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重症虚血性心不全 MSC群 vs プラセボ群 6ヵ月後の左室収縮末期容積↓:MSC群>プラセボ群*
MSC-HF 
Mesenchymal Stromal Cells in chronic ischemic Heart Failure
重症虚血性心不全患者において,自己骨髄由来の間葉系間質細胞(MSC)心筋内注射により心機能が改善。心筋重量の増加,瘢痕組織の減少,症状やQOLの改善もみられた(第II相試験)。
背景・目的 これまでに,幹細胞治療によって傷害された心筋組織を修復できる可能性が示されてきたが,個々の心血管疾患に対して最適な細胞種や移植方法は明らかになっていない。
重症虚血性心不全患者において,自己骨髄由来の間葉系間質細胞(MSC)*の心筋内注射による臨床的ベネフィットをプラセボと比較する。

[一次エンドポイント]6ヵ月後の左室収縮終末期容積の変化。

* 間葉系間質細胞(mesenchymal stromal cell: MSC):骨髄は,血球成分の前駆細胞である造血幹細胞と,骨髄間質細胞からなる。骨髄間質細胞には,間葉系組織(血管,筋肉,脂肪,骨,軟骨など)に分化する間葉系幹細胞が含まれることが古くから知られている。間葉系幹細胞は幹細胞としての性質である自己複製能と多分化能を備えていることから,これを移植することで損傷した心筋や血管網を再生し,心臓の機能を改善することが試みられている。
参考: http://plaza.umin.ac.jp/JPS1927/fpj/topic/topic120-1-67.htm(日本薬理学会ウェブサイト)

デザイン ランダム化,プラセボ対照,二重盲検,単施設(デンマーク)。
対 象  59例。NYHA心機能分類II-III度でほかに治療法のない重症虚血性心不全患者。
■患者背景:年齢65.5歳,EF 28.1%。
期 間 追跡期間は6ヵ月。
治 療  MSC群(39例):骨髄から採取し培養したMSCを,右大腿動脈カテーテルを用いて心筋内注射,プラセボ群(20例)(2:1のランダム化)。
結 果 [一次エンドポイント]
MSC群ではプラセボ群に比して-14.2mLと有意に改善した(P=0.001)。

[二次エンドポイント]
・EFの変化:MSC群ではプラセボ群に比して+6.8%と有意に改善した(P<0.0001)。
・一回拍出量の変化:MSC群ではプラセボ群に比して+20.0mLと有意に改善した(P<0.0001)。
・心筋重量の変化:MSC群ではプラセボ群に比して+12.3gと有意に改善した(P<0.0001)。
・瘢痕組織重量の変化:MSC群ではプラセボ群に比して-3.9gであったが,有意差はなかった。
・QOL:追跡期間中のKansas City Cardiomyopathy Questionnaire(KCCQ)スコアは,MSC群で有意に改善したが(P<0.0001),プラセボ群では変化なし。

[その他]
・NYHA心機能分類:追跡期間中,MSC群,プラセボ群ともに有意な改善がみられた(それぞれP<0.0001,P=0.001)。

presenter: Anders Bruun Mathiasen, MD ( Copenhagen University Hospital, Denmark )
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