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前高血圧,非高血圧患者における降圧治療の心血管疾患二次予防および死亡抑制効果
meta-analysis

心血管疾患既往の非高血圧患者において,降圧治療により脳卒中,うっ血性心不全,心血管疾患複合イベント,および全死亡リスクが低下。
Thompson AM, et al. Antihypertensive Treatment and Secondary Prevention of Cardiovascular Disease Events Among Persons Without Hypertension: A Meta-analysis. JAMA. 2011; 305: 913-22. PubMed

コメント

JSH2009においては,正常高値血圧と診断さる収縮期血圧130-139mmHgまたは拡張期血圧85-89mmHgにおいても,血圧以外の危険因子で層別化したリスクの程度により,降圧治療を行うべきであるとしている。一方,より低い血圧が低い正常血圧や至適血圧については,血圧が110-115/70-75mmHgを超えると心血管病のリスクが上昇することが観察研究により知られている。また,正常血圧レベルの対象では生涯のうちに高血圧へ移行する確率が高いことも明らかにされている。しかし,正常血圧や至適血圧を降圧治療の対象とするべきか明らかではない。
今回検討されたメタアナリシスにおいては,米国高血圧合同委員会(the Joint National Commitee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure)の前高血圧120-139/80-89mmHgにおいて,すでに心血管疾患の既往があれば,治療対象として考慮すべきであることを示唆している。メタアナリシスに採用された試験における薬剤は,β遮断薬,ACE阻害薬,ARBがほとんどであり,Ca拮抗薬が用いられたものは2試験が採用されているのみである。したがって,今回の結果を120-139/80-89mmHgに対する降圧治療を支持する結果であると理解するよりも,降圧薬のクラスによっては,正常血圧であっても二次予防効果がありうると考えるにとどめるべきであろう(中村・中野・永井)。

目的 高血圧患者を対象に実施されたこれまでの臨床試験では,降圧治療の心血管死抑制効果が報告されている。一方,前高血圧者または正常血圧者における降圧治療の心血管疾患(CVD)予防効果に関しては,相反する結果が報告されている。そこで,前高血圧者,非高血圧患者における降圧治療とCVD二次予防および全死亡との関連を検討するメタ解析を実施した。
エンドポイントは脳卒中,心筋梗塞(MI),うっ血性心不全(CHF),CVD(致死的・非致死的脳卒中+致死的・非致死的MI+CHF+CVD死の複合エンドポイント),CVD死,全死亡。
対象 64,162例(平均年齢55~68歳,男性76%)・25試験*。非高血圧(<140/90mmHg)患者において,降圧治療(β遮断薬,ACE阻害薬,Ca拮抗薬,ARB,利尿薬)のCVDイベント予防効果を検討したランダム化比較試験で,19歳以上を対象としたもの(平均試験期間1.5~63ヵ月)。対象者の選択基準は試験間で異なったが,CVDの既往**は全試験共通の選択基準。
*MIS, MPI, BHAT, ASPS, CONSENSUS II, SOLVD, USCHF, TRACE, AIRE, SMILE, MERIT-HF, CCS-1, HOPE, ABCD, CAMELOT, COPERNICUS, DIABHYCAR, PEACE, SAVE, PROGRESS, ADVANCE, PRoFESS, TRANSCEND, EUROPA, PATS。
**最近発症したMI, CHF, 冠動脈疾患, 脳卒中, および2型糖尿病。
方法 MEDLINE(1950年~2011年1月の第3週),EMBASE,Cochrane Collaboration Central Register of Controlled Clinical Trialsなどのオンラインデータベースより,以下のMeSH termおよびキーワードを用いて文献を検索:hypertension or blood pressure or normal blood pressure or prehypertension or pre-hypertension or pre-hypertensive or normotensive and antihypertensive agents, and cardiovascular disease。言語制限なし。選択された論文の参考文献もマニュアル調査した。
pooled推定効果およびpooled絶対リスク減少は,逆分散重み付きDerSimonian-Laird法を用いてランダム効果モデルにより求めた。異質性はQ検定を用いて評価し,I 2統計量にて示した。
結果 [エンドポイント]
統合解析の結果,降圧治療はCVDおよびCVD死/全死亡リスクを低下させた。各エンドポイントの結果は以下のとおり。
・致死的・非致死的脳卒中(7試験,降圧治療群10,868例 vs プラセボ群11,004例)
pooled相対リスク0.77;95%信頼区間0.61-0.98:絶対リスク減少-7.7/1,000人,95%信頼区間-15.2--0.3。試験間の異質性が認められた(異質性のP=0.02,I 2=61.9%)。
・致死的・非致死的MI(6試験,7,058例 vs 7,167例)
0.80;0.69-0.93:-13.3/1,000人,-28.4-1.7。
・致死的・非致死的CHF(8試験,5,908例 vs 5,934例)
0.71;0.65-0.77:-43.6/1,000人,-65.2--22.0。
・複合CVDイベント(13試験,19,994例 vs 20,401例)
0.85;0.80-0.90:-27.1,-40.3--13.9。試験間の異質性が認められた(P=0.10,I 2=35.4%)。
・CVD死(6試験,5,917例 vs 6,053例)
0.83;0.69-0.99:-15.4,-32.5-1.7。試験間の異質性が認められた(P=0.12,I 2=43.6%)。
・全死亡(15試験,15,461例 vs 15,474例)
0.87;0.80-0.95:-13.7,-24.6--2.8。試験間の異質性が認められた(P=0.03,I 2=46.1%)。

[サブグループ解析]
ベースライン時の既往(MI/冠動脈疾患,CHF,糖尿病,降圧薬の種類)によるサブグループ解析の結果,糖尿病既往患者を除き,いずれのエンドポイントについても全推定効果にほとんど差は認められなかった。


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