2017.12.18 | AHA 2017取材班 |
安珍守氏 |
日本人心房細動患者において,全死亡の1/4を占めた心血管死は,心不全既往ならびに貧血が強く関連し,経口抗凝固薬(OAC)使用との有意な関連はなかった-11月14日,米国心臓協会学術集会(AHA)にて,安珍守氏(国立病院機構京都医療センター循環器内科)が発表した。
●背景・目的
リアルワールドの心房細動患者において,背景因子と心血管死の関連性は十分に検討されていない。
Fushimi AF Registryは京都市伏見区の心房細動患者を全例登録し,長期追跡を行うことを目的として開始された前向き登録観察研究で,伏見区内の80施設(心血管センター2施設,小~中規模病院9施設,プライマリーケア診療所69施設)が参加している。2011年3月に登録を開始し,2016年11月までに4,045例のデータが得られている。
本研究ではFushimi AF Registry登録患者を対象に,死因ならびに心血管死の予測因子を検討した。Kaplan-Meier法で無イベント生存率を算出し,Cox回帰モデルで全死亡,心血管死,非心血管死の予測因子を多変量解析した。
●患者背景
対象患者の平均年齢は73.6歳(74歳以下49%,75~84歳37%,85歳以上14%),40%が女性であった。心房細動の病型は49%が発作性で,平均BMIは23.1kg/m2,推算糸球体濾過量(eGFR)中央値は60.1mL/分であった。併存疾患の割合は,脳卒中または一過性脳虚血発作既往18%,既存の心不全27%,高血圧63%,糖尿病23%,脂質異常症44%,腎機能障害49%であった。抗血栓薬は,OAC単独42%,OAC+抗血小板薬併用13%,抗血小板薬単独15%で,残りの30%には抗血栓薬は投与されていなかった。
●結果
追跡期間中央値1,105日において,全死亡は705例(5.5%/年)に認められた。そのうち心血管死は180例(25.5%),非心血管死381例(54.0%),不明144例(20.4%)であった。心血管死のうちもっとも多かった死因は心不全(14.5%)で,脳卒中は6.5%(脳梗塞4.8%+出血性脳卒中1.7%)であった。死因全体では悪性腫瘍(23.1%),感染症(17.3%)が多かった。
多変量解析の結果,心血管死の強い予測因子として,心不全既往*(調整ハザード比[HR]2.42,95%CI 1.66-3.54,p<0.001),ならびに貧血(HR 2.22,95%CI 1.55-3.16,p<0.001)があげられた。OACの処方は全死亡リスク低下と関連していたが(HR 0.69,95%CI 0.58-0.82,p<0.001),心血管死のリスク低下とは関連しなかった(HR 1.01,95%CI 0.72-1.42,p=0.94)。
●まとめ
Fushimi AF Registryにおいて,心血管死は全死亡の1/4を占めていた。OACの使用は全死亡リスク低下と有意に関連していたが,心血管死との関連はなかった。心血管死の強い予測因子は,心不全既往ならびに貧血であった。
*:過去の心不全入院,NYHA class2以上の心不全症状,またはLVEFが40%以下のいずれかに該当する例と定義した。
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