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欧州心臓病学会学術集会(ESC 2013) 2013年8月31日~9月4日,オランダ・アムステルダム
伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry):超高齢心房細動患者の臨床的特徴
2013.9.18
山下侑吾氏
山下侑吾氏(京都医療センター循環器内科)

超高齢の心房細動患者は血栓塞栓症リスクが高く,大出血発現率も高い-欧州心臓病学会(ESC Congress 2013)にて,山下侑吾氏(京都医療センター循環器内科)が9月2日に発表した。

●目的・方法

心房細動は人口の高齢化に伴い増加しているが,85歳以上の超高齢者に関するデータはきわめて限られている。

Fushimi AF Registryは,2011年3月,京都市伏見区における心房細動患者を可能な限り全例登録し,患者背景や治療の実態調査,予後追跡を行うことを目的として開始された。同区の人口は283,000人で,人口構成は日本全体とよく一致しており,日本の都市型地域医療の典型例であると考えられる。

本研究の患者登録基準は心電図またはホルター心電図で心房細動が認められた症例とし,除外基準は設けなかった。参加施設は77施設(高度循環器専門施設2施設,小~中規模病院10施設,開業医クリニック65施設)で,2011年3月~2012年12月の期間中,3,378例(人口の1.2%)が登録された。

本解析では,対象患者を85歳以上の超高齢者(547例,全体の16.2%)および85歳未満(2,831例,同83.8%)に分け,患者背景の比較を行った。

●結果

超高齢者の内訳は85~89歳349例,90~94歳141例,95~99歳52例,100歳以上5例。85歳以上の超高齢者は85歳未満の患者にくらべ,女性が多く(67.1%および35.9%),低体重であった(48.6 kgおよび60.5 kg,BMI 21.0および23.2)。平均CHADS2スコア(2.83および1.95),平均CHA2DS2-VAScスコア(4.62および3.20)とも超高齢者のほうが高かった(ここまですべてp<0.0001)。心房細動の病型は,発作性40.4%および47.5%,持続性4.9%および8.2%,永続性54.7%および44.3%であった。

CHADS2スコアの項目のうち,心不全合併率(41.3%および24.9%),脳卒中既往率(28.7%および17.8%)は超高齢者のほうが高かった(いずれもp<0.0001)。しかし,糖尿病合併率(17.0%および24.4%,p=0.0001)は低く,高血圧合併率は同程度であった(いずれも61.2%)。

また,超高齢者は大出血既往率(3.7%および1.6%,p=0.003),慢性腎臓病合併率が高かった(39.6%および23.6%,p<0.0001)。

抗血栓薬処方率をみると,超高齢者は非高齢者にくらべワルファリン処方率が低く(36.8% vs. 50.2%,p<0.0001),年齢が上がるにつれて低くなる傾向がみられた(85~89歳42.1%,90~94歳31.9%,95歳以上15.8%)。超高齢・非高齢のいずれにおいても,脳卒中既往患者は非既往患者にくらべワルファリン処方率が高かった。一方,大出血既往の有無で比較すると,非高齢者では処方率がほぼ変わらないのに対し,超高齢者では大出血既往患者での処方率が低下することが示された。

アスピリン処方率は超高齢者,非高齢者間では同程度であり(25.6%および25.3%),年齢による変化はみられなかった。

●結論

超高齢の心房細動患者は,血栓塞栓症リスクが高いにもかかわらずワルファリンの処方率が低く,CHADS2スコア別にみても総じて30~50%に留まった。一方で,超高齢者では大出血発現率も高いことが示されたことから,超高齢者に対する抗凝固療法の適応および用量決定は慎重に行わなければならない。

伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry)
代表:赤尾昌治氏(国立病院機構京都医療センター)
UMIN試験ID:UMIN000005834
公式ウェブサイト

Yamashita Y, et al. Clinical characteristics of super-elderly patients with atrial fibrillation: from the Fushimi AF registry. Eur Heart J 2013; 34(Abstract Supplement ), 790. [abstract: P4275

AHA 2013での伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry)の発表はこちらからご覧いただけます。


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