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5つのコホート研究参加者にみる性別,年齢別の診察室・家庭血圧閾値
pooled analysis

降圧薬を服用していない一般住民において,CVDリスクに基づいて算出した血圧閾値に性差や年齢差は認められなかった(IDHOCO)。
Nomura K, et al.; International Database of Home Blood Pressure in Relation to Cardiovascular Outcome (IDHOCO) Investigators. Thresholds for conventional and home blood pressure by sex and age in 5018 participants from 5 populations. Hypertension. 2014; 64: 695-701. PubMed

コメント

心血管イベント発症と血圧閾値に関しての多くの研究があるが,近年わが国で一般的になってきた家庭血圧に関しての疫学追跡研究に関しては非常に少なく,東北大学グループの大迫研究やHOMED-BP研究は貴重なデータである。
IDHOCOはこのわが国の研究を含めた世界的な家庭血圧に関する追跡研究によって,血圧レベルと心血管イベント発症の面からその閾値を性別年齢別に検討した論文として意義があろう。(桑島

目的 一部の高血圧ガイドラインでは年齢や性別を考慮せずに血圧閾値が推奨されていたが,有害心血管イベント(CVD)と収縮期血圧の関連は女性のほうが強いとするメタ解析結果が2011年に発表された。またJNC 8で高齢者高血圧の降圧目標が緩和され,欧州のガイドラインでも80歳以上の降圧目標値が引き上げられたことから,血圧閾値に年齢を考慮すべきかどうかの議論が再燃した。
CVDリスクに基づく血圧閾値の設定に性別,年齢を考慮すべきかを,家庭血圧とCVDに関する国際共同研究International Database of Home Blood Pressure in Relation to Cardiovascular Outcome(IDHOCO)のデータを用いて検証した。
エンドポイントは,複合CVD(心血管死,脳血管・心エンドポイント)。
対象 5研究・5,018人(うち2,010人は大迫研究参加者)。IDHOCO に登録されている7研究・8,912人から死因不明,一般住民でないもの,降圧薬服用例などを除外した5コホート研究の参加者。
■参加者背景:平均年齢57.1歳,日本人49.5%,高血圧32.4%。
追跡期間8.3年(中央値)。
・性別解析(女性2,843人,男性2,175人):診察室血圧(129.0/76.0,133.3/80.4mmHg),家庭血圧(121.4/72.9,127.2/77.5mmHg)。
・年齢別解析(<60歳2,896人,≧60歳2,122人):診察室血圧(125.7/77.7,138.0/78.2mmHg),家庭血圧(118.4/74.1,131.5/76.1mmHg)。
方法 診察室血圧は2回測定の平均値,家庭血圧は全測定値の平均値を解析に用いた。
多変量Cox比例ハザード分析により,診察室血圧の各カットオフ値(収縮期血圧[SBP]120,130,140,160mmHg,拡張期血圧[DBP]80,85,90,100mmHg)における10年CVDリスクを推定し,同等のリスクをもたらす家庭血圧値を算出。同様に,家庭血圧のカットオフ値(SBP 125,130,135mmHg,DBP 80,85mmHg)からの解析も行い,結果の一貫性を確認した。解析は男女別,年齢別(≧60歳,<60歳)に行った。
結果 [致死的・非致死的CVD]
46,651人・年追跡で,死亡は522例(11.2/1,000人・年),うちCVD死は158例(3.4/1,000人・年)。
致死的・非致死的CVDは414例(8.9/1,000人・年)で,心イベント194例(4.2/1,000人・年),脳卒中225例(4.8/1,000人・年)。

[診察室血圧からの検証]
・性別解析
診察室血圧の全カットオフ値において,算出された家庭血圧値に男女間差は認められなかった(P≧0.24;例えば,診察室SBP 160mmHgでの推定10年CVDリスクは女性5.1%,男性13.6%,これに相当する家庭SBPは女性142.2mmHg,男性146.8mmHg;群間差-4.6,P=0.27)。
家庭血圧の男女間差の幅は,SBPが-4.6-3.1mmHg,DBPが-4.3--0.2mmHg。
・年齢別解析
診察室SBP 140mmHg(CVDリスク:<60歳3.0%,≧60歳16.3%;家庭SBP:128.4mmHg,132.7mmHg;群間差-4.3,P=0.03)と,診察室DBP 80 mmHg(2.5%,16.6%;75.8mmHg,77.7mmHg;-1.9,P=0.04)で有意差を認めたが,その他には差はなかった(P≧0.12)。
<60歳と≧60歳の家庭血圧差は,SBPが-1.90--6.7mmHg,DBPが-1.9-0.0mmHg。

[家庭血圧からの検証]
算出された診察室血圧値に有意な男女差(P≧0.33),年齢差(P≧0.08)は認められなかった。
CVDに基づく感受性解析(P≧0.19,P≧0.052)でも違いはみられなかった。

(収載年月2015.04)
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