「メタ」には高尚な,統合するという意味があるようです。メタ解析(Meta-Analysis)とはいわばAnalysis of Analysesであって,個々の臨床試験の結果をさらに分析する解析法です。独立な研究結果を統計的な手法で併合する解析法ともいえます。たとえば,微量アルブミン尿の糖尿病患者に対するACE阻害薬とプラセボの比較試験がいくつかあり,それぞれにACE阻害薬による腎障害リスク減少率が示されています。数値は試験によって異なっていますが,全体としてはACE阻害薬はよいのかどうかを知りたいわけです。メタ解析により臨床的意義が証明されれば,それは治療ガイドラインなどにも「お勧め」治療として載るようです。ただ,メタ解析は悪くいえば寄せ集めデータの解析であり,なんでもかんでも集めて解析すればよいという話でないという反論も聞かれます。それぞれの研究はそのデザインにおいてまったく同じということはなく,それらを併合することへの反発もあるようです。さらには,併合する対象は公表論文が多いが,公表論文はポジティブデータが多いので,メタ解析の結果もポジティブ方向へバイアスがかかるという懸念もあります。しかし,そうした違いを許容したうえで,しかもバイアスに気をつけながら,治療法などの総合評価を適宜行うことは意味のあることだと思います。
このNNTも治療効果を示すための指標の一つです。その他の効果指標としては,オッズ比やハザード比や絶対リスク差などがあります。NNTは電話通信のNTTとよく間違えられますが,こちらはNumber
Needed to Treatの略です。必要治療数などと訳したりします。たとえば,治療法Aの死亡率が2%で治療法Bの死亡率が3%のとき,絶対リスク差は1%になります。ということは,100人に1人だけ余計に治療法Aが患者を救うことを意味します。この100人という数字のことをNNTといいます。従来の治療法Bではなく治療法Aに変更することで,100人治療する中で99人までは大差ないが,その中の1人は治療法Aで助かるという効果のサイズです。従って,NNTが小さいほうが治療効果は大きいことになります。また,たとえNNTは500人などと大きくても,そういった患者数が非常に多いときには,その治療法で恩恵を受ける患者数も多くなります。たとえば,糖尿病であれば500万人に治療するとして,それにNNT=500人の治療を実施すると,1万人もの患者が恩恵を受ける計算になります。一方,5万人しか治療する患者がいないとすると,わずか100人しか救われません。そこで,治療法の単位価格と,救われないために必要となる高額医療費とのバランスが問題となるわけです。これは医療経済で重視されつつある主題の1つです。