秋山真樹氏 |
抗凝固療法を行うか否かの判断についてはCHADS2スコアによる評価が普及してきたものの,抗凝固療法におけるワルファリンの目標域や,NOAC導入時の腎機能評価の方針にはばらつきがみられる-9月26日,第62回日本心臓病学会学術集会にて,秋山真樹氏(川崎医科大学総合内科学3)が発表した。
●背景・目的
心房細動は循環器専門医のみならず,プライマリーケア医師がかかわるcommon diseaseとなってきている。本研究では,プライマリーケア医師の心房細動管理に対する意識調査を行った。ここでは,抗凝固療法に関する結果に絞って紹介する。
●方法
岡山県医療機能情報提供システムに登録された医療施設を対象に,無記名アンケート調査を行った。専門領域に特化した診療を行っている医療施設(眼科など)および循環器専門科がある病院は除外した。
●結果
2013年9月および12月,対象となる1,218施設にアンケートを送付し,377施設から有効回答を得た。循環器専門医は11%であった。
1. 病診連携
新規に心房細動を発見した場合の対応に関して,「場合によっては専門医に紹介する」が55.7%と過半数を占め,以下「専門医に紹介する」(36.1%),「専門医に紹介することはまずない」(6.6%)と続いた。専門医に紹介する状況について,複数回答可として尋ねたところ,「カテーテルアブレーションによる洞調律維持をしたい」(75.0%),「入院を必要としている」(60.5%),「顕性心不全はないが基礎心疾患がある」(48.4%),「外来治療可能な程度の心不全を合併」(40.6%),「薬物療法による洞調律維持をしたい」(39.8%),「抗凝固療法を必要としている」(37.9%)があがった。
2. 抗凝固薬
抗凝固療法を行うか判断する際にCHADS2スコアを参考にするか尋ねたところ,「参考にする」が73.0%と大部分を占めた。また,抗凝固薬の代替として抗血小板薬を用いるかについては「使用しない」(50.5%),「抗血小板薬1剤を使用することがある」(41.0%)でほぼ二分された。抗凝固療法に用いる薬剤は,「おもにワルファリンを使用するが,場合によってはNOACを使用」が55.8%,「NOACの適応があれば優先して使用」が24.7%,「ワルファリンのみを使用」が13.8%であった。
ワルファリンを投与する際のプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)目標値については,「70歳未満では2.0~3.0,70歳以上では1.6~2.6」(49.0%)と「年齢にかかわらず1.6~2.6」(44.9%)がほぼ同率であった。また,NOACを導入する際の腎機能評価について尋ねたところ,推算糸球体濾過量(eGFR)を使用するが31.0%ともっとも多く,Cockcroft式による予測クレアチニンクリアランス(CCr)23.0%,血清クレアチニン(Cr)19.3%で,この他に多重回答が24.5%あった。その内訳は,eGFRと血清Crの併用が64.1%,eGFR+Cockcroft式による予測CCr+血清Crが11.9%,eGFR+Cockcroft式による予測CCrが9.0%などであった。
NOACによる抗凝固療法(維持期)において定期的に行う検査(複数回答可)としては,PT-INRまたは活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が77.6%,血清Crが70.1%と多かった。その他にeGFRが48.3%,Cockcroft式による予測CCrが20.7%であった。
3. 高齢者の抗凝固療法
80歳以上90歳未満の高齢者に対する抗凝固療法の戦略については,「抗凝固療法は積極的には行わないが,場合によっては行う。おもにワルファリンを用いる」(31.0%),「抗凝固療法は積極的に行う。おもにワルファリンを用いる」(27.8%)と,ワルファリン投与が過半数を占めた。新規経口抗凝固薬(NOAC)については,「抗凝固療法は積極的には行わないが,場合によっては行う。できるだけNOACを用いる」(10.1%),「抗凝固療法は積極的に行う。できるだけNOACを用いる」(8.9%)と,あわせて約2割であった。その他に「リスクを説明したうえで,患者自身(もしくは家族)に決めてもらう」が11.7%みられた。
90歳以上の高齢者の抗凝固療法の導入については,80歳以上90歳未満にくらべ減少し,「リスクを説明したうえで,患者自身(もしくは家族)に決めてもらう」(24.8%),「抗凝固療法はまず行わない」(17.5%)が増加した。
●結論
抗凝固療法を行うか否かの判断についてはCHADS2スコアによる評価が普及してきたものの,抗凝固療法の代替としての抗血小板薬使用の是非や,ワルファリン投与中のPT-INR目標値,NOAC導入時の腎機能評価の方針などにばらつきがみられた。
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