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心血管リスクに基づく降圧治療:患者個人データのメタ解析(BPLTTC)
pooled analysis

降圧で達成される心血管リスクの相対低下は,ベースライン時の心血管リスクレベルを問わず,降圧治療による絶対リスク低下は高リスク症例ほど大きい。降圧治療の決定における心血管リスクの有用性が示された。
Blood pressure lowering treatment trialists' collaboration: Blood pressure-lowering treatment based on cardiovascular risk: a meta-analysis of individual patient data. Lancet. 2014; 384: 591-8. PubMed

コメント

高脂血症の薬物治療に関しては,性,年齢,血圧,糖尿病の有無など血管系リスクの層別化を考慮して,開始時期や治療目標を設定すべきことがガイドラインで示されている。これは,血管合併症のリスクの高い症例ほど薬物治療による絶対的リスク減少が大きいことが明らかになっているからである。同じような考えが高血圧治療においてもいえることを実証したのが,このメタ解析である。
BPLTTCは,高血圧・高脂血症治療に関して,世界で最も信頼性の高いメタ解析を発表しているグループである。メタ解析で採用された臨床試験は,いずれも試験開始前に一次エンドポイント,二次エンドポイント,試験方法,症例数,解析方法など詳細に登録を行ったもののみを対象としており,そのエビデンスレベルは非常に高い。
今回の報告は,高血圧治療効果についても,心血管合併症予防効果を絶対的リスク減少でみた場合,リスク因子を多く有している症例ほど有効性が大きいことを示している。
治療による有用性は相対的リスク減少で表される場合があるが,これはしばしば効果を誇大に表現することになる。たとえば,リスクの少ない症例100例を対象とした場合,治療群の発症は1例,プラセボ群では2例とすると相対的リスク減少は50%(なんと半減!)になるが,絶対的リスク減少は100人中1例に過ぎない。NNT 100,つまり100人治療してやっと1例の発症を予防できることになる。治療効果は絶対的リスク減少,あるいはNNT(Number Needed to Treat)で表すのが本当である。
本研究は11の臨床研究に参加した約5万2千例の対象症例を,プラセボ群のデータから予測された数式を用いて,11%未満の低リスク群,11~15%の軽度リスク群,15~21%の中等度リスク群,21%以上の高リスク群の4群に層別した。高リスク群は当然,喫煙率,心血管疾患既往,糖尿病,収縮期血圧のいずれもが他の群より高い。その結果,5年間の心血管合併症発症は,相対的リスク減少でみた場合には4群間で差はなく,治療の有効性はどの群でも同じようにみえる。しかし,絶対的リスク減少でみると,高リスク群が最も高血圧治療薬による効果が大きく,ついで中等度,軽度,低リスクの順になっている。
この結果は,高血圧治療の開始基準あるいは降圧目標値の設定においても,血圧以外のリスク因子にも配慮した“トータルバスキュラーマネージメント(total vascular management)”の考え方が重要であることを示している。当然ながら,高齢者はさまざまなリスク因子を併せもつ症例が多いことから,高リスク症例が多い。したがって,高齢者ほど厳格な高血圧治療が必要であることを意味しているのである。ただし一方において,高齢者ほど悪性腫瘍,感染症など他の疾患に罹患しやすく,それが生命予後に大きく影響することや,有害事象も発現しやすいことを考慮した個別的治療方針が求められるのである。(桑島

目的 脂質低下治療ではベースライン時の心血管疾患(CVD)リスクに基づいた治療の選択が推奨されているが,降圧治療は主に血圧値に基づいている。
降圧薬のランダム化比較試験(RCT)の個別患者データを用いて,降圧治療の有効性はベースライン時のCVDリスクに比例するかを検討し,絶対CVDリスクを降圧治療の選択に用いることができるかを検証する。
一次エンドポイントは,主要CVD(脳卒中[非致死的脳卒中・脳血管疾患死],冠動脈疾患[CAD;非致死的心筋梗塞・突然死を含むCAD死],心不全[死亡または入院],CVD)。
対象 11試験・51,917例。降圧薬(ACE阻害薬・Ca拮抗薬・利尿薬ベース) vs プラセボ,積極的降圧治療 vs 標準的降圧治療のRCTで,各群の追跡規模が1,000人・年以上,1995年7月以降に主な結果が発表されたもの。
■患者背景:平均年齢(<11%リスク群59.4歳, 11~15%リスク群67.8歳, 15~21%リスク群72.0歳, >21%リスク群75.1歳), 女性(55.4%, 40.5%, 32.3%, 21.9%), 喫煙(10.4%, 18.1%, 18.8%, 24.5%), CVD既往(11.3%, 23.2%, 40.7%, 70.2%), 降圧薬投与歴(45.4%, 59.0%, 68.5%, 77.6%), 糖尿病(29.5%, 44.7%, 46.9%, 59.1%), BMI(28.3, 27.6, 27.0, 26.8kg/m²), 総コレステロール(220, 212, 209, 201mg/dL), HDL-C(56, 52, 51, 49mg/dL), 血圧(155/94, 159/90, 162/89, 165/88mmHg), ベースライン時の推定5年CVDリスク(6.0%, 12.1%, 17.7%, 26.8%), プラセボ群における実際の5年CVDリスク(6.5%, 13.2%, 20.6%, 24.8%)。追跡期間中央値4.0年。
方法 プラセボ群のデータを用いてリスク推定式を作成。使用した変数は年齢,性別,BMI,血圧,他の降圧薬,現喫煙,糖尿病,CVD既往。脂質値は,データのない試験が多かったため含めなかった。
推定式によりベースライン時の5年主要CVDリスクを算出し,4群に分類(<11%リスク群,11~15%リスク群,15~21%リスク群,>21%リスク群)。
結果 [一次エンドポイント]
心血管イベント発症は4,167例(8%)。ベースラインリスク別では,<11%リスク群(1,042/25,480例)4.1%,11-15%リスク群(1,042/12,544例)8.3%,15-21%リスク群(1,042/8,287例)12.6%,>21%リスク群(1,041/5,606例)18.6%。
降圧治療によるCVDリスクの相対低下率は,それぞれ18%(リスク比0.82;95%信頼区間[CI]0.73-0.93),15%(0.85;0.75-0.96),13%(0.87;0.78-0.98),15%(0.85;0.76-0.95)で,4群間に差は認められなかった(傾向のP=0.30)。
しかし絶対リスク低下は,件/1,000人・5年治療でみると,各々14件(95%CI 8-21),20件(8-31),24件(8-40),38件(16-61)で,ベースラインリスクが高い症例ほど大きかった(傾向のP=0.04)。
心血管イベント1件を予防するためのNNTは,それぞれ71,51,41,26。

[二次エンドポイント:脳卒中,CAD,心不全,CVD死,全死亡]
脳卒中,CAD,心不全,CVD死についても,有意ではなかったものの,概ね同様の傾向が認められた。
全死亡については,ベースラインリスクが高い症例における絶対リスクの低下は認められなかった。

[降圧度との関係]
降圧治療群と対照群の達成血圧差は,それぞれ4.6/3.0,6.0/3.2,7.1/3.2,5.9/3.0mmHg。
相対リスク低下は,収縮期血圧(SBP)の5mmHg低下または5%低下で標準化して解析した結果もほぼ同様であった。
ベースラインリスクが高く,血圧の低下が大きいほど,治療により回避できるイベント数は増加した(<11%リスク例のSBP 4mmHg低下で5件,>21%リスク例のSBP 16mmHg低下で69件)。

[その他]
ベースライン血圧≧140/90mmHgのサブグループ,降圧薬群 vs プラセボ群のRCTのみの解析結果も同様であった。
★考察★4群にわけた心血管リスクごとに降圧治療の有用性をみると,相対的有用性は4群ほぼ同じであったが,絶対的リスク減少はリスクが大きい群ほど大きかった。この結果は,降圧治療方針決定もベースラインのリスクに応じて行うべきことを示唆する。

(収載年月2014.10)
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