11月5日 LBCT 4 Novel Treatments for Managing Lipid Disorders
LBCT 4 Overview寺本 民生
今回のLBCT 4はLDL-Cの強力な低下薬であるPCSK9抗体の試験と,HDL-C上昇を目指したCETP阻害薬の研究に絞られた。PCSK9抗体については,2種類の抗体が発表された。
RUTHERFORD試験はAMG145という抗体を用いて家族性高コレステロール血症でLDL-Cの目標値である100mg/dLに到達できていない症例に対して,本剤の使用で70~89%の到達率を示すという強力なLDL-C低下効果を示している。また,GAUSS試験は,副作用などでスタチンを使用できない症例に対する試験であるが,これでも用量依存的にLDL-Cの低下は63%まで可能とされている。いずれもスタチンが到達できなかった領域にまでLDL-C低下ができることを示している。RN316を用いた試験でも,ほぼ同様の結果が得られているが,AMG145は皮下注射であり,RN316は静脈注射である。高コレステロール血症に対するこのような注射剤が受け入れられるか判断に苦しむが,重症で再発の危険の高い二次予防症例などでは,必要性があるものと思われる。このような強力なLDL-C低下効果がスタチンの効果を超えて,更なる心血管イベントの抑制につながるか大変興味のあるところである。
CETP阻害薬についてはdal-OUTCOMES試験結果が発表された。これは,すでに有効性の証明ができなかったということで中止された試験として知られていたが,詳細についての発表は今回が初めてである。この試験結果から,第一にCETP阻害により上昇するHDLの抗動脈硬化作用が十分でない可能性とともに,スタチンの効果を凌駕するほどの効果を示し得なかった可能性が考えられる。現在進行中の,anacetrapibとevacetrapibによるアウトカム試験により,その一部は解決されるかもしれない。残る2剤はHDL-Cの上昇率が極めて高いとともにLDL-Cの低下効果,Lp(a)の低下効果など多面的効果があるため,HDL-C上昇自体の意義については証明できない可能性は残る。
Reduction of LDL-C with PCSK9 Inhibition in Heterozygous Familial Hypercholesterolemia Disorder (RUTHERFORD): Interim Results from a Phase 2, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial
安定用量のスタチン±小腸コレステロールトランスポーター阻害薬ezetimibeによる治療下でもLDL-C<100mg/dLを達成できないヘテロ接合体家族性高コレステロール血症患者において,抗PCSK9ヒトモノクローナル抗体製剤(AMG-145)の4週間ごとの皮下注により,12週間後のLDL-Cが低下(第2相試験)。
presenter: Frederick Raal ( Carbohydrate & Lipid Metabolism Res Unit, Div of Endocrinology & Metabolism, Dept of Med, Univ of Witwatersrand, South Africa )
Goal Achievement after Utilizing an Anti-PCSK9 Antibody in Statin Intolerant Subjects (GAUSS): Interim Results from a Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Study
筋肉関連の副作用のため有効量のスタチンに不忍容の高コレステロール血症患者において,抗PCSK9ヒトモノクローナル抗体製剤(AMG-145)の4週間ごとの皮下注により12週間後のLDL-Cがezetimibe単独投与にくらべ有意に低下(第2相試験)。
presenter: Evan Stein ( Metabolic and Atherosclerosis Res Ctr, US )
Effects of 12 Weeks of Treatment with RN316 (PF-04950615), a Humanized IgG2Δa Monoclonal Antibody Binding Proprotein Convertase Subtilisin Kexin Type 9, in Hypercholesterolemic Subjects on High and Maximal Dose Statins
高用量または最大用量のスタチンで治療中の高コレステロール血症患者において,4週間ごとの抗PCSK9ヒトモノクローナル抗体製剤(RN316[PF-04950615])静注の追加によりLDL-Cが有意に低下(第2相試験)。
presenter: Barry Gumbiner ( Pfizer, Inc., San Diego, US )
抗PCSK9モノクローナル抗体
PCSK9はセリンプロテアーゼの一種で,肝臓で合成され血中に分泌される蛋白である。LDL受容体に結合し,LDL受容体の分解を促進する蛋白として知られており,PCSK9の機能獲得型変異をもった先天性疾患がまさに家族性高コレステロール血症と表現型が同一であることから発見された蛋白。この蛋白に対するモノクローナル抗体製剤の試験が進んでおり,ACC 2012ではSAR236553によるLDL-Cの有意な低下と良好な安全性が報告された(第2相試験)。
Effects of the Cholesteryl Ester Transfer Protein Inhibitor Dalcetrapib in Patients with Recent Acute Coronary Syndrome
陳旧性の急性冠症候群患者において,現行治療へのCETP阻害薬ダルセトラピブ(dalcetrapib)追加によりHDL-Cはおよそ30%
,LDL-Cはわずかに
。しかし,心血管疾患抑制の上乗せ効果は認められず。
presenter: Gregory G Schwartz, MD, PhD ( VA Medical Center and University of Colorado, US )
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