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米国心臓協会学術集会(AHA 2014)2014年11月15~19日,米国・シカゴ
左心耳内血栓を有する心房細動患者の特徴:患者背景およびアブレーション施行後の比較
2014.12.3
大友 潔氏
大友 潔氏

心房細動でカテーテルアブレーションを予定した患者の1.5%に左心耳血栓(LAA)を認め,LAAの予測因子として持続性心房細動および糖尿病が示唆-11月18日,第87回米国心臓協会学術集会(AHA 2014)にて,大友潔氏(仙台厚生病院心臓血管センター循環器内科,現・新東京病院心臓内科)が発表した。

●背景・目的

心房細動患者の脳塞栓症リスクについては,CHADS2スコアによるリスク層別化が広く認知されている。しかし,左心耳内血栓(LAA)を有する心房細動患者の特徴やLAA形成の予測因子については,明確に定義されていないのが現状である。

仙台厚生病院では,カテーテルアブレーション(以下,アブレーションと略す)施行予定の心房細動患者に対し,術前24時間以内に経食道心エコーを行い,LAAが存在しないことを確認したうえでアブレーションを実施している。LAAが確認された場合は,服用中の抗凝固薬(新規経口抗凝固薬[NOAC]/ワルファリン)を問わず,ワルファリン強化治療(PT-INR>2.5)に切り替えて1ヵ月間以上継続する。その後,再度経食道心エコーを実施し,LAAが消失したことを確認したうえで,アブレーションを実施する。血栓が確認された場合には,再びワルファリン強化治療を1ヵ月以上行う。これらの一連の流れを術前レジメとして定めている。

今回,LAAを有する心房細動患者の特徴を明らかにするため,アブレーション前に経食道心エコーを実施した患者を登録し,LAAが確認された症例(LAA例)と確認されなかった症例(非LAA例)に分け,患者背景ならびにアブレーション後の予後を比較した。

●対象

対象は,仙台厚生病院にてアブレーションを予定し,術前24時間以内に経食道心エコーを実施した患者連続例1,547例である。

対象患者の平均年齢は64歳で,男性が72%(1,113/1,547例)を占めていた。心房細動の病型は発作性66%,持続性13%,持続性(長期間継続) 21%であった。

●結果

23例(1.5%)にLAAが確認された。LAAの有無による患者背景の違いを比較したところ,LAA例ではBMI≧25kg/m2,非発作性心房細動の割合が高かった。また,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP),ヘモグロビン(Hb)A1cが高値で,左房径拡大,左室駆出率低下,左心耳内血流速度低下,spontaneous echo contrast(もやもやエコー)増加などの特徴がみられた。

さらに,LAA例には糖尿病合併例が多く(LAA例 10/23例[44%],非LAA例 247/1,524例[16%]),CHADS2スコア(それぞれ1.8,1.0), CHA2DS2-VAScスコア(2.8,2.0)ともにLAA例が高値を示した。

経食道心エコーを行った時点の抗凝固療法に着目すると,LAA例では非LAA例にくらべワルファリン服用率が高く(13/23例[57%],375/1,524例[25%]),抗凝固療法なし(0/23例[0%],529/1,524例[35%])の割合が低かった。

ロジスティック回帰分析の結果,非発作性心房細動(オッズ比[OR]21.58,95%CI 4.12-397.86,p<0.0001)ならびにHbA1cの上昇(OR 1.91,95%CI 1.05-3.37,p=0.03)がLAA形成の独立予測因子であった。

抗凝固薬の種類別にLAAの発生率を比較したところ,ワルファリンが13/388例(3.4%)でもっとも高く,次いでアピキサバン1/38例(2.6%),ダビガトラン8/371例(2.2%)で,もっとも低かったのがリバーロキサバン1/221例(0.5%,ワルファリンに対しp=0.02)であった。

LAAが確認された患者のうち,16/23例(70%)が平均4.8ヵ月間のワルファリン強化治療により血栓が消失し,アブレーションが行われたが,非血栓例と比べて追跡期間中(平均398日)の心房細動再発率が有意に高かった(p<0.0001)。

●結論

今回の検討において,アブレーション予定患者の1.5%にLAAが認められた。持続性心房細動および糖尿病はLAA形成の重要な予測因子であった。

抗凝固薬の種類によりLAA発生率に差異がみられたが、薬剤の管理状況や投与量などが起因している可能性も示唆された。

LAAが認められた症例に対しては,ワルファリン強化治療により血栓が消失したことを確認したうえでアブレーションを行ったが,血栓がない症例に比較して心房細動再発率は高かった。LAAが認められた患者では,心房リモデリングがより進行しているために,アブレーションの効果が減弱される可能性があると考えられた。

Otomo K, et al. Atrial Fibrillation Complicated With Thrombus Formation in LA Appendage During Anticoagulation: Incidence, Clinical Characteristics and Efficacy of Catheter Ablation


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