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米国心臓協会学術集会(AHA 2013)2013年11月16~20日,米国・ダラス
新規経口抗凝固薬の大出血リスク-メタ解析による検討-
2013.12.3
Partha Sardar氏
Partha Sardar氏

新規経口抗凝固薬の大出血リスクは適応病態により異なるものの,ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバンの3剤はビタミンK拮抗薬にくらべ抑制-第86回米国心臓協会学術集会(AHA 2013)にて,Partha Sardar氏(New York Metropolitan Hospital Center,米国)が11月20日に発表した。

●背景・目的

新規経口抗凝固薬は,国により認可状況は異なるが,心房細動患者の脳卒中予防,整形外科手術後の静脈血栓塞栓症(VTE)予防,急性VTEおよび肺塞栓症(PE)の治療ならびに再発予防に用いられている。これまで,新規経口抗凝固薬の有効性や安全性について,一部の適応疾患でのメタ解析は行われているが1, 2),大出血に焦点をあて,かつ適応横断的に検討したものはほとんどなく,新規経口抗凝固薬間を直接比較した試験もない。

そこで今回は,大出血リスクについてメタ解析を行い,新規経口抗凝固薬間の間接比較も行った。

●方法

2001年1月~2013年2月28日までの期間で,Pubmed,Embase,CINAHL,Cochrane CENTRALにて,(1)ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン,darexabanを評価しているランダム化比較試験,(2)対照薬として,低分子量ヘパリン,ビタミンK拮抗薬,アスピリンを用いている,あるいはプラセボと比較している,(3)股関節または膝関節手術後の血栓予防,急性VTEまたはPEの治療ならびに再発予防,心房細動,急性冠症候群(ACS),内科疾患の血栓症予防についての試験を検索。

対象は,査読のある雑誌に掲載された英文論文に限定した。解析にはランダム効果モデルを用いた。

●対象

48試験,141,932例を対象とした。試験の内訳は,股関節手術12試験,膝関節手術9試験,急性VTE/PE 6試験,ACS 6試験,心房細動10試験,VTEの長期的再発予防4試験,内科疾患2試験。

薬剤別では,リバーロキサバン18試験,アピキサバン11試験,ダビガトラン12試験,エドキサバン4試験,darexaban 3試験。

●結果

新規経口抗凝固薬の大出血リスクは対照薬と同程度であった(オッズ比[OR]0.98,95%CI 0.83-1.15,p=0.78,I2=51%)。

また,ビタミンK拮抗薬との比較では,ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバンの3剤は,大出血を有意に抑制した(OR 0.82,95%CI 0.69-0.97,p=0.02,I2=56%)。ビタミンK拮抗薬に対する個々の新規経口抗凝固薬別の大出血リスクを以下に示す。
ダビガトラン:OR 0.83,95%CI 0.62-1.12,I2=33%。
リバーロキサバン:OR 0.79,95%CI 0.55-1.13,I2=54%。
アピキサバン:OR 0.83,95%CI 0.57-1.23,I2=42%。

適応病態別にみると,心房細動,膝関節手術,VTEの長期的再発予防については新規経口抗凝固薬と対照薬との間に有意差は認めなかったが,股関節手術(OR 1.43,95%CI 1.02-1.99),ACS(OR 3.27,95%CI 2.30-4.66),内科疾患(OR 2.79,95%CI 1.69-4.60)では新規経口抗凝固薬群で大出血リスクが有意に上昇した。急性VTE/PE治療(OR 0.64,95%CI 0.47-0.89)では有意に抑制された。

適応病態別の新規経口抗凝固薬間の間接比較では,急性VTE/PE治療ではダビガトラン,リバーロキサバンでアピキサバンに対し大出血を有意に抑制したが,その他では薬剤間で有意差を認めなかった。

●結論

新規経口抗凝固薬の大出血リスクは適応病態により異なったものの,ビタミンK拮抗薬にくらべ抑制された。股関節手術,ACS,内科疾患患者では新規経口抗凝固薬で大出血リスクが上昇する可能性が示唆されたが,心房細動,膝関節手術,VTE/PEの再発予防ではリスク上昇はみられず,急性VTE/PE治療では抑制された。

新規抗凝固薬間での間接比較では,急性VTE/PE治療で有意差を認めたものの,それ以外の適応疾患では薬剤間で差を認めなかった。

文献

  • Miller CS, et al. Meta-analysis of efficacy and safety of new oral anticoagulants (dabigatran, rivaroxaban, apixaban) versus warfarin in patients with atrial fibrillation. Am J Cardiol 2012; 110:453-60.
  • Adam SS, et al. Comparative effectiveness of warfarin and new oral anticoagulants for the management of atrial fibrillation and venous thromboembolism: a systematic review. Ann Intern Med 2012; 157: 796-807.


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