レニン–アンジオテンシン–アルドステロン系(RAAS)阻害薬の死亡抑制効果
meta-analysis
高血圧患者において,RAAS阻害薬は4年間で全死亡リスクを対照治療にくらべ有意に抑制したが,これはACE阻害薬によるものであった。
van Vark LC et al: Angiotensin-converting enzyme inhibitors reduce mortality in hypertension: a meta-analysis of randomized clinical trials of renin-angiotensin-aldosterone system inhibitors involving 158 998 patients. Eur Heart J. 2012; 33: 2088-97. PubMed
目的 |
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レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬の死亡および心血管疾患抑制効果は,心不全や冠動脈疾患などの特定の患者集団では確立されているが,高血圧症適応例での全死亡への影響は十分に検討されていない。
全死亡および心血管死に対する効果を,RAAS阻害薬とACE阻害薬,ARBそれぞれでメタ解析した。 |
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対象 |
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20試験*・15万8,998例(RAAS阻害薬群71,401例,対照群87,597例)。ACE阻害薬またはARBと対照(プラセボ,実薬,標準治療)を比較したRCTで,各試験の定義により診断された高血圧患者が全体の2/3以上を占めるもの。
除外基準:事後解析,サブ解析,RAAS阻害薬による降圧以外の効果が期待されている疾患(心不全,急性冠症候群,急性脳卒中,血液透析,心房細動,心臓手術後など)により対象を選択した試験,参加者<100例,死亡<10例,全死亡の報告がないもの,RAAS阻害薬が両群で同時に使用されたもの。
* LIFE,ALLHAT,ANBP-2,SCOPE,VALUE,ASCOT-BPLA,JIKEI HEART,ADVANCE,HYVET,PRoFESS,TRANSCEND,CASE-J,HIJ-CREATE,KYOTO HEART,NAVIGATORなど。
■患者背景:参加者における高血圧患者の割合91%,平均年齢67歳,男性58%,平均収縮期血圧153mmHg。 |
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方法 |
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OVID MEDLINE,(ADIS) ISI Web of Scienceを検索(2000年1月1日-2011年3月1日に発表されたもの)。 |
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結果 |
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[RAAS阻害薬]
・全死亡
平均追跡期間4.3年で,RAAS阻害薬は全死亡を有意に抑制した(RAAS阻害薬群6,284例[20.9/1,000人・年] vs 対照群8,777例[23.3/1,000人・年]:ハザード比0.95;95%信頼区間0.91-1.00,P=0.032)。試験間の異質性は低く(I ²=15%),funnel plotにより出版バイアスも認められなかった。
・心血管死(心血管死の報告がなかった4試験を除いて解析)
心血管死のリスクはRAAS阻害薬により有意に低下した(2,570例[8.7/1,000人・年] vs 3,773例[10.1/1,000人・年]:0.93;0.88-0.99[P=0.018],I ²=23%,出版バイアスなし)。
[ACE阻害薬(7試験)vs ARB(13試験)]
・全死亡
ACE阻害薬は全死亡リスクを有意に抑制したが(20.4/1,000人・年 vs 24.2/1,000人・年:0.90;0.84-0.97[P=0.004],I ²=16%),ARBでは抑制は認められなかった(21.4/1,000人・年 vs 22.0/1,000人・年:0.99;0.94-1.04[P=0.683],I ²=0%)。両薬剤間の効果の差は統計学的に有意で(交互作用のP=0.036),RAAS阻害薬で認められた全死亡リスクの抑制効果はACE阻害薬によるものであった。
・心血管死
ACE阻害薬(0.88;0.77-1.00,P=0.051),ARB(0.96:0.90-1.01,P=0.143)ともに有意な心血管死リスクの抑制効果は認められず,両薬剤間にも有意差は認めなかった(P=0.227)。 |
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