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第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)2015年3月26〜29日,広島
NVAFを有する脳梗塞/TIA に対する経口抗凝固療法:SAMURAI-NVAF研究—3ヵ月転帰—
2015.5.7
有廣昇司氏
有廣昇司氏

虚血高リスク症例における経口抗凝固薬開始3ヵ月後の虚血イベント発症率は,NOAC群,ワルファリン群で同程度であったが,頭蓋内出血はNOAC群で少ない傾向-3月26日,第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)にて,有廣昇司氏(国立循環器病研究センター脳血管内科/脳神経内科)が発表した。

●目的

SAMURAI-NVAF研究は2011年9月から登録ならびに追跡調査を行っている多施設共同前向き観察研究である(NCT01581502,UMIN000006930)1)。発症から7日以内に診療開始となった,非弁膜症性心房細動(NVAF)を有する脳梗塞/一過性脳虚血発作(TIA)患者において,非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)またはワルファリンの服用開始から3ヵ月時点の転帰を明らかにする。

●対象・方法

対象は,SAMURAI-NVAF研究登録患者1,192例のうち,経口抗凝固薬が開始となり,3ヵ月後の追跡調査が終了した1,137例である。男性は645例,平均年齢は77歳であった。 本研究の評価項目である虚血イベント,大出血イベント,脳卒中+全身塞栓,脳梗塞/TIA,頭蓋内出血,全死亡について,NOACおよびワルファリンの内服開始3ヵ月時点での累積発生率を算出し,Cox比例ハザードモデルによる回帰分析を用いてNOACの効果を検討した。

●結果

1. 薬剤別の患者背景

経口抗凝固薬の内訳は,NOACが475例(42%),ワルファリンが662例(58%)であった。NOACの内訳は,リバーロキサバン15mg/日が28%,同10mg/日が13%,ダビガトラン300mg/日が11%,同220mg/日が32%など。

薬剤別の患者背景をみると,NOAC群はワルファリン群にくらべ男性が多く(64% vs. 51%),若齢で(平均74.4歳 vs. 79.3歳),平均体重が重く(59.7kg vs. 54.1kg),腎機能が良好であった(クレアチニンクリアランス平均値66.2mL/分 vs. 50.7mL/分)。また,NOAC群では入院時National Institutes of Health Stroke Scale[NIHSS](中央値4 vs. 11)や退院時modified Rankin Scale[mRS](中央値1 vs. 4)が軽症であった(ここまですべてp<0.001)。

インデックスイベントに対する急性期治療として,再開通療法はNOAC群の24%に行われ,ワルファリン群の22%と同程度であった(p=0.300)。薬剤投与開始(中央値)は,発症からはNOAC群では4日で,ワルファリン群の3日より遅かったが(p=0.033),入院からは3日 vs. 3日と同程度であった(p=0.089)。

2. 虚血イベント

3ヵ月後の虚血イベントはNOAC群14例(3.05%),ワルファリン群25例(4.01%)で,同程度であった(Log rank p=0.423)。イベントの内訳は,脳梗塞がOAC群12例 vs. ワルファリン群14例,TIAは1例 vs. 2例などであった。NOAC群のイベント発症14例のうち8例は低用量が選択されていた。

3. 大出血イベント

3ヵ月後の大出血イベントはNOAC群5例(1.11%),ワルファリン群16例(2.61%)で,同程度であった(同p=0.85)。イベントの内訳は,頭蓋内では脳内出血がNOAC群1例 vs. ワルファリン群2例,硬膜下血腫が0例 vs. 4例,頭蓋外では消化管出血が3例 vs. 4例,後腹膜出血が0例 vs.1例,ヘモグロビン2g/dL以上の低下が1例 vs.4例などであった。

4. 他の評価項目およびまとめ

脳卒中+全身塞栓はNOAC群2.84% vs. ワルファリン群3.06%(同p=0.852),脳梗塞/TIAは2.82% vs. 2.58%(同p=0.776),頭蓋内出血は0.23% vs. 1.00%(同p=0.132)であった。全死亡は0.43% vs. 4.93%となり,NOAC群で有意に低値であった(同p<0.001)。年齢,性,CHADS2スコア,入院時NIHSS,Ccrで補正したCox比例ハザード回帰分析では,頭蓋内出血はNOAC群で低い傾向(ハザード比0.17:95%CI 0.01-1.15, p=0.071)で,死亡はNOAC群がワルファリン群より有意に低かった(ハザード比0.18:95%CI 0.03-0.63,p=0.005)。

●考察

NOACは75歳以上の高齢者やCHADS2スコアが3~6と高い患者でも有用であると報告されている2)。また,各NOACの第III相試験に登録された日本人患者集団での結果をみると,NOACはワルファリンにくらべ,脳卒中/血栓塞栓症リスクを低下させた3)

ただし,発症から7日以内の早期の虚血性脳卒中に対するNOACの効果については不明である。今回の解析では,NOAC投与開始は発症から4日で,3ヵ月後の虚血イベント発症率は3.05%であった。一方,CHADS2スコア≧4点の高リスク症例においてNOAC各薬剤別に虚血イベントや頭蓋内イベントの発症率をみると,ワルファリンより高い場合もあり,急性期症例に対するNOACの有用性については,引き続き検討が必要である。

●まとめ

虚血高リスク症例における経口抗凝固薬開始3ヵ月後の虚血イベント発症率は,NOAC群3.05%,ワルファリン群4.01%であった。大出血イベントはNOAC群1.11%,ワルファリン群2.61%で,頭蓋内出血はNOAC群で少ない傾向がみられた。

文献

  • Toyoda K, et al. SAMURAI Study Investigators. Trends in oral anticoagulant choice for acute stroke patients with nonvalvular atrial fibrillation in Japan: The SAMURAI-NVAF Study. Int J Stroke 2015 Jan 12. doi: 10.1111/ijs.12452.
  • Ruff CT, et al. Comparison of the efficacy and safety of new oral anticoagulants with warfarin in patients with atrial fibrillation: a meta-analysis of randomised trials. Lancet 2014; 383: 955-62.
  • Senoo K, et al. Efficacy and safety of non-vitamin K antagonist oral anticoagulants vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation. Circ J 2015; 79: 339-45.

※2015年7月6日,全面改稿いたしました。


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