ACE阻害薬,ARBの血圧依存・非依存効果
Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration:BPLTTC meta-analysis
ACE阻害薬,AII受容体拮抗薬(ARB)による脳卒中,冠動脈疾患,心不全リスクに対する血圧依存性抑制効果は同程度であった。ACE阻害薬による主要冠動脈疾患イベントに対する血圧非依存性抑制効果がみられたが,ARBでは認められなかった。
Blood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration. Blood pressure-dependent
and independent effects of agents that inhibit the renin-angiotensin system.
J Hypertens. 2007; 25: 951-8.PubMed
目的 |
|
高血圧,糖尿病,CHD既往,脳血管疾患を有する患者における異なる降圧治療による主要心血管イベント抑制効果を検討する。
一次エンドポイントは脳卒中,CHD,心不全。 |
|
対象 |
|
-
Blood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration(BPLTTC)が選別した,2004年までに発表されたACE阻害薬またはARBを他の治療(プラセボ,従来療法 [利尿薬/β遮断薬],またはCa拮抗薬)と比較した26のランダム化比較試験。
ACE阻害薬17試験*:101626例,平均年齢65歳,男性61%。
ARB 9試験**:45212例,平均年齢67歳,男性58%。
* CAMELOT, DIAB-HYCAR, EUROPA, HOPE, PART2, PEACE, PROGRESS, SCAT, AASK, ALLHAT, ANBP2, CAPPP, STOP-Hypertension 2, UKPDS, ABCD(高血圧), ABCD(正常血圧), JMIC-B
** CHARM-Added, CHARM-Alternative, CHARM-Preserved, IDNT, RENAAL, SCOPE, Val-HEFT, LIFE, VALUE
-
ACE阻害薬vs ARBの3試験***:18447例,急性心筋梗塞かつ/または心不全,平均年齢67歳,男性70%。
*** ELITE II,OPTIMAAL,VALIANT
|
|
結果 |
|
血圧(血圧低下5mmHg)依存性効果
- ACE阻害薬:脳卒中,CHD,心不全に対するリスク減少はそれぞれ19%(95%信頼区間2〜33),16%(7〜25),27%(13〜39)であった。
- ARB:リスク減少はそれぞれ26%(−12〜51),17%(−29〜47),12%(−41〜45)であったが,試験数がより少なかったことより,ARBにおける信頼区間の幅がACE阻害薬に比べて広くなった。
血圧非依存性効果
- ACE阻害薬:CHDに対する効果が認められたが(リスク減少9% [3〜14],p=0.004),脳卒中,心不全においては認められなかった。
- ARB:CHD,脳卒中,心不全のいずれにおいても効果は認められなかった。
- ACE阻害薬vs ARB:CHDに対する効果がACE阻害薬でARBに比して有意にみられた(p=0.002)。
ACE阻害薬とARBを直接比較した3試験においては,ACE阻害薬に比してARBで収縮期血圧が0.7mmHg低下した。脳卒中,CHD,心不全に対する効果はいずれにおいても両群で同程度であった。
感度分析では,今回の結果がACE阻害薬とARBの脳卒中,CHDの血圧依存性・非依存性効果が対照群によって影響されるという証拠は得られなかった。心不全については,Ca拮抗薬を対照とした臨床試験において血圧非依存性(血圧低下
0)効果を評価すると,ACE阻害薬によるリスク減少は10%(0〜19,p=0.06),ARBによるリスク減少は18%(9〜27,p=0.001)であった。Ca拮抗薬の心不全予防効果は明らかではないため,ACE阻害薬/ARBの血圧非依存性心不全抑制効果というよりも,Ca拮抗薬の心不全に対する血圧非依存性の有害な影響が示唆された。 |
|
|
|