【GRACEリスクスコア】
急性冠症候群患者の入院時重症度により院内死リスクを予測するスコア
予測因子 |
Killip分類 | 点数 | SBP (mmHg) |
点数 | 心拍数 (BPM) |
点数 | 年齢 | 点数 | クレアチニン値 (mg/dL) |
点数 |
I | 0 | ≦80 | 58 | ≦50 | 0 | ≦30 | 0 | 0~0.39 | 1 |
II | 20 | 80~99 | 53 | 50~69 | 3 | 30~39 | 8 | 0.40~0.79 | 4 |
III | 39 | 100~119 | 43 | 70~89 | 9 | 40~49 | 25 | 0.80~1.19 | 7 |
IV | 59 | 120~139 | 34 | 90~109 | 15 | 50~59 | 41 | 1.20~1.59 | 10 |
140~159 | 24 | 110~149 | 24 | 60~69 | 58 | 1.60~1.99 | 13 | ||
160~199 | 10 | 150~199 | 38 | 70~79 | 75 | 2.00~3.99 | 21 | ||
≧200 | 0 | ≧200 | 46 | 80~89 | 91 | >4.0 | 28 | ||
≧90 | 100 |
他のリスク因子 | 点数 |
入院時の心停止 | 39 |
ST異常 | 28 |
心筋逸脱酵素の上昇 | 14 |
合計点ごとの院内死リスク |
合計点 | ≦60 | 70 | 80 | 90 | 100 | 110 | 120 | 130 | 140 | 150 | 160 | 170 | 180 | 190 | 200 | 210 | 220 | 230 | 240 | ≧250 |
院内死リスク (%) |
≦0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.6 | 0.8 | 1.1 | 1.6 | 2.1 | 2.9 | 3.9 | 5.4 | 7.3 | 9.8 | 13 | 18 | 23 | 29 | 36 | 44 | ≧52 |
【TIMI血流分類】
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Grade | |
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0 | 完全閉塞。閉塞部位より末梢には順行性血流を認めない。 |
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1 | 灌流を伴わない開存。造影剤は閉塞部位を通過するが,造影中遅延があり,閉塞部位より末梢は完全には造影されない。 |
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2 | 部分的再灌流。造影剤は閉塞部位を通過し,閉塞部位より末梢も造影される。しかし,閉塞部位より末梢への造影剤注入速度かつ/または末梢部からのクリアランスの速度は,責任血管により灌流されていない類似領域(閉塞部位対側の冠動脈または閉塞部位より近位部の冠動脈)への造影剤の注入かつ/またはクリアランスの速度に比し,明らかに遅い。 |
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3 | 完全灌流。閉塞部位より末梢への順行性血流は閉塞部位より近位部のそれと同程度に速やかであり,病変部からの造影剤のクリアランスは同一血管における非病変部または対側の血管と同様に迅速である。 |
【ACUITY出血基準(Acute Catheterization and Urgent Intervention Triage Strategy)】
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●大出血 頭蓋内または眼内出血 インターベンションを要するアクセス部位の出血 直径5cm以上の血腫 ヘモグロビン低下(明らかな出血源がない場合は4g/dL以上,ある場合は3g/dL以上) 出血のための再手術 血液製剤の輸注 |
【BARC出血基準(Bleeding Academic Research Consortium)】
これまで臨床試験や登録研究ではさまざまな出血基準が用いられ,比較が困難であった。今回,欧米の行政,企業,研究者から成る組織BARC(Bleeding Academic Research Consortium)が設置され,以下の統一基準が定められた。
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●タイプ0:出血なし。 |
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●タイプ1:医学的に問題とならない(not actionable),患者が予定外の検査,入院,治療のため医療機関を受診する要因とならない出血。患者が医療専門家に相談せず,患者自身の判断により治療を中止した場合も含む。 |
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●タイプ2:明白で,医学的に対応すべき(actionable)出血兆候で(例:臨床状況から想定される以上の出血。画像検査のみで検出される出血を含む),タイプ3,4,5の基準には該当しないが,下記の基準の1つ以上を満たすもの:(1)医療専門家による非外科的介入を要するもの,(2)入院またはケアレベルの引き上げを要するもの,(3)評価を要するもの。 |
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●タイプ3
タイプ3a
明白な出血+ヘモグロビンの低下3~<5g/dL*(ヘモグロビンの低下が出血に関連する場合)
明白な出血に伴う輸血 タイプ3b
明白な出血+ヘモグロビンの低下≧5g/dL*(ヘモグロビンの低下が出血に関連する場合)
心タンポナーデ 外科的介入を要する出血(歯科/鼻/皮膚/痔を除く) 血管作用薬の静注を要する出血 タイプ3c
頭蓋内出血(微小出血または出血性変化は含まない,髄腔内出血は含む) 剖検,画像検査,または腰椎穿刺によりサブカテゴリーが確認されたもの 視力の損傷を伴う眼内出血 |
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●タイプ4:CABG関連出血
48時間以内の周術期頭蓋内出血 出血コントロールのための胸骨閉鎖後の再手術 48時間以内の全血または濃縮赤血球5単位以上の輸血† 24時間以内の胸腔チューブからの2L以上の出血 |
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●タイプ5:致死的出血
タイプ5a
致死的である可能性が高い出血:剖検や画像による確認はされていないが,臨床的に疑われるもの
タイプ5b
明らかに致死的な出血:明白な出血あるいは剖検もしくは画像により確認されたもの
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CABG:冠動脈バイパス術。血小板輸血は記録,報告すべきだが,アウトカムとの関係についての詳細な情報が得られるまでは,これらの定義に含まない。CABG関連出血がタイプ3以上のイベントと判断されない場合には,非出血イベントに分類する。CABGとの明確な時間的関係は認められるものの(すなわち,48時間以内),タイプ4の基準を満たさない出血イベントは,非出血イベントに分類する。
*:輸血の影響の補正(濃縮赤血球1単位または全血1単位=ヘモグロビン1g/dL)。
†:cell saver製品はカウントしない。 |
【CURE出血基準(Clopidogrel in Unstable Angina to Prevent Recurrent Events)】
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●大出血 実質的障害をもたらす出血,失明に至る眼内出血,2単位以上の輸血を要する出血。 大出血のうち,以下の場合は「生命を脅かす出血」と定義 ・致死的出血,ヘモグロビン5g/dL以上の低下をもたらす出血,強心薬静注を必要とする重篤な低血圧をもたらす出血 ・外科的介入を要する出血 ・症候性頭蓋内出血 ・4単位以上の輸血を要する出血 |
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●小出血 試験薬投与中止に至る,その他の出血。 |
【GUSTO出血基準(Global Utilization of Streptokinase and t-PA for Occluded Coronary Arteries Trial】
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●重度の出血または生命を脅かす出血 出血合併症が頭蓋内に発生した場合,または治療を要する著明な血行動態の悪化に至った場合。 |
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●中等度の出血 輸血が必要な場合。 |
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●小出血 輸血不要の場合,あるいは血行動態の悪化に至らない場合。 |
【ISTH出血基準(International Society of Thrombosis and Hemostasis)】
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大出血 | |
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1 | 致死的出血,かつ/または |
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2 | 重要な部位または臓器における症候性出血(頭蓋内,髄腔内,眼内,後腹膜,関節内または心膜,筋コンパートメント症候群を伴う筋肉内出血),かつ/または |
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3 | ヘモグロビン値の20g/L以上の低下をもたらす出血,2単位以上の輸血(全血または赤血球)を要する出血 |
【MATCH出血基準(Management of Atherothrombosis with Clopidogrel in High-risk Patients)】
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●生命にかかわる出血 あらゆる原因による致死的出血イベント,ヘモグロビン50g/L以上の低下,急性循環不全改善剤を必要とする重篤な低血圧(出血性ショック),症候性頭蓋内出血,赤血球4単位以上またはそれと同等量の全血の輸血 |
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●大出血 重篤な機能障害(持続性後遺症をともなう),重篤な視力低下を引き起こす眼内出血,赤血球3単位以下またはそれと同等量の全血の輸血 |
【PLATO出血基準(Platelet Inhibition and Patient Outcomes)】
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●生命を脅かす大出血 ・致死的出血 ・頭蓋内出血 ・心膜内出血で,出血に起因する心タンポナーデ,血液減少性ショック,または重症低血圧症を伴い,昇圧薬または外科手術を要するもの ・ヘモグロビン5g/dL以上の低下をもたらす出血 ・赤血球4単位以上の輸血を要する出血 |
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●その他の大出血 ・臨床的に重篤な障害をもたらす出血(永久的な視力喪失をもたらす眼内出血など) ・ヘモグロビン3g/dL以上5g/dL未満の低下,あるいは赤血球2~3単位の輸血を要する出血 |
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●小出血 ・大出血基準に合致しない,医学的介入を要する出血 |
【RE-LY出血基準(Randomized Evaluation of Long-term Anticoagulant Therapy)】
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●大出血 ヘモグロビン値の≧2.0g/dLの低下をともなう出血,≧2単位の輸血または重要な領域/臓器への症候性出血。 大出血はさらに以下に分類される。 ・頭蓋内出血:脳内出血,硬膜下出血。 ・頭蓋外出血:消化管出血,非消化管出血。 ・生命を脅かす出血:致死的または症候性脳内出血,ヘモグロビン値の≧5.0g/dLの低下をともなう出血,≧4単位の輸血/強心薬/手術を必要とする出血。 |
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●小出血 大出血以外の出血。 |
【REPLACE-2出血基準(Randomized Evaluation in PCI Linking Angiomax to Reduced Clinical Events)】
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●大出血 頭蓋内,眼内,後腹膜出血,ヘモグロビン3g/dL超の低下をもたらす臨床的に明白な出血,ヘモグロビン4g/dL超の低下をもたらすすべての出血,濃厚赤血球または全血2単位以上の輸血に至る出血。 |
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●小出血 大出血基準に合致しない,臨床的に明白な出血。 |
【ROCKET AF出血基準(Rivaroxaban Once Daily Oral Direct Factor Xa Inhibition Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation)】
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●重大な出血 下記に関連する臨床的に明白な出血 ・ ヘモグロビン値の≧2g/dLの低下をともなう出血 ・ ≧2単位の濃縮赤血球または全血の輸血 ・ 重要な部位[頭蓋内,随腔内,眼内,心膜,関節内,筋肉内(コンパートメント症候群をともなう),後腹膜]の出血 ・ 致死的転帰 |
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●重大ではないが臨床的に問題となる出血 重大な出血の基準に合致しないが,医学的介入,予定外の受診もしくは医師への電話連絡,試験薬の(一時的)中止,疼痛や日常生活障害などの不快感をもたらす明白な出血。 (例) ・ 5分以上持続するか,あるいは反復性の鼻出血(ハンカチに点状のしみがつく程度よりも重症の出血が24時間以内に複数回),またはインターベンション(パッキング,電気焼灼など)を要する鼻出血 ・ 自然発生的(歯磨きや食事に関連しない)か,または5分以上持続する歯肉出血 ・ 自然発生的肉眼的血尿または尿生殖路への手技(カテーテル留置または手術など)の後24時間以上持続する血尿 ・ 肉眼で確認できる消化管出血で,臨床的に明らかな1回以上の下血または吐血がある場合 ・ 数個の出血斑を認める程度よりも重症の直腸出血 ・ 喀痰中に数個の血液の固まりを認める程度よりも重症の喀血 ・ 筋肉内血腫 ・ 25cm2以上,何らかの誘因がある場合は100cm2以上の皮下血腫 ・ 多源性出血 |
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●微小出血 重大な出血,重大ではないが臨床的に問題となる出血の基準に合致しない他のすべての明白な出血。 |
【STEEPLE出血基準(Safety and Efficacy of Enoxaparin in Percutaneous Coronary Intervention Patients, an International Randomized Evaluation)】
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●大出血*1 致死的出血 後腹膜,頭蓋内,眼内出血 特別な治療を要する血行動態の悪化を引き起こす出血 止血または出血のコントロールのためにインターベンション(外科的/内視鏡的)または閉鎖空間の減圧を要する出血 濃厚赤血球または全血1単位以上の輸血を要する臨床的に明白な出血 ヘモグロビン3g/dL以上の低下をもたらす臨床的に明白な出血(ヘモグロビン値不明の場合は,10%以上のヘマトクリット値の低下) |
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●小出血*2 外傷に関連しない肉眼的血尿(例:器具による) 長引く,繰り返される,栓もしくはインターベンションを要する鼻出血 消化管出血 喀血 結膜下出血 >5cmの血腫,または入院/入院期間の延長を要する出血 ヘモグロビン2-3g/dLの低下をもたらす臨床的に明白な出血 硫酸プロタミン投与を要するコントロール不良の出血 |
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*1:大出血基準の1つ以上に該当する場合は大出血とする *2:大出血基準には合致せず,小出血基準の1つ以上に該当する場合は小出血とする |
【TIMI出血基準(Thrombolysis In Myocardial Infarction)】
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●治療を要する出血 薬物治療,外科治療,または検査室での評価を要するすべての出血で,大出血または小出血の基準に合致しないもの。 |
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●重篤な出血(significant) 大出血+小出血+治療を要する出血。 |
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●医療器具による出血(instrumented) 侵襲的処置により生じた出血。 |
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●自然出血(spontaneous) 侵襲的処置によるものでない出血(歯肉出血,鼻出血,消化管出血など)。 |
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●軽微な出血(minimal) 臨床的に明白な出血の徴候(画像を含む)があり,ヘモグロビン濃度の3 g/dL未満の低下(ヘモグロビン値が不明の場合は,ヘマトクリット値の9%未満の低下)を伴うもの*。 |
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●小出血(minor) 臨床的に明白な出血の徴候(画像を含む)があり,ヘモグロビン濃度の3-5 g/dLの低下(ヘモグロビン値不明の場合は,ヘマトクリット値の9-15%の低下)を伴うもの*。 |
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●大出血(major) (1)頭蓋内出血,または (2)臨床的に重大な出血の明白な徴候があり,5 g/dLを超えるヘモグロビン濃度の低下(ヘモグロビン値不明の場合は,15%を超えるヘマトクリット値の低下)を伴うもの*。 (3)CABGに関連する場合 ・致死的出血 ・周術期の頭蓋内出血 ・出血のコントロールのための,胸骨切開閉鎖後の再手術 ・48時間以内における全血あるいは濃厚赤血球5単位超の輸血(cell saver systemによる自己血輸血は血液製剤に含まない) ・24時間以内における胸腔チューブからの出血が2L超 |
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* 輸血の影響を考慮して,ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値を,ベースラインから輸血後の測定までに投与された濃厚赤血球(packed red blood cells: PRBC)または全血で補正する。血液1単位の輸血により,ヘモグロビン濃度は1 g/dL,ヘマトクリット値は3%増加するものとする。したがって,測定間に輸血を1回行ったときのヘモグロビン濃度またはヘマトクリット値の実際の変化量は,下記の計算式により算出される。 Δヘモグロビン=[ベースライン時ヘモグロビン値-輸血後ヘモグロビン値]+[輸血単位数] Δヘマトクリット=[ベースライン時ヘマトクリット値-輸血後ヘマトクリット値]+[輸血単位数×3] |
【ECASS出血性変化分類(hemorrhagic transformation)】
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●出血性梗塞タイプ1(HI1) 梗塞辺縁部に沿った小さな点状出血 |
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●出血性梗塞タイプ2(HI2) 梗塞領域内にあるが空間占拠性効果は認められない融合性点状出血 |
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●実質性出血タイプ1(PH1) 多少の空間占拠性効果を伴う,梗塞領域の30%以内の血腫 |
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●実質性出血タイプ2(PH2) 実質的な空間占拠性効果を伴う,梗塞領域の30%を超える血腫 |
【外来患者出血リスクインデックス(Outpatient Bleeding Risk Index)】
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【HAS-BLED出血リスクスコア】
欧州の心房細動患者3978例(EuroHeart Survey)の検討により得られた出血リスクスコア。3点以上を高リスクとする。
[文献追加4)]AMADEUSのidraparinux群患者2,283例における検討。≧3点以上は以下の予測因子;大出血(HR 2.3,95%CI 1.1-5, p<0.028),臨床的に意味のある出血(2.7,95%CI 1.9-3.8,p<0.001),死亡(HR2.8,95%CI 1.2-6.5,p<0.013)(低リスクとの比較)。
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高血圧:収縮期血圧>160mmHg 腎機能異常:慢性透析,腎移植,または血清クレアチニン≧2.26mg/dL 肝機能異常:慢性肝疾患 (例:硬変) または生化学的エビデンスによる重篤な肝障害 (例:ビリルビン正常値上限の2倍超,AST/ALT/ALP正常値上限の3倍超など) 出血:出血歴かつ/または出血傾向の既往 (出血性素因,貧血など) INR不安定:INRが不安定/高値または治療内時間が短い (例:<60%) 薬物/アルコール:薬物の併用 (抗血小板薬,非ステロイド系抗炎症薬,またはアルコール乱用など) |
【REACH/CHARISMA出血リスク予測スコア】
REACH registry登録患者68236例において重篤な出血(非致死的出血性脳卒中または入院/輸血を要する出血)のリスク因子を検討し,CHARISMA登録患者56616例で検証した。
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【RIETE致死的出血リスクスコア】
静脈血栓塞栓症(VTE)診断後3ヵ月の致死的出血リスクを推定するスコア。合計点数により<1.5点:低リスク,1.5~4点:中等度リスク,>4点:高リスクとする。
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【症候性頭蓋内出血(ECASS II定義)】
NIHSSスコア4点以上の悪化をともなう臨床状態の悪化があり,出血がその悪化の原因と考えられる。
【症候性頭蓋内出血(NINDS定義)】
頭蓋内出血を検出するため,脳卒中発症の24時間後,7~10日後,および臨床所見から出血が疑われるときにCTスキャンを実施。前回のCTでは所見がなく,出血が疑われて検出されるか,何らかの神経学的状態低下に続いて出血が検出された場合を症候性頭蓋内出血とする。
【症候性頭蓋内出血(SITS-MOST定義)】
治療開始の22~36時間後の追跡画像スキャンにおいて認められる局所または遠隔部の実質性症候性頭蓋内出血タイプ2。かつ,ベースライン時のNIHSSスコアまたはベースライン時から24時間後までの最低スコアから4点以上の低下,あるいは死亡を伴うもの。
【ARC定義ステント血栓症(Academic Research Consortium)】
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●definite*1
血管造影によるステント血栓症*2の確認
ステント内,またはステントの近位側,遠位側5mmの部位に由来する血栓*3を認め,かつ48時間以内に以下の基準のうち1項目以上を満たしたもの
安静時虚血症状の急性発症
急性虚血を示唆する新規の虚血性心電図変化 心臓バイオマーカーの典型的な上昇および低下 非閉塞性血栓症 マルチプロジェクション画像上に認められた球形/卵形/不規則形の非石灰化陰影欠損像,あるいは造影剤で囲まれたlucency,腔内における造影剤の貯留,造影剤の下流における塞栓
閉塞性血栓症
ステント内または近位部から近位部に最も近い側枝または主枝までがTIMI 0~1
病理によるステント血栓症の確認
剖検または血栓除去後の組織検査による亜急性ステント内血栓の所見
●probable
冠動脈内ステント植込み後に以下に該当した場合
30日以内の説明できない死亡*4
血管造影にてステント血栓症を認めず,その他の原因も特定できない,ステント植込み領域の急性虚血に関連する心筋梗塞(ステント植込み後の経過時間は問わない) ●possible
冠動脈内ステント植込み後30日から追跡終了までに生じた説明できない死亡
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*1:definiteは血管造影または病理学的検査により確認されたもの *2:臨床徴候,症状を伴わないが,血管造影により偶発的にステント塞栓症の所見を認めた場合はdefiniteとはみなさない *3:冠動脈内血栓 *4:ST上昇型心筋梗塞患者を対象とした試験では定義から除外してもよい |
【CHADS2スコア】
Gageら(JAMA 2001; 285: 2864-70. Pubmed)によって提唱された心房細動患者における塞栓症リスク評価スコア。
うっ血性心不全(CHF),
高血圧症(HT),年齢(Age;75歳以上),糖尿病(DM)を各1点,脳卒中または一過性脳虚血
発作の既往(Stroke)を2点としてカウントし,合計点を算出して塞栓症リスクを評価する。
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●心房細動を有していない初発の脳梗塞患者1,756例における検討 脳卒中前のCHADS2スコアは長期転帰を予測した。低リスク患者にくらべ,中等度または高リスク患者ではリスクが高かった。 [5年後の死亡率]中等度リスク:HR 2.22,95%CI 1.78-2.77,高リスク:3.66,95%CI 2.38-5.62)。 [脳卒中再発]中等度リスクHR 1.74;1.09-2.79,HR 1.71;1.08-2.71。 [心血管事象]HR 1.78;1.23-2.57,HR 1.86;1.30-2.67。 |
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●心房細動/粗動を有していないACS患者20,970例における検討 CHADS2スコアはNVAF患者と同様に脳梗塞/TIA発症を予測したが,絶対発症率は低かった。点数別の発症率およびORは以下の通り。 [脳卒中] 0:年間発症率0.15%,OR 1.00(参考値)。 1:0.29%,OR 1.81,95%CI 1.18-2.77。 2:0.55%,OR 3.84,95%CI 2.53-5.83。 ≧3:0.94%,OR 6.38,95%CI 4.09-9.94。 [TIA] 0:年間発症率0.03%,OR 1.00(参考値)。 1:0.11%,OR 3.21,95%CI 1.44-7.17。 2:0.31%,OR 8.90,95%CI 4.08-19.45。 ≧3:0.57%,OR 17.00,95%CI 7.65-37.8。 [死亡] 0:年間発症率0.76%,OR 1.00(参考値)。 1:1.37%,OR 1.84,95%CI 1.53-2.22。 2:3.52%,OR 4.98,95%CI 4.15-5.97。 ≧3:8.97%,OR 14.25,95%CI 11.79-17.23。 |
【CHA2DS2VAScスコア】
抗凝固療法が必要であるかの判断に影響しうる脳卒中リスク因子を追加することで,CHADS2の構造をさらに拡大したリスクスコア。
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a 心筋梗塞の既往,末梢動脈疾患,大動脈プラーク。現コホートにおける脳卒中の実質発症率はこれらの推定値により変動する可能性あり。
b Lip et al, Stroke 2010;41:2731-8より引用。 LVEF:駆出率(心エコー,核医学的心室造影,心カテーテル,心臓MRIなどにより確認) |
ビタミンK拮抗薬/ヘパリン非投与の非弁膜症性心房細動/粗動患者における血栓塞栓症*による入院または死亡の発生率
1年後 | 5年後 | 10年後 | |||
CHADS2 | 低リスク | 0 | 1.67(1.47-1.89) | 1.28(1.19-1.38) | 1.24(1.16-1.33) |
中等度リスク | 1 | 4.75(4.45-5.07) | 3.70(3.55-3.86) | 3.56(3.42-3.70) | |
高リスク | 2~6 | 12.27(11.84-12.71) | 8.30(8.08-8.51) | 7.97(7.77-8.17) | |
CHA2DS2-VASC | 低リスク | 0 | 0.78(0.58-1.04) | 0.69(0.59-0.81) | 0.66(0.57-0.76) |
中等度リスク | 0 | 2.01(1.70-2.36) | 1.51(1.37-1.67) | 1.45(1.32-1.58) | |
高リスク | 2~9 | 8.82(8.55-9.09) | 6.01(5.88-6.14) | 5.72(5.60-5.84) |
* :末梢動脈塞栓,虚血性脳卒中,肺塞栓症 数値は%/100例・年を示す |
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●心房細動を有していない初発の脳梗塞患者1,756例における検討 脳卒中前のCHA2DS2-VAScスコアは長期転帰を予測した。低リスク患者にくらべ,中等度または高リスク患者ではリスクが高かった。 [5年後の死亡率]HR 3.56;1.89-6.70。 [脳卒中再発]HR 2.93;1.30-6.61。 [心血管事象]HR 2.71;1.49-4.95。 |
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●心房細動/粗動を有していないACS患者20,970例における検討 CHA2DS2-VAScスコアはNVAF患者と同様に脳梗塞/TIA発症を予測したが,絶対発症率は低かった。点数別の発症率およびORは以下の通り。 [脳卒中] 1:年間発症率0.11%,OR 1.00(参考値)。 2:0.18%,OR 1.54,95%CI 0.86-2.7。 3:0.36%,OR 2.78,95%CI 1.58-4.88。 ≧4:0.73%,OR 6.15,95%CI 3.62-10.43。 [TIA] 1:年間発症率0.04%,OR 1.00(参考値)。 2:0.04%,OR 0.94,95%CI 0.32-2.82。 3:0.20%,OR 5.41,95%CI 2.14-13.70。 ≧4:0.39%,OR 10.67,95%CI 4.34-26.2。 [死亡] 1:年間発症率0.48%,OR 1.00(参考値)。 2:0.92%,OR 1.97,95%CI 1.48-2.62。 3:1.79%,OR 3.94,95%CI 3.00-5.18。 ≧4:5.43%,OR 12.95,95%CI 9.99-16.77。 |
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●抗血栓療法をうけていない心房細動患者186,570例における検討(台湾) CHA2DS2-VAScスコア0点の患者における脳梗塞リスクは低かった。 [スコア別の脳梗塞発症率(1年後→15年後,数値は100患者・年)] 0点:1.06→1.15,1点:1.72→2.09,2点:3.17→3.33,3点:4.17→4.05,4点:5.80→4.52,5点:6.60→5.32,6点:5.52→4.86,7点:13.33→8.00,全体:2.95→2.84 |
【R2CHADS2スコア】
ROCKET AFのデータを用いて開発され,ATRIAコホートデータを用いて検証された塞栓症リスクスコア。CHADS2スコア(うっ血性心不全,高血圧,年齢75歳以上,糖尿病を各1点,脳卒中または一過性脳虚血発作の既往を2点)に腎機能障害(クレアチニンクリアランス<60mL/分,2点)を加え,最大8点とした。
ROCKET AF でのKaplan-Meier法による2年後の発症率は,低リスク(R2CHADS2スコア0~3)2.8%,中等度リスク(4,5)5.0%,高リスク(6~8)6.7%。
R2CHADS2スコアのC統計量は0.587で,net reclassification index(NRI)はCHA2DS2-VAScスコアに比べ6.2%(95%CI 0.9-11.6,p=0.023,C統計量0.578),CHADS2スコアに比べ8.2%(95%CI 2.5-14,p=0.005,C統計量0.575)改善された。
ATRIAコホートでの検証では,識別力はCHADS2スコアと同程度であったが(C統計量:R2CHADS20.672,CHADS2スコア0.673),脳卒中のNRIは17.4%(95%CI 12.1-22.5)改善した。
【Barthel Index】
代表的な日常生活動作(ADL)の評価指標。下記の10項目について0-15点で採点する。すべて自立していれば100点,すべて介助してもらっていれば0点となる。
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自立 | 部分介助 または一部可能 |
全介助 または不可能 |
食事 | 10 | 5 | 0 |
車椅子からベッドへの移乗 | 15 | 5-10 | 0 |
整容 | 5 | 0 | 0 |
トイレ動作 | 10 | 5 | 0 |
入浴 | 5 | 0 | 0 |
歩行 | 15 | 10 | 0 |
(車椅子の場合) | 5 | 0 | 0 |
階段昇降 | 15 | 10 | 0 |
着替え | 15 | 10 | 0 |
排便コントロール | 15 | 10 | 0 |
排尿コントロール | 15 | 10 | 0 |
【modified Rankin Scale(mRS)】
慢性期において脳卒中による障害を評価するスケールとして広く使われている。
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Grade | |
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0 | まったく症状なし |
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1 | 症状はあるが特に問題となる障害なし(通常の日常生活および活動はすべて可能) |
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2 | 軽度の障害(以前の活動のすべてはできないが,自分のことは介助なしにできる) |
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3 | 中等度の障害(一部介助を必要とするが,介助なしに歩行できる) |
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4 | 比較的高度の障害(介助なしに歩行や日常生活を行うことは不可能) |
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5 | 高度の障害(寝たきり,失禁,常に看護や注意を必要とする) |
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6 | 死亡 |
【National Institutes of Health stroke scale(NIHSS)】
世界中で広く用いられている脳卒中急性期の重症度評価法。血栓溶解療法を実施する際には必須となっている。1994年版,2001年改訂版ともに障害のない場合は0点で,各項目の合計点数が大きいほど重症となる。
【1994年版】
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1a.意識レベル 0:覚醒,1:簡単な刺激で覚醒,2:反復刺激や強い刺激で覚醒,3:無反応 |
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1c.意識レベル(質問) 0:2問とも正答,1:1問正答,2:2問とも誤答 |
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1c.意識レベル(従命) 0:両方の指示動作が正確に行える,1:片方の指示動作のみ正確に行える,2:いずれの指示動作も行えない |
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2.注視 0:正常,1:部分的注視麻痺,2:完全注視麻痺 |
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3.視野 0:視野欠損なし,1:部分的半盲,2:完全半盲,3:両側性半盲 |
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4.顔面麻痺 0:正常,1:軽度の麻痺,2:部分的麻痺,3:完全麻痺 |
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5a.左腕 0:10秒保持可能(下垂なし),1:10秒以内に下垂,2:重力に抗するが10秒以内に落下, 3:重力に抗する動きがみられない,4:まったく動きがみられない |
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5b.右腕 0:10秒保持可能(下垂なし),1:10秒以内に下垂,2:重力に抗するが10秒以内に落下, 3:重力に抗して動かない,4:まったく動きがみられない |
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6a.左脚 0:5秒保持可能(下垂なし),1:5秒以内に下垂,2:重力に抗するが5秒以内に落下, 3:重力に抗する動きがみられない,4:まったく動きがみられない |
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6b.右脚 0:5秒保持可能(下垂なし),1:5秒以内に下垂,2:重力に抗するが5秒以内に落下, 3:重力に抗する動きがみられない,4:まったく動きがみられない |
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7.運動失調 0:なし,1:1肢,2:2肢 |
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8.感覚 0:正常,1:軽度から中等度の障害,2:高度の障害 |
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9.言語 0:正常,1:軽度の失語,2:高度の失語,3:無言,全失語 |
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10.構音障害 0:正常,1:軽度から中等度の障害,2:重度の障害 |
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11.消去/無視 0:正常,1:軽度から中等度の障害,2:重度の障害 |
【2001年版】
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意識レベル(質問) 0:2問とも正答,1:1問正答,2:2問とも誤答 |
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意識レベル(従命) 0:両方の指示動作が正確に行える,1:片方の指示動作のみ正確に行える,2:いずれの指示動作も行えない |
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注視 0:正常,1:部分的注視麻痺,2:完全注視麻痺 |
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視野 0:視野欠損なし,1:部分的半盲,2:完全半盲目,3:両側性半盲 |
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左腕 0:10秒保持可能(下垂なし),1:10秒以内に下垂,2:重力に抗するが10秒以内に落下, 3:重力に抗する動きがみられない,4:まったく動きがみられない |
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右腕 0:10秒保持可能(下垂なし),1:10秒以内に下垂,2:重力に抗するが10秒以内に落下, 3:重力に抗する動きがみられない,4:まったく動きがみられない |
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左脚 0:5秒保持可能(下垂なし),1:5秒以内に下垂,2:重力に抗するが5秒以内に落下, 3:重力に抗する動きがみられない,4:まったく動きがみられない |
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右脚 0:5秒保持可能(下垂なし),1:5秒以内に下垂,2:重力に抗するが5秒以内に落下, 3:重力に抗する動きがみられない,4:まったく動きがみられない |
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感覚 0:正常,1:異常 |
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言語 0:正常,1:軽度の失語,2:高度の失語,3:無言,全失語 |
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無視 0:正常,1:軽度の無視,2:高度の無視 |
【ABCD2スコア】
一過性脳虚血発作(TIA)後早期の脳卒中発症を予測するリスクスコア。7点満点で,点数が高いほど脳卒中発症リスクが高くなる。
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A: | 年齢(60歳以上=1点) |
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B: | 高血圧(TIA後最初に測定された血圧が収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上=1点) |
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C: | TIAの臨床症状(片麻痺=2点,構音障害のみ=1点,その他=0点) |
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D: | TIAの症状持続時間 (60分以上=2点,10~59分=1点,10分未満=0点) |
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D: | 糖尿病(1点) |
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6~7点: | 脳卒中高リスク(2日以内8.1%,7日以内11.7%,90日以内17.8%) |
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4~5点: | 脳卒中中等度リスク(2日以内4.1%,7日以内5.9%,90日以内9.8%) |
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0~3点: | 脳卒中低リスク(2日以内1.0%,7日以内1.2%,90日以内3.1%) |
【福岡脳卒中リスクスコア】
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日本人の虚血性脳卒中発症後1年間の再発リスクを予測するスコア。
リスク因子は以下の通り。 |
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年齢(65~74歳1点,75歳以上2点),高血圧(1点),糖尿病(1点),喫煙(1点),心房細動(1点),心疾患(1点),慢性腎疾患(1点),非ラクナ梗塞(1点),虚血性脳卒中既往(2点) |
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点数が高いほど再発リスクが高くなる。1年後の再発率は低リスク(≦3点):2.93%,中等度(4~5点):5.83%,高リスク(≧6点):7.96%。 |
【iScore】
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Registry of the Canadian Stroke Network(12,262例),Ontario Stroke Audit(3,720例)のデータを用い開発,検証された脳梗塞後の死亡リスクを予測するスコア。 [30日後の死亡率]iScore<105点:1.07%,106~120点:2.47%,121~145点:5.25%,146~175点:14.80%,>175点:39.07%。(C統計量0.850) [1年後の死亡率]iScore<90点:2.97%,91~105点:8.88%,106~120点:17.04%,121~140点:29.26%,>140点:58.92% 。(C統計量0.823) iScoreは下記を加算する(30日後の死亡率予測スコア/1年後の死亡率予測スコア) |
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[年齢]+年齢/+年齢 [性別]男性+10/+5 [脳卒中の重症度(Canadian Neurological Scale:CNS)]0*:+105/+70,≦4:+65/+40,5~7:+40/+25,≧8:0/0 [脳卒中の病型]ラクナ:0/0,非ラクナ:+30/+15,不明:+35/+20 [リスク因子]心房細動:+10/+5,うっ血性心不全:+10/+10,心筋梗塞既往:該当なし/+5,喫煙:該当なし/+5 [併発状態]がん:+10/+15,腎臓透析:+35/+40 [入院前の障害]自立:0/0,後遺障害:+15/+20 [入院時の血糖値(mg/dL)]<135:0/0,≧135:+15/+10 |
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*:昏睡患者は0とする |