2017.12.14 | AHA 2017取材班 |
Satyanarayana Vaidya氏 |
進行がん患者の静脈血栓塞栓症(VTE)再発予防において,直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)は有効性,安全性の両面から従来療法に匹敵することが示唆-11月13日,米国心臓協会学術集会(AHA)にて,Satyanarayana R. Vaidya氏(Cape Fear Valley Medical Center,米国)が発表した。
●背景・目的
VTEはがん患者の死因でもっとも多く,また死亡リスクを上昇させる1, 2)。さらに,がん患者のVTEリスクは,非がん患者の4~7倍とされている3, 4)。しかし,抗凝固療法中の患者では出血リスクが上昇するため,がん関連血栓症の管理は困難な課題となっている。
米国胸部医学会(ACCP)のVTEに関するガイドライン第9版のアップデートでは,がん患者におけるVTE診断後初期3ヵ月の抗凝固療法に関し,ビタミンK拮抗薬(VKA)よりも低分子量ヘパリン(LMWH)の使用を推奨している5)。しかし,がん患者のVTE年間再発率は依然として高く,抗凝固療法をどのように行えばよいのか,まだ結論は出ていない。
VTE再発予防におけるDOACのワルファリンに対する安全性および有効性の検討は十分に行われているが,がん患者に対するLMWHおよびVKAを用いた従来療法との比較検討は十分でない。そこで本研究では,進行がん患者において,従来療法に対するDOACの有効性および安全性について比較検討を行った。
●方法・対象
PubMed,EMBASE,CENTRAL,MEDLINEを用い,VTE患者におけるDOACと従来療法(LMWH単独,または初期にLMWH/未分画ヘパリン[UFH]を投与し,その後VKAに切替え)を比較したランダム化比較試験(RCT)を調査した。調査対象のRCTはVTE患者を対象とし,そのなかに一定割合の進行がん患者を含むものとした。有効性評価項目はVTE再発,安全性評価項目は大出血および臨床的に問題となる出血である。
●結果
調査基準に合致したRCTは12件であり,進行がん患者は2,054例であった。
10件はDOACとLMWH/UFH+VKAを比較,残りの2件は急性内科疾患による入院患者を対象に,DOACとLMWH単独を比較した試験であった。
DOACとLMWH/UFH+VKAの比較では,DOAC群で有効性,安全性ともリスク低下傾向がみられた(VTE再発:リスク比[RR]0.68,95%CI 0.42-1.10,p=0.12,大出血:RR 0.66,95%CI 0.36-1.20,p=0.17,臨床的に問題となる出血:RR 0.85,95%CI 0.65-1.10,p=0.22)。
急性内科疾患による入院患者を対象としたDOACとLMWH単独の比較では,VTE再発リスクは同程度であった(RR 0.97,95%CI 0.37-2.55,p=0.95)。出血に関しては,DOAC群でリスクの上昇傾向が認められた(大出血:RR 2.18,95%CI 0.32-14.80,p=0.42,臨床的に問題となる出血:RR 2.39,95%CI 0.75-7.56,p=0.14)。
12のRCTを統合すると,VTE再発(RR 0.73,95%CI 0.47-1.12,p=0.15),大出血(RR 0.73,95%CI 0.41-1.29,p=0.28),臨床的に問題となる出血(RR 0.89,95%CI 0.69-1.15,p=0.38)ともに,DOAC群は従来療法群と同程度の結果であった。
●結論
急性内科疾患で入院した患者では,DOACはLMWH単独療法よりも出血リスクが上昇する傾向が認められたが,DOACとLMWH/UFH+VKAの比較と統合した結果,進行がん患者のVTE再発予防において,DOACは有効性,安全性の両面から従来療法に匹敵することが示唆された。
文献
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