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正常血圧のアテローム性動脈硬化症患者におけるACE阻害薬,ARBの有効性
meta-analysis

治療前の収縮期血圧が正常(<130mmHg)でも,ACE阻害薬,ARBはアテローム性動脈硬化症患者,高リスク患者の心保護に有効。
McAlister FA; for the renin angiotension system modulator meta-analysis investigators. Angiotensin-converting enzyme inhibitors or angiotensin receptor blockers are beneficial in normotensive atherosclerotic patients: a collaborative meta-analysis of randomized trials. Eur Heart J. 2012; 33: 505-14. PubMed

コメント

すでに動脈硬化性疾患を有している高リスクの正常血圧症例において,ACE阻害薬またはARBが心血管合併症を予防できるか否かをプラセボ対照の13トライアルからメタ解析した報告である。
結果として両薬剤は心血管イベントを11%予防するということであるが,欠点は我々がもっとも知りたいことを分析していないことである。
すなわちACE阻害薬ではすでに降圧以外の心血管合併症予防効果を明らかにしたトライアルが多いのに対して,ARBのそれは明らかではない。
両薬剤をRA系抑制薬として一括りにして扱っており,それぞれの抑制効果を別々に解析していないところに本論文の不備がある。(桑島

目的 高リスク症例におけるACE阻害薬とARBの心保護作用は多くのガイドラインに記述されているが,これらの薬剤を正常血圧者(収縮期血圧[SBP]<130mmHg)に使用すべきかどうかについては見解がわかれている。そこで,正常血圧のアテローム性動脈硬化性血管疾患患者もしくはその高リスク者においてACE阻害薬とARBの心保護作用を検証するメタ解析を行った。
一次エンドポイントは,心血管死+非致死的心筋梗塞(MI)+非致死的脳卒中の複合エンドポイント。
方法 MEDLINE(1980-2011年3月),EMBASE(1980-2011年),CENTRAL-Cochrane Library(1980-2011年3月)を検索。レビュー論文と検索された論文の参考文献をハンドサーチ。論文著者に連絡し,ベースライン時のSBPで層別したアウトカムデータを入手した。
結果 [一次エンドポイント]
イベント発生例は全死亡9,043例,心血管死5,674例,MI 3,106例,脳卒中4,452例。
ACE阻害薬/ARBはプラセボにくらべ一次エンドポイント(心血管死+非致死的MI+非致死的脳卒中)を11%抑制した(オッズ比0.89;95%信頼区間0.85-0.93,I ²=25%)。

[サブグループ]
・ベースラインSBPによる層別
ACE阻害薬/ARBの一次エンドポイント抑制効果に,ベースラインSBPによる変動はみられなかった(SBP<130mmHg:0.84;0.77-0.90,I ²=0%,SBP 130-139mmHg:0.94;0.86-1.03,I ²=43%,SBP≧140mmHg:0.90;0.85-0.95,I ²=36%,P=0.13)。一次エンドポイントの各項目と全死亡についても結果は同様であった。
・ベースラインSBP<130mmHgの患者におけるサブグループ解析
ACE阻害薬/ARBの有効性は一貫して認められた(収縮期心不全を認めない患者:0.81;0.75-0.88,非糖尿病患者:0.79;0.70-0.89)。さらに,SBP<120mmHgと120-129mmHgの層別解析でも結果は変わらず,ACE阻害薬とARBの層別では両薬剤ともに同様の有効性を示した。

[出版バイアス]
検出されなかった(Eggerの線形回帰検定P=0.54,Beggの順位相関検定P=0.56)。

(収載年月2012.04)
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