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第79回日本循環器学会学術集会(JCS 2015)2015年4月24〜26日,大阪
非弁膜症性心房細動患者に対するNOAC 3剤の比較:NCVC-NOACレジストリー
2015.5.25
廣瀬紗也子氏
廣瀬紗也子氏

非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)3剤間で投与されている患者の背景は大きく異なり,リバーロキサバン,アピキサバンは比較的高リスクの患者に,ダビガトランは比較的低リスクの患者に投与されていた。4月24日,第79回日本循環器学会学術集会(JCS 2015)にて,廣瀬紗也子氏(国立循環器病研究センター心臓血管内科,現・京都大学大学院医学研究科循環器内科)が発表した。

●背景・目的

非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に対するNOACの有効性および安全性に関しては,すでに大規模臨床試験において,ワルファリンとの比較で証明されている1~3)。しかし,NOAC間で直接比較した検討した報告はほとんどない。本NCVC-NOAC研究では,NOAC投与中のNVAF患者の薬剤使用状況,患者背景および治療成績(血栓塞栓症,大出血など)に関して比較検討を行った。

●対象・結果

2011年4月~2015年2月,国立循環器病研究センターにてNOACを投与されたNVAF患者2,001例を対象に,後ろ向きに解析を行った。各NOACの内訳はダビガトラン812例(41%),リバーロキサバン622例(31%),アピキサバン567例(28%)であった。

1.患者背景

男性68%,平均年齢71歳で,心房細動の病型は発作性が59%を占めた。高血圧63%,推算クレアチニンクリアランス(eCCr)69mL/分,平均CHADS2スコアは2.1点で,41%は低リスク群(0~1点)であった。CHADS2スコアが0点の患者ではカテーテルアブレーション施行の前後,あるいは年齢65~74歳などを理由として,1点の患者では56%が高血圧を理由としてNOACを投与されていた。

2.薬剤別の患者背景比較(ダビガトラン vs.リバーロキサバン vs.アピキサバン)

患者背景は3剤間で異なっていた。平均年齢はダビガトラン67歳,リバーロキサバン72歳,アピキサバン75歳で,有意差を認めた(すべてp<0.0001)。同様に,平均体重は65kg vs. 61kg vs. 59kg(ダビガトラン vs. リバーロキサバンでp<0.0001,リバーロキサバン vs アピキサバンでp<0.05),平均eCCrは78mL/分 vs. 66mL/分 vs. 58mL/分(すべてp<0.0001),平均CHADS2スコアは1.7,2.3,2.4(ダビガトラン vs.リバーロキサバン,ダビガトラン vs. アピキサバンでp<0.0001)であった。そのほか男女比,高血圧,うっ血性心不全などでも3群間に差を認めた。

以上より,日本の実臨床下でリバーロキサバンおよびアピキサバンはダビガトランに比べ高齢,低体重,腎機能低下例やCHADS2スコアが高値例に投与されていることが示された。実際にCHADS2スコア別にみると,リバーロキサバンおよびアピキサバン投与例に占める低リスク患者(0~1点)は約3割であったのに対し,ダビガトランでは約5割を占めていた。

3.治療成績

有効性の評価として,血栓塞栓症発症率はダビガトラン15例(1.9%),リバーロキサバン14例(2.3%),アピキサバン6例(1.1%)であった。また,安全性に関しては大出血がそれぞれ7例(0.9%),11例(1.8%),9例(1.6%),頭蓋内出血はそれぞれ2例(0.2%),5例(0.8%),4例(0.7%)であった。なお,各NOACの患者背景の相違に加え,平均追跡期間がダビガトラン435日,リバーロキサバン313日,アピキサバン158日と大きく異なったことから,3群間の比較検定は行わなかった。

4.NOACの投与量(リバーロキサバン,アピキサバン)

減量基準が設けられているリバーロキサバン,アピキサバンではいずれも,通常用量投与可能例のうち約1/3に低用量が投与されていた。

リバーロキサバンは腎機能にもとづき,eCCr≧50mL/分では通常用量(15mg 1日1回),<50mL/分では低用量(10mg 1日1回)投与となる。しかし,通常用量が投与可能な症例(eCCrr≧50mL/分)471例のうち,173例(37%)に低用量が投与されていた。これらの患者は,適正用量を投与されているeCCr≧50mL/分の症例に比べ高齢で,低体重が多く,eCCrの平均値は低く,抗血小板薬併用率が高かった。なお,低用量投与対象患者151例のうち1例に通常用量が投与されていた。

アピキサバンは3つの減量基準(腎機能低下[血清クレアチニン値≧1.5mg/dL],高齢[≧80歳],低体重[≦60kg])のうち2つ以上の因子を有する場合は低用量(2.5 mg 1日2回),1つまでなら通常用量(5mg 1日2回)を投与することとなっている。しかし,通常用量が投与可能な患者430例のうち,114例(27%)に低用量が投与されていた。なお,低用量投与対象患者137例のうち1例に通常用量が投与されていた。

●結論

NOACの3剤間で投与されている患者背景は大きく異なり,リバーロキサバン,アピキサバンは比較的高リスク患者に,ダビガトランは比較的低リスク患者に投与されていた。リバーロキサバンおよびアピキサバンでは,通常用量が投与可能であるにもかかわらず低用量が投与されていた患者が約3割おり,今後そのような患者における転帰について,より大規模な検討が必要と考えられた。

文献

  • Connolly SJ, et al. RE-LY Steering Committee and Investigators. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-51.
  • Patel MR, et al. the ROCKET AF Investigators. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-91.
  • Granger CB, et al. ARISTOTLE Committees and Investigators. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-92.


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