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糖尿病患者におけるスタチン治療の心血管イベントに対する有効性(CTT)
Cholesterol Treatment Trialists' Collaboration: CTT Collaboration
meta-analysis

血管イベント高リスクの糖尿病患者にはスタチン系薬剤による治療を考慮すべきである。
Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaborators: Efficacy of cholesterol-lowering therapy in 18,686 people with diabetes in 14 randomised trials of statins: a meta-analysis. Lancet. 2008; 371: 117-25.PubMed

コメント

スタチンの動脈硬化性疾患予防効果,総死亡予防効果については,この14のメタ解析の結果が明確に示した。この試験により,ほぼスタチンの治療意義を確立したと同時に,それまであった癌に対する懸念や脳出血に対する懸念も払拭した。このような大規模な調査になると,いわゆる層別解析の意義が出てくる。つまり,層別してもそれなりの例数が確保できるため,統計学的検討に耐えうるということになるのである。本試験でも約18,000例の糖尿病患者が対象であり,糖尿病でない約7万例との比較になっている。その結果,糖尿病におけるスタチンによるLDL-C低下効果は,糖尿病でないものと比較すると優るものではないが,ほぼ同等であることが示された。しかも,冠動脈疾患の既往,性別,血圧,喫煙,腎機能,BMIなどを考慮しても,同様にスタチンの有効性が示された。さらに,2型糖尿病ではLDL-Cの低下効果は,ほぼthe lower, the better に近いということで,欧米のガイドラインもそのように変更することを勧めるというコメントは興味深い。今後,わが国も含めて真摯に考える必要があろう(寺本)。

目的 1型・2型糖尿病患者におけるスタチン系薬剤による治療の心血管イベント(冠動脈イベント,脳卒中,血行再建術)に対する有効性を検討する。さらに,閉塞性動脈硬化性疾患の既往のない患者での有効性も検討する。
対象 糖尿病18,686例(2型糖尿病17,220例,1型糖尿病1,466例),非糖尿病71,370例:スタチン系薬剤の有効性を検討した14*のランダム化試験(RCT)。

* 4SWOSCOPSCAREPost-CABGAFCAPS/TexCAPSLIPID,GISSI-P,LIPSHPSPROSPERALLHAT-LLTASCOT-LLA,ALERT,CARDS

患者背景 平均年齢(2型糖尿病63.8歳,1型糖尿病55.1歳,非糖尿病61.8歳),BMI(29.6kg/m2,26.2kg/m2,27.1 kg/m2),血圧(148.6/83.7mmHg,140.9/78.9 mmHg,141.6/83.0 mmHg),高血圧治療例(69%,48%,52%),総コレステロール(216.6mg/dL,220.4mg/dL,228.2mg/dL),LDL-C(131.5mg/dL,131.5mg/dL,150.8mg/dL),HDL-C(46.4mg/dL,50.3mg/dL,42.5mg/dL),トリグリセライド(185.8mg/dL,141.6mg/dL,159.3mg/dL),血管疾患(36%,56%,60%);心筋梗塞,冠動脈疾患既往(26%,48%,52%)。
方法 RCTは,1) 主たる介入が脂質コントロールであること,2) 治療群間で危険因子の変化の違いがないこと,3) 登録症例が1000例以上で2年以上追跡しているものとした。加重推定は追跡初年度末のLDL-C 1mmol/L(38.67mg/dL)低下ごとの転帰。
結果 平均追跡期間4.3年で主要血管イベントが糖尿病例で3,247例発症。
LDL-C 38.67mg/dL低下により全死亡率が9%低下(率比:rate ratio; RR 0.91: 99%信頼区間0.82〜1.01,P=0.02)で,非糖尿病患者の13%低下(0.87:0.82〜0.92,P<0.0001)と差はなかった。
特に糖尿病患者では血管死の有意な低下(0.87:0.76〜1.00,P=0.008)が影響しているが,非血管死(0.97:0.82〜1.16,P=0.7)は影響していない。

糖尿病患者ではLDL-Cが38.67mg/dL低下するごとの主要血管イベント低下は21%(0.79:0.72〜0.86,P<0.0001)で非糖尿病でも同等であった(0.79:0.76〜0.82,P<0.0001)。
糖尿病患者において,心筋梗塞,冠動脈死は22%(0.78:0.69〜0.87,P<0.0001),血管再建術は25%(0.75:0.64〜0.88,P<0.0001),脳卒中は21%(0.79:0.67〜0.93,P=0.0002)それぞれ低下した。非糖尿病例でもほぼ同様であった。
糖尿病患者でのスタチン治療による効果において,血管疾患の既往,ベースライン時の背景による違いはみられなかった。
5年後,1000例の糖尿病患者にスタチン治療をすることにより主要血管イベントを42例抑制できる。
考察 心血管イベント高リスクの糖尿病患者の場合,糖尿病の型を問わずスタチン系薬剤による治療を行うべきである。

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