小川彰氏 |
「脳卒中治療ガイドライン2015」の刊行は6月下旬を予定。3月26日,第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)にて,小川彰氏(岩手医科大学理事長・学長)がその概要を発表した。
●「脳卒中治療ガイドライン2015」が刊行
「脳卒中治療ガイドライン2009」(以降「2009」と略す)1)の刊行から約6年が経過し,新版が「脳卒中治療ガイドライン2015」(以降「2015」と略す)として6月下旬に刊行される。「2009」は日本脳卒中学会,日本脳神経外科学会,日本神経学会,日本神経治療学会,日本リハビリテーション医学会の代表で構成する脳卒中合同ガイドライン委員会(任意団体)により作成されたが,「2015」は法人としての日本脳卒中学会のなかに脳卒中ガイドライン委員会(委員長:小川彰氏,全ガイドライン委員147名)を設け,上記5学会の全面的協力を得て作成される。
また,新知見が続々と得られている現状を受け,今後は,次のガイドライン大幅改訂までの間に,1年に1回あるいは2年に1回の頻度で,ウェブサイト上で小改訂を公開する仕組みを構築する予定である。
●「2015」作成のための論文検索
「2009」では2007年4月末までの文献を検索してガイドラインを作成したため,「2015」では2007年5月~2013年12月末の文献検索を行った。新規項目や変更項目に関しては,初版同様に1992年以降の文献を検索した。言語は日本語および英語に限定した。なお,委員会が妥当と判断したものに関しては,2014年1月以降に発表された論文からもハンドサーチ文献として引用した。
●「2015」のエビデンスレベルおよび推奨グレード
「2009」ではNational clinical guidelines for strokeの分類(1999)に準じ,Oxford Centre for evidence-based medicine(OCEBM)の分類(2001)を一部取り入れたものを用いたが,「2015」ではOCEBM 2011 levels of evidence2)を採用した。これは5段階に分かれており,レベル1:ランダム化比較試験(RCT)メタアナリシス,レベル2:RCT/劇的な効果のある観察研究,レベル3:非ランダム化比較コホート/追跡研究,レベル4:症例集積研究/症例対照研究/ヒストリカルコントロール研究,レベル5:メカニズムにもとづく推論となっている。「2009」のエビデンスレベルIaが「2015」のレベル1,Ibがレベル2,IIaがレベル3,IIbおよびIIIがレベル4,IVがレベル5にそれぞれ相当する。
「2015」の推奨グレードは,A:行うよう強く勧められる,B:行うよう勧められる,C1:行うことを考慮してもよいが,十分な科学的根拠がない,C2:科学的根拠がないので勧められない,D:行わないよう勧められる,の5段階とした。エビデンスのレベル,推奨グレードの決定にあたって,人種差,民族差の存在は考慮しなかった。
●論文の採否と評価
試験デザインがRCTであったとしても,副次評価項目で示されたエビデンスは慎重に評価した。per protocol(PP)分析など,intention-to-treat(ITT)でない分析で示されたエビデンス,階層解析や事後的探索的解析で示されたエビデンスに関しては,1段階あるいは2段階下げた評価を行った。また,試験の手続きが不明で批判的吟味が行えない学会抄録やレターなどは採用しなかった。結論は著者の評価ではなく,批判的吟味を加えて新たに判断した。
●推奨する薬剤の表記
推奨される薬剤の表記順は,企業の恣意的な意図に影響されず,中立な立場で吟味したうえで,以下の原則に従った。
●改訂のポイント
7つの大項目は「2009」に準拠した。改訂のポイントは以下の通りである。
1. 脳卒中一般
2. 脳梗塞・TIA
3. 脳出血
4. くも膜下出血
5. 無症候性脳血管障害
6. その他の脳血管障害
7. リハビリテーション
文献
脳卒中治療ガイドライン2015
編集:日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会,小川 彰,出江紳一,片山泰朗,嘉山孝正,鈴木則宏
発売日:2015年6月25日
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