冨山誠彦氏 |
ワルファリン内服中の脳梗塞患者の約半数が,ワルファリンより新規経口抗凝固薬を希望すると回答-3月14日,第39回日本脳卒中学会総会にて,冨山誠彦氏(青森県立中央病院神経内科)が発表した。
●背景・目的
新規経口抗凝固薬は安全で使い勝手のよい薬剤であることがこれまでに示されているが,臨床現場では依然としてワルファリンが多く処方されているのが現状である。そこで,ワルファリン内服中の脳梗塞患者を対象に,ワルファリンおよび新規経口抗凝固薬の特徴を示したうえで,どちらを選択したいか,ならびにその理由をたずねるアンケート調査を行った。
●対象と方法
対象は,2013年9月9日~10月11日に外来を受診したワルファリン内服中の脳梗塞患者66例(男女49/17例,平均年齢67.9歳)である。
アンケート調査は,患者の承諾を得たうえでドクターズクラークが実施した。以下のようにワルファリンと新規経口抗凝固薬の特徴(8項目)を具体的に示したうえで,どちらを希望するか,ならびにその理由(8項目のなかから重要な順に2つ)をたずねた。なお,脳梗塞の予防効果については,回答を新規経口抗凝固薬に誘導することを避けるために「ほぼ同じ」と記載した。新規経口抗凝固薬の服用回数については,「1回ですむ薬もありますが,2回飲むとしてお答えください」と記載した。
[アンケート調査で示された内容]
ワルファリンと新しい抗凝固薬の脳梗塞の予防効果はほぼ同じですが,下記のような違いがあります。
(1)食事制限(ワルファリン:あり[納豆など]/新しい抗凝固薬:なし)
(2)脳出血や胃腸からの大出血(多い/少ない)
(3)血液検査(診察のたびに必要/ほとんど要らない)
(4)薬の量の調節(必要/不要)
(5)飲み合わせの悪い薬(多い/少ない)
(6)薬に関わる費用(安い[血液検査も含め,3割負担で1,000円/月以下]/高い[3割負担で5,000円/月])
(7)腎臓の働き(悪くても使える/悪いと使えない)
(8)1日の服用回数(1回/2回)
●結果
「どちらの薬を飲みたいか」という設問に対し,52%(34例[男女28/6例]),平均年齢66.4歳)がワルファリン,48%(32例[21/11例]),69.4歳)が新しい抗凝固薬と回答した。
ワルファリンを希望した患者において,もっとも重要な理由としてあげられたのものとして上位から「薬に関わる費用」が23例,「腎臓の働き」が4例,「1日の服用回数」が2例であった。次に重視する理由としてあげられたのは「1日の服用回数」が10例,「腎臓の働き」が8例,「薬に関わる費用」が3例で,トータルするとワルファリン希望者がもっとも重視する点は,医療費負担が少ない点,次いで「1日1回の内服」と考えられた。
一方,新規経口抗凝固薬を希望した例において,もっとも重要な理由としてあげられたのは「脳出血や胃腸からの大出血」が15例,「食事制限」が13例,「血液検査」が2例であった。次に重視する理由は「採血」が15例,「飲み合わせの悪い薬」が5例,「脳出血や胃腸からの大出血」が4例であった。このことから,新規経口抗凝固薬希望者がもっとも重視する点は,「出血合併症のリスクが低いこと」,「食事制限がないこと」,次に重視する点としては「毎回の採血がないこと」と考えられた。
●まとめ
ワルファリン内服中の脳梗塞患者を対象としたアンケート調査において,約半数が新規経口抗凝固薬への変更を希望していたという結果から,薬剤選択についての医師からの説明が不十分である可能性が示唆された。新規経口抗凝固薬を希望する患者は,医療費の負担よりも,安全性や食事制限がないこと,採血が少なくなることをその理由としてあげていた。新規経口抗凝固薬の処方に歯止めをかけている理由の一つに患者の医療費負担があるが,日本では現在,新規経口抗凝固薬の費用対効果を示す資料はない。今後,費用の問題も含め,新規経口抗凝固薬の安全性や有効性を患者にわかりやすく説明するための資料を作成し,活用することが望まれる。
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