谷友之氏 |
心房細動患者に対するアブレーション周術期の非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)継続投与は,ワルファリン継続投与と同等の安全性と有効性を有する。4月26日,第79回日本循環器学会学術集会(JCS 2015)にて,谷友之氏(湘南鎌倉総合病院循環器科,現・札幌東徳洲会病院循環器内科)が発表した。
●背景・目的
心房細動患者に対するカテーテルアブレーション(以降,アブレーションと略す)施行周術期において,ワルファリンを継続投与しても,血栓塞栓性合併症や出血は少ないことが報告されている1)。しかし,NOAC継続投与の安全性や有効性に関するエビデンスはまだ少ない。本研究では,アブレーション施行患者を後ろ向きに検討し,周術期(4週間)におけるNOAC継続投与の有効性および安全性をワルファリンと比較した。
●対象・方法
対象は,2011年6月~2014年12月に湘南鎌倉総合病院にてアブレーションを施行した心房細動患者連続563例である。薬剤の内訳はワルファリン217例,ダビガトラン129例,リバーロキサバン217例であった。全例において,術前3週間以上および術後3ヵ月以上の抗凝固療法を実施し,術前には経食道心エコー(TEE)で心内血栓がないことを確認した。アブレーション施行時はヘパリンを活性化凝固時間(ACT)300~400秒となるよう投与した。
●結果
1. 患者背景
平均年齢はワルファリン群65.5歳,ダビガトラン群64.3歳,リバーロキサバン群64.5歳,男性はそれぞれ72.4%,72.1%,70.5%であった。各群の患者背景を比べると,ダビガトラン群では脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)既往が多く(ワルファリン群8.8%,ダビガトラン群16.3%,リバーロキサバン群3.2%),リバーロキサバン群では抗血小板薬併用(それぞれ15.7%,12.4%,7.4%)が少なかった。平均プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)は,ワルファリン群で2.11,ダビガトラン群,リバーロキサバン群ではいずれも1.17であった。また,リバーロキサバン群ではCHADS2スコア1点の患者が多かった(1点:33.6%,38.0%,43.3%,≧2点:33.6%,31.0%,22.6%)。
2. 合併症
すべての群で死亡はみられなかった。血栓塞栓症の発症はワルファリン群2例(0.9%),ダビガトラン群0例,リバーロキサバン群0例であったが,群間差は認めなかった。 全出血はワルファリン群17例(7.8%),ダビガトラン群7例(5.4%),リバーロキサバン群16例(7.4%)で,群間差は認められなかった。大出血(消化管出血,頭蓋内出血,輸血を要した出血,心タンポナーデ)はワルファリン群5例(2.3%),ダビガトラン群1例(0.8%),リバーロキサバン群2例(0.9%)であった。
●結論
本研究におけるNOACによる大出血の発現頻度は低く,血栓塞栓性合併症の発症は認めなかった。合併症の頻度は他の報告2~4)と同様であった。本結果より,アブレーション周術期におけるNOAC継続投与の有効性と安全性は,ワルファリン継続投与と同程度であることが示された。
文献
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