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高血圧患者におけるβ遮断薬による心不全一次予防

高血圧患者において心不全の一次予防は血圧の低下に強く依存する。
β遮断薬は新規心不全発症抑制効果において他の降圧薬と違いはなかったが,高齢層で脳卒中のリスクが有意に増加したため,β遮断薬は心不全発症予防の第一選択薬とすべきでない。
Bangalore S, et al. Beta-blockers for primary prevention of heart failure in patients with hypertension insights from a meta-analysis. J Am Coll Cardiol. 2008; 52: 1062-72. PubMed

コメント

β遮断薬は,心不全患者の予後を改善する極めて有用な薬剤であり,心筋傷害の進行を抑制し,心筋リモデリングを修復することが予後の改善につながると考えられるが,β遮断薬の心不全発症抑制効果については,これまで臨床試験は行われていない。本メタ解析は,高血圧患者を対象とした12のRCT試験から,β遮断薬の心不全発症抑制効果を解析したものである。その結果,プラセボ群に比して,β遮断薬が心不全発症の抑制に寄与していることが明らかになったが,これはβ遮断薬の降圧作用によるものと考えられる。しかし,STOP試験(β遮断薬と利尿薬の併用)の成績を除くと,心不全の発症抑制効果が消失することから,β遮断薬の一次予防効果は極めて弱いことを示唆する。また,他の降圧薬と比較したとき心不全発症抑制効果に差を認めなかったことは,β遮断薬に降圧を超える効果がなかったことを意味する。一方,β遮断薬は,高齢者の脳卒中の発症をかえって上昇させることが示されたが,これは以前のメタ解析でも指摘されていたことであり,β遮断薬投与により,中心血圧が他剤より高くなることが原因ではないかと考えられている。いずれにしても,β遮断薬の心不全の一次予防効果は極めて弱いと結論できよう。また,高血圧患者が心不全に陥る場合,拡張性心不全が含まれていると思われるが,拡張性心不全にβ遮断薬が有効であるとの報告もない。したがって,心不全の一次予防に対するβ遮断薬の投与は奨められないと結論してよいだろう。(

目的 高血圧患者において,β遮断薬(BB)の心不全(HF)の一次予防効果を検討する。
一次エンドポイントはHF新規発症。
対象 112,177例。
高血圧患者において,BBを他の降圧薬(プラセボ,利尿薬,ACE阻害薬/ARBs,Ca拮抗薬)と比較した12*のランダム化比較試験(RCT)の対象:BB投与は55,060例(49%),プラセボ投与は4,452例(4%),その他の降圧薬投与は52,665例(47%);平均年齢52〜76歳,男性56%,平均追跡期間2.1〜9年。
* vs プラセボ:Coope et al,IPPPSHSTOP-Hypertension
vs 利尿薬:HAPPHY
vs ACE阻害薬/ARBs:CAPPPLIFESTOP-Hypertension-2,UKPDS
vs Ca拮抗薬:ASCOT-BPLACONVINCEINVESTNORDIL,STOP-Hypertension-2
(STOP-Hypertension-2はACE阻害薬,Ca拮抗薬の2剤)。
方法 1966年〜2008年5月に発表されたRCTをMEDLINE,EMBASE,CENTRALから“beta adrenergic blockers”,“adrenergic beta antagonist”,“beta-blockers”,“hypertension”で検索。
さらに電子検索により確認したレビュー論文の参照文献リスト,先に行われたメタ解析,それぞれの研究をチェックした。
RCTは1) 対象は成人高血圧男女,心血管危険因子,疾患の合併は問わないが,HF非発症であること,2) 第一選択単独投与薬としてBBをプラセボ,もしくはその他の降圧薬と評価していること,3) 追跡期間が1年以上のもの,4) HFを一次エンドポイント,二次エンドポイントとして前向き,後ろ向きに評価しているものとした。
結果 [降圧効果]
ベースライン時の平均血圧は172/96mmHg。
降圧はBB群のほうがプラセボ群よりも良好であった(BB群vs プラセボ群の降圧差;−12.6/−6.1mmHg)。BB群とその他の降圧薬群の降圧度は同程度であった(BB群 vs 利尿薬群;0.0/−1.0mmHg,BB群 vs ACE阻害薬/ARBs群;−0.3/−0.6mmHg,BB群 vs Ca拮抗薬群;−0.1/+0.7mmHg。
[一次エンドポイント]
平均追跡期間4.4年の新規発症HFは2437例(2.2%)で,BB群(1202例[2.2%])と他の降圧薬(プラセボ含む)群(1235例[2.2%])とに有意差はみられなかった。
プラセボを対照とした3試験において,新規HFの発症リスクはBB群(95/4416例)のほうがプラセボ群(126/4452例)より23%低下したP=0.055)。プラセボを含まないその他の降圧薬を対照とした9試験では,BB群(1107/52857例[2.1%])と他の降圧薬群(1109/52665例[2.1%])間に有意差はみられなかった(P=0.91)。薬剤分類別でみてもBB群との間に有意差はみられなかった:vs 利尿薬(1試験)(1.0% vs 0.7%,P=0.18);vs ACE阻害薬/ARBs(4試験)(3.3% vs 3.1%,P=0.36);vs Ca拮抗薬(5試験)(1.8% vs 1.9%,P=0.27)。
[BBの種類別による新規HF発症]
その他の降圧薬を対照とした9試験のうち5試験(68,260例[66%])がatenololを,4試験(35,049例[44%])が混合BBs (atenolol,metoprolol,pindolol)を使用していた。
atenolol群(新規HF発症1.8%)とBBs群(1.7%)間に有意差はみられなかった(P=0.72)。
[年齢別新規HF発症]
その他の降圧薬を対照とした9試験のうち6試験(87,210例[83%])が高齢(≧60歳),3試験(18,312例[17%])が若年齢(<60歳)であった。
高齢コホートと若年齢コホート間に有意差はみられなかった(高齢コホートの新規HF発症:BB群2.3% vs その他の降圧薬群2.3%,P=0.96,若年齢コホート:1.2% vs 1.2%,P=0.88)。
[年齢別その他の転帰]
高齢コホート:全死亡,心血管死,心筋梗塞はBB群とその他の降圧薬群間に有意差はみられなかったが,脳卒中はBB群(1,608/43,709例)のほうがその他の降圧薬群(1,346/43,501例)よりも19%リスクが増加した(相対リスク1.19;95%信頼区間1.11-1.28,P<0.0001)。
若年齢コホート:全死亡,心血管死,心筋梗塞はBB群とその他の降圧薬群間に有意差はみられなかったが,脳卒中はBB群(198/9,148例)のほうがその他の降圧群(255/9,164例)よりも22%リスクが減少した(0.78;0.65-0.94,P=0.009)。

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