山地博介氏(岡山ハートクリニック) |
心房細動の電気的除細動時の新規経口抗凝固薬におけるダビガトラン,リバーロキサバンの安全性と有効性はワルファリンと同等−2013年3月15〜17日に開催された第77回日本循環器学会学術集会で,山地博介氏(岡山ハートクリニック)らが15日のポスターセッションにて報告した。
●背景・目的
心房細動に対する電気的除細動時の抗凝固療法として,新規経口抗凝固薬を用いた場合の安全性および有効性に関するデータは不足している。そこで,持続性心房細動患者に対する電気的除細動前後に,ダビガトランおよびリバーロキサバンを用いた際の安全性および有効性をワルファリンと比較するランダム化比較試験を行った。
●結果
対象は2012年4月〜2013年1月,持続性心房細動の連続150例(ワルファリン群50例,ダビガトラン群50例,リバーロキサバン群50例)である。ダビガトラン群およびリバーロキサバン群では腎機能障害例(クレアチニンクリアランス<30mL/分)は除外した。除細動前に,少なくとも30日間のワルファリン(プロトロンビン時間国際標準比:PT-INR 2.0〜3.0),あるいは3週間以上のダビガトランまたはリバーロキサバン投与を行った。
患者背景として,年齢(ワルファリン群62歳,ダビガトラン群63歳,リバーロキサバン群61歳),女性(24%,26%,24%),心不全既往(10%,12%,8%),高血圧既往(36%,36%,32%),糖尿病既往(12%,14%,10%),一過性脳虚血発作または脳卒中既往(4%,2%,2%),CHADS2スコア(0点34%,32%,36%,1点44%,40%,40%,2点以上22%,28%,24%),CHA2DS2-VAScスコア(1.6点,1.7点,1.8点),左室駆出率(62%,60%,61%),左房径(42mm,43mm,41mm)には,いずれも有意な群間差はみられなかった。経食道心エコーにて左房内血栓を認めた症例はなかった。ワルファリン群の平均PT-INRは2.16,ダビガトラン,リバーロキサバンの平均投与量はそれぞれ267mg/日,13mg/日であった。
3群ともに全例で電気的除細動による洞調律化に成功し,退院時にも洞調律が維持されていた。電気的除細動後30日未満の心房細動再発率は,ワルファリン群16%,ダビガトラン群18%,リバーロキサバン群16%で,有意差はみられなかった。
いずれの群においても,電気的除細動後30日未満における有害事象(脳卒中または全身性塞栓症,臨床的な神経学的合併症,大出血,脳MRIでの新規の脳血管障害所見)はまったく認められなかった。
●結論
心房細動に対する電気的除細動時の抗凝固療法として,新規経口抗凝固薬のダビガトランおよびリバーロキサバンの安全性および有効性は,ともにワルファリンと同等であった。本結果から,これらの新規経口抗凝固薬はワルファリンに代わる合理的な選択肢となると考えられる。
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