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降圧と心血管イベント予防(BPLTTC)
meta-analysis

心血管疾患の診断を受けているかどうかにかかわらず,また正常~正常高値血圧であっても,収縮期血圧(SBP)の5mmHgの低下はMACEを10%減少させた。本結果より,血圧値が現在は治療を考慮するレベルでなくても,薬物による一定の降圧はMACE一次予防,二次予防ともに有効であることが示唆された。
Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration. Pharmacological blood pressure lowering for primary and secondary prevention of cardiovascular disease across different levels of blood pressure: an individual participant-level data meta-analysis. Lancet. 2021; 397: 1625-1636. PubMed

コメント

メタ解析はエビデンスレベルのもっとも高いランクに位置づけられるとされるが,採用した臨床研究の選択バイアスや対象症例の質の不均一などによって,必ずしも質が高いとはいえないメタ解析も多い。
Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)は,高血圧治療薬の心血管合併症予防に関する大規模臨床試験をメタ解析するため,Oxford大学に拠点を置く委員会によって設立された組織である。製薬企業の経済的支援をうけていないことや,試験責任者から生データを取り寄せていることなどで,中立的な立場で解析していることに特徴がある。
本論文は,降圧薬により血圧をどこまで下げると心血管イベントを防げるか,あるいはいわゆる降圧と心血管イベントの間にJカーブは存在するのか検証した,BPLTTCの集大成ともいえる論文である。
対象は降圧薬治療と心血管合併症との関連を検討した48のRCT,総数約34万人の症例である。治療前血圧は,心血管既往を有する例で146/84mmHg,心血管既往のない例で157/89mmHgであり,わが国の高血圧ガイドライン2019では1度高血圧のレベルである。注目すべきは,治療前にSBPがすでに130mmHg未満の症例が,心血管既往例では19.8%,既往なしの例では8%含まれていたことである。
このレベルのSBPでも,5mmHg下げるだけで心血管イベントの有意な抑制ができ,かつJカーブ曲線は認められなかった。一次予防,二次予防にかかわらず,the lower, the betterが確認されたことの意義は大きい。
しかし,本メタ解析では降圧による有害事象の解析は行っていない。厳格な降圧が腎障害や立ちくらみなどの有害事象を生じることはSPRINT試験でも明らかになっている。臨床現場における降圧にあたっては,厳格降圧による心血管合併症予防というメリットと,有害事象の発生というデメリットを考慮しながら,個々の症例で治療を行うことになる。 (桑島

目的 正常~正常高値血圧者に対する薬物療法による降圧の有効性は,心血管疾患既往の有無を問わず,いまだ不明である。本解析では,RCTの個々の患者データを用い,主要心血管イベント(MACE;致死的/非致死的脳卒中,致死的/非致死的心筋梗塞または虚血性心疾患,死亡に至らしめるまたは入院を要する心不全の複合)に対する薬物による降圧の有効性について,ベースライン時のSBPにもとづき検討した。
主要評価項目:MACE。
対象 34万4,716例・48試験。
BPLTTCの登録基準は,対象患者を降圧薬群とプラセボ群/他のクラスの降圧薬群にランダム化,または集中的治療の強弱により2群にランダム化し,各群1,000患者・年以上追跡した試験。
除外基準:心不全患者を対象とした試験,急性心筋梗塞/他の急性疾患患者に対する短期介入の試験。ベースライン時に心不全の診断をうけていた患者を含む試験については,心不全患者は本解析から除外した。
■ベースライン時の心血管疾患の有無別の患者背景 平均年齢は心血管疾患がなかった患者(18万6,988例)65.3歳,有していた患者(15万7,728例)65.7歳。それぞれの女性48.7%,32.9%。血圧157/89mmHg,146/84mmHg。SBP<130mmHgの割合8.0%,19.8%。
方法 BPLTTCが患者レベルデータにアクセスできる51試験のうち,除外基準に該当した3試験(4,967例),心不全患者4,138例を除外した。 血圧値別のリスク低下を評価するため,ベースライン時のSBP(mmHg)により<120,120~129,130~139,140~149,150~159,160~169,≧170の7つのグループに分けて解析を行った。 追跡期間中央値4.15年。
結果

[MACE発症率(心血管疾患の有無別)]
対象患者のうち42,324例(12.3%)に1回以上のMACEを認めた。 ベースライン時に心血管疾患がなかった患者では対照群31.9件/1000患者・年,介入群25.9件/1000患者・年,ベースライン時に心血管疾患を有していた患者ではそれぞれ39.7件/1000患者・年,36.0件/1000患者・年に発症した。 SBPの5mmHg低下はMACE発症率低下に関連していた。 心血管疾患がなかった患者:HR 0.91, 95%CI 0.89-0.94。 心血管疾患を有していた患者:HR 0.89, 0.86-0.92。 全例:HR 0.90, 0.88-0.92。

[MACE発症率(ベースライン時のSBP値別)]
<120:(心血管疾患なし)HR 0.83, 0.71-0.97,(心血管疾患あり)HR 0.77, 95%CI 0.68-0.87。 120~129:HR 0.94, 0.84-1.06,HR 0.89, 0.81-0.98。 130~139:HR 0.89, 0.81-0.97,HR 0.99, 0.92-1.07。 140~149:HR 0.95, 0.88-1.03,HR 0.89, 0.83-0.96。 150~159:HR 0.87, 0.80-0.95,HR 0.90, 0.83-0.97。 160~169:HR 0.89, 0.83-0.95,HR 0.83, 0.76-0.91。 ≧170:HR 0.90, 0.85-0.95,HR 0.90, 0.83-0.97。

[不均一性]
MACEに対する有効性について,ベースライン時の心血管疾患の有無,SBP値の層別による不均一性はみられなかった。

[データ取得バイアス]
主要評価項目について,funnel plot,Egger検定ともデータ取得バイアスのエビデンスは認めなかった。

(収載年月2021.06)
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