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血圧変動と心血管疾患
meta-analysis

長期のSBP変動は平均血圧とは独立して,心血管イベント,死亡と関連した。中期・短期変動についても,データは限られていたが同様の関係が示された。
Stevens SL,et al: Blood pressure variability and cardiovascular disease: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2016; 354: i4098. PubMed

コメント

本論文は,24時間血圧で評価する短期変動,家庭血圧で評価する中期変動,診察室血圧(受診毎の血圧)で評価する長期変動についての研究のメタ解析である。季節変動,昼夜変動などの研究はメタ解析から除外しており,24時間血圧変動も昼間血圧の変動だけに絞っているのが特徴である。血圧変動は,血圧値の標準偏差を血圧平均値で調整することで血圧絶対値による変動への影響を除外している。
結果としては予想通り,収縮期血圧の長期変動,中期変動,短期変動のそれぞれの増大はいずれも全死亡,心血管死,脳卒中と有意に関連していることが示された。変動にもっとも影響する重大な要因は血管の硬さ,つまり動脈硬化である。高齢者や血管疾患既往例では動脈硬化が進行しているために,血圧変動が大きくなる。したがって,血圧変動が大きいことが死亡のリスクであることは当然予想された結果である。
本論文のlimitationは対象年齢が48.5歳から77歳と幅広いことと,対象例のバックグランドにバラツキがあることである。つまり脳卒中などの血管疾患既往例と既往のない例が混在していることである。(桑島

目的 血圧変動は心血管疾患(CVD)の危険因子と考えられており,長期(受診毎)血圧変動は高リスク患者の脳卒中,冠イベントの予測因子であることが示されている(Lancet. 2010; 375: 895-905. PubMed)。しかし従来の研究では,平均血圧で調整されていない,不適切な平均血圧で調整されている,追跡期間中の変動がベースライン時の危険因子として解析されておりinformative censoringバイアスやimmortal timeバイアスを生じうる,測定法が一貫していない,薬物治療が考慮されていないなどの統計学的・方法論的問題があった。
長期・中期・短期の血圧変動とCVDおよび死亡の関係を検証するため,これらの関係を平均血圧値とは独立して定量化された研究のみを用いてメタ解析を行った。
対象 457-12万2,636例・41論文(19コホート研究,17臨床試験コホート;46解析)。血圧変動と心血管(CV)転帰(全死亡,CVイベント[脳卒中,心筋梗塞,冠動脈疾患,心不全],CV死[突然死を含む])の関係を評価した臨床試験・前向きコホート研究で,追跡期間>2,500人・年のもの。血圧の長期変動は診察室血圧(受診回数≧5回の受診毎変動),中期変動は家庭血圧(≧3日間,≧12の測定値の日間変動),短期変動は24時間自由行動下血圧(≧14の日中の測定値の24時間変動)で評価。糖尿病など特定の患者集団を対象とした研究も含めた。
除外基準:代替指標(内膜中膜複合体厚など)のみを評価したもの,夜間血圧低下・日中と夜間の血圧変動に関するもの,血液透析患者。
■研究背景:2,514-49万544人・年追跡。
方法 Medline, Embase, Cinahl, Web of Scienceを検索(2016年2月15日まで)。
46の解析のバイアスリスクをQUIPSツールで評価。主解析では,バイアスリスクが高い解析を除外し,平均血圧値による調整が適切に行われており(日中の収縮期血圧[SBP]の変動を評価した場合,日中の平均血圧値で調整されているなど),血圧測定期間後に転帰を評価したもの,降圧薬の服薬アドヒアランスが≧80%・血圧測定期間中の薬剤の変更なし・治療変更時点で患者を打ち切りとしたもののみを使用した。その後,全研究を含めて二次解析を実施。
各研究のハザード比(HR)を標準化し,統合HRを算出。複数の変動指標が報告されている場合は,標準偏差,変動係数,平均とは独立した変動,真の変動の平均値,標準化残差などの順にHRを採用した。
結果 [長期血圧変動:27研究・24論文]
SBPの長期変動増大は全死亡(4研究を解析:ハザード比1.15[95%信頼区間1.09-1.22],I ²=70.7%,P=0.02),CV死(3研究:1.18[1.09-1.28]),CVイベント(1試験:1.18[1.07-1.30]),脳卒中(6研究:1.15[1.04-1.27],I ²=82.1%,P<0.001)と有意に関連した。
全研究を含めた二次解析の結果も同様であった。

[中期血圧変動:2研究・4論文]
朝,晩,あるいは朝晩に測定したSBPの変動増大は全死亡の有意な予測因子であった(1.15[1.06-1.26])。

[短期変動:11研究・15論文]
日中のSBPの変動増大と全死亡(2研究:1.10[1.04-1.16]),CV死(3研究:1.12[1.03-1.21]),脳卒中(1.11[1.01-1.21])は有意に関連した。
CVD,冠動脈疾患はSBPの変動と関連しなかった。

[出版バイアス]
Egger検定により,長期・中期・短期の血圧変動と転帰の関係に出版バイスはなかった。

(収載年月2016.12)
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