Aldo-DHF
Aldosterone Receptor Blockade in Diastolic Heart Failure
拡張性心不全患者において,アルドステロン受容体拮抗薬スピロノラクトン(spironolactone)は,12ヵ月後の拡張機能を改善したが,運動能力は改善せず(第IIb相試験)。
背景・目的
心不全患者のおよそ半数を占める収縮機能が保持された拡張性心不全患者の転帰は不良であるが,治療法はまだ確立していない。
拡張性心不全患者において,アルドステロン受容体拮抗薬スピロノラクトン(spironolactone)の有効性と安全性を検討する。
[一次エンドポイント]12ヵ月後の運動能力(最大酸素消費量[VO2max])および拡張機能(E/é)。
コメント
収縮機能の維持された心不全(HFPEP, DHF)に有効な治療薬は未だ見つかっていない。本症には心筋線維化の関与が大きいと考えられ,抗アルドステロン薬の有効性が期待されていた。本試験はスピロノラクトン(25mg/日)の有用性を検討した第IIb相の臨床試験であるが,左室拡張能の指標であるE/éはプラセボに比し有意に減少し,左室心筋重量(LVMI)も有意に低下しNT-ProBNP値も低値となったが,運動耐容能(PVO
2), NYHA機能分類やQOLは改善が見られなかった。本試験は,アウトカムを検証する試験でなくサロゲート指標をみたものであるが,心室拡張能の改善と心筋リモデリングの抑制が認められたことは抗アルドステロン薬の有用性を示唆するものである。運動耐容能や心不全症状の改善がみられなくても必ずしもアウトカムに結びつくわけではない。しかし,本試験の対象症例は,DHF (拡張性心不全)としては軽症群(E/é=12.8:拡張期充満機能の確実な障害は>15)で利尿薬の使用率もあまり高くなく死亡例もないことから,代典的なDHF(HFPEF)を対象としているわけではないことは留意しておく必要があろう。抗アルドステロン薬のアウトカムに対する有効性は現在NIH主導で進行中のTOPCAT試験の結果に期待したい(
堀 正二)。
デザイン
ランダム化,プラセボ対照,二重盲検,多施設。
対象
422例。心不全の徴候・症状を有するEF≧50%,拡張機能障害,VO2max<25mL/kg/分。
期間
追跡期間は12ヵ月。
治療
spironolactone群(213例:25mg/日)vs プラセボ群(209例)。
拡張機能(E/é)は心エコー組織ドプラ法による左室充満圧で評価。
結果
[一次エンドポイント]
拡張機能(E/é):6,12ヵ月後ともに spironolactone群はプラセボ群より有意に低下(
P<0.001)。
VO2max:6ヵ月後に両群とも低下し,12ヵ月後にともに上昇したが,いずれも両群間に有意差はみられなかった。
[その他]
spironolactone群では降圧したが,NYHA,QOLの改善はみられなかった。
同群で多くみられた有害事象は,腎機能悪化(77例 vs 43例,P<0.001),貧血の新規発症・悪化(34例 vs 18例,P=0.03),カリウム>5mmol/Lの上昇(44例
vs 22例,P=0.005)。
presenter: B Pieske, MD ( Medical University Graz, AT )
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