目的 |
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ステント血栓症,死亡,心筋梗塞(MI)の増加を示す最近の報告からその安全性が疑問視されるようになっている薬剤溶出性ステント(DES)の短期・長期の有効性をベアメタルステント(BMS)と比較する。
評価エンドポイント:ステント血栓症;標的病変・血管の血行再建術再施行;心筋梗塞(MI),Q波・非Q波梗塞;全死亡,心臓死,非心臓死;死亡+MI;死亡+Q波梗塞;心臓死+MI。 |
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対象 |
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sirolimus溶出ステント(SES)とBMSを比較したランダム化二重盲検試験(1748例:SES群878例,BMS群870例):RAVEL,SIRIUS,E-SIRIUS,C-SIRIUSの4試験。
paclitaxel溶出ステント(PES)とBMSを比較したランダム化二重盲検試験(3513例:PES群1755例,BMS群1758例):TAXUS-I,II,IV,V,VIの5試験。
■患者背景:SES試験で糖尿病がSES群よりBMS群の方が多かった(p=0.03)。PES試験の方がSES試験よりも病変長,総ステント長が長く,1患者当たりの植込みステント数はSES試験の方が多かった。 |
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期間 |
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追跡期間は手技後SES 試験4年,PES試験3.2年(中央値)。
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方法 |
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SES 4試験とPES 5試験のデータを合体後,主要なエンドポイントを解析。
ステント植込み〜30日後,30日後〜1年後,1年後〜最終追跡時,植込み〜最終追跡時と時間別に解析した。 |
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結果 |
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- ステント血栓症
4年間でSES群10例(1.2%)vs BMS群5例(0.6%)で両群間に有意差はみられなかった(p=0.20)。同様にPES群も20例(1.3%)vs 14例(0.9%)でBMS群との有意差はなかった(p=0.30)。
しかし植込みから1〜4年後の遅発性ステント血栓症は,SES群5例(0.6%):aspirin,clopidogrel投与2例,aspirinのみ投与2例,抗血小板薬非投与1例 vs BMS群0%とSES群で1例/489人・年増加した(p=0.025)。同時期,PES群は9例(0.7%):aspirinのみ投与3例,抗血小板薬非投与5例,不明1例 vs 2例(0.2%)とBMS群より1例/557人・年増加した(p=0.028)。
- 標的病変血行再建術
SES群66例(7.8%),BMS群202例(23.6%)とSES群で有意に低下した(ハザード比[HR]0.29;95%信頼区間0.22〜0.39,p<0.001)。
PES群166例(10.1%),BMS群338例(20.0%)とPES群で有意に低下した(HR 0.46;0.38〜0.55,p<0.001)。
- 標的血管血行再建術
SES群102例(12.1%),BMS群235例(27.5%)とSES群で有意に低下した(HR 0.38;030〜0.48,p<0.001)。
PES群272例(17.2%),BMS群409例(24.7%)とPES群で有意に低下した(HR 0.62;0.53〜0.73,p<0.001)。
- 死亡
全死亡:SES群57例(6.7%),BMS群45例(5.3%)で両群間に有意差はなかった(HR 1.27;0.86〜1.88,p=0.23)。
PES群も86例(6.1%)vs 92例(6.6%)でBMS群間との有意差は認められなかった(HR 0.94;0.70〜1.26,p=0.68)。
心臓死,非心臓死も同様に群間差はなかった。
- MI
SES群55例(6.4%),BMS群53例(6.2%)で両群同様(HR 1.03;0.71〜1.51,p=0.86)。PES群も111例(7.0%)vs 105例(6.3%)で同様であった(HR 1.06;0.81〜1.39,p=0.66)。
植込みの30日後〜1年後にPES群でBMS群に比べ有意に少なかった(14例[0.8%] vs 31例[1.8%],HR 0.45;0.24〜0.85,p=0.01)以外に,時間別の差もみられなかった。
Q波梗塞,非Q波梗塞も群間に有意差はなかった。
- 死亡+MI
SES群100例(11.6%),BMS群89例(10.4%):HR 1.12;0.84〜1.49(p=0.44),PES群187例(12.4%)vs 183例(11.8%):HR 1.03;0.84〜1.26(p=0.79)と,SES群,PES群ともBMS群との間に有意差は認められなかった。
植込みから30日後〜1年後にMI+心臓死がPES群でBMS群に比べ有意に抑制された(1.4% vs 2.5%[p=0.03],これは主に非Q波梗塞0.4% vs 1.6%[p<0.001]による)以外に,時間別の違いはみられなかった。
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