Trials. gov(NCT01581502)の登録を行い,国内外にプロトコールを公表した。2012年3月31日時点での登録数は171例,参加施設は16施設である。
有廣氏は「わが国におけるNVAFを有する脳梗塞・TIA患者に対する抗凝固療法の実態を調査し,適切な治療法を解明できるよう,今後研究を進めたい」と結んだ。
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