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non-HDL-Cと冠動脈疾患との関連

non-HDL-Cの低下率と心血管リスク低下度は相関する。
non-HDL-Cは冠動脈疾患(CAD)予防のための重要な治療ターゲットである。
Robinson JG et al: Meta-analysis of the relationship between non-high-density lipoprotein cholesterol reduction and coronary heart disease risk. J Am Coll Cardiol. 2009; 53: 316-22. PubMed

コメント

LDL-Cを低下させることが冠動脈疾患予防で最も重要であることは,ほぼ確立されているが,トリグリセライド(TG)が高い場合には,TGを低下させるべきか,LDL-Cのみを低下させるべきか議論のあるところである。これに対し,NCEP-ATP IIIやわが国の新ガイドラインもLDL-Cについでnon-HDL-Cを評価することを求めているが,大きな意味での臨床的エビデンスがないのも事実である。本論文は,脂質異常症治療薬を用いた試験のメタ解析であり,non-HDL-Cを用いることの正当性を支持するものである。特に,フィブラートとニコチン酸がスタチンと同様の方向性を示したということは重要な情報と考えられる。しかし,このような多くの薬剤を用いた試験のメタ解析の評価は十分注意して扱うことが求められよう。本来異なる薬効を持った薬剤をひとくくりで解析することは問題のあることと思われる。本論文は,スタチンと比較して,それぞれの薬剤の意義を検討しているという点で評価される。(寺本

目的 全米コレステロール教育プログラム(NCEP)ATP IIIは,atherogenic リポ蛋白-B*を反映するnon-HDL-C(総コレステロール値[TC]からHDL-C値を減じたもの)を高トリグリセライド血症(200〜500mg/dL)患者治療のLDL-Cに次ぐ治療指標としている。
疫学研究からは心血管リスクの予測因子としてnon-HDL-CはLDL-Cを凌ぐという所見が示され,同様の結果を発表したスタチン系薬剤のランダム化比較試験(RCT)もある。スタチン治療によりnon-HDL-Cが低下したという報告もある。また,スタチン以外の脂質低下薬の各脂質値への影響はさまざまである。
そこで,non-HDL-Cの低下とCADリスク低下の関連を探索し,非スタチン系治療薬がスタチン治療と同程度の有効性があるのかを評価するために,本解析を行った。
 * LDL-C,超低比重リポ蛋白(very low-density lipoprotein cholesterol:VLDL-C),中間比重リポ蛋白(intermediate-density lipoprotein:IDL),カイロミクロンレムナント,Lp(a)。
対象 スタチン系薬剤を検討した試験(以下スタチン試験)10万827例,フィブラート系薬剤試験(以下フィブラート試験)21,647例,ニコチン酸(niacin)試験(4,445例),胆汁酸吸着薬(レジン)1試験(3,806例),食事療法1試験(458例),回腸バイパス術1試験(838例)。
試験登録基準:1) 食事療法,スタチン系薬剤,niacin,フィブラート系薬剤,胆汁酸吸着薬,外科手術の有効性をその他の治療あるいはプラセボと比較したもの,2) 盲検化した(食事療法試験は除く)RCT,3) 総コレステロール,HDL-C,あるいはnon-HDL-Cを ベースライン時以降1回以上測定したもの,4) スタチン試験は,一次エンドポイントが臨床イベントで追跡期間が2年以上のもの,5) 対象が重篤な非心血管疾患または状態(腎機能障害,心不全,臓器移植など)ではないもの,6) CADイベントの評価は盲検化して行い,定義が一定ではない血行再建術,不安定狭心症は除外,7) 解析はCADイベントに限定。
■主な試験名
スタチン試験(14試験:プラセボ対照11試験): 4S, WOSCOPS, CARE, LIPID, AF/TexCAPS, HPS, PROSPER, ASCOT-LLA, CARDS, ASPEN, A to Z, IDEAL, TNT, SPARCL
フィブラート試験(7試験:すべてプラセボ対照): HHS, VA-HIT, FIELD, DAIS, LEADER, BIP, SENDCAP。
niacin(6試験:cholestipolと併用2試験,スタチンと併用3試験,単独投与1試験): CDP, FATS, CLASS II, HATSなど,その他(3試験): 回腸バイパス術 POSCHなど。
方法 MEDLINEで1966〜2008年5月8日発表の文献を検索。
メタ解析には変量効果モデル(random effect model)を用いベイズ法を使用した。異質性はコクランQ検定で検討した。
結果 [脂質値の変化]
スタチン試験(対照群との減少差): TC(13〜29%), HDL-C(上昇差 0〜13%), トリグリセライド(TG;10〜22%), LDL-C(20〜43%), non HDL-C(17〜39%)。
フィブラート試験(対照群との減少差): TC(4〜11%), HDL-C(上昇差 4〜14%), TG(23〜37%), LDL-C(0〜12%), non HDL-C(6〜16%)。
niacin試験(対照群との減少差): TC(10〜28%), HDL-C(上昇差 13〜38%), TG(18〜52%), LDL-C(1〜41%), non HDL-C(7〜39%)。
[CADとの関連]
・スタチン試験モデル
non-HDL-Cが1%低下することによる4.5年後のCADの推定相対リスクは0.99(95%信頼区間0.98〜1.00)と1%の低下。
・フィブラート試験モデル
スタチン試験との違いはなく(ベイズ因子k=0.49),異質性はみられなかった(Q=3.66,6 df;P=0.68)。
・niacin試験モデル
スタチン試験とはやや違いがあり(k=7.43),異質性がみられた(Q=11.8,5 df;P=0.038)。6.2年間の追跡でniacin単独投与試験(3908例)のみがnon-HDL-C低下(17%)とリスク低下(17%)に1:1の相関がみられたが,その他の小規模5試験(76例〜167例)にはそのような相関はみられなかった(スタチンとの併用3試験:1:2.6,1:9.6,1:0.6,cholestipolと併用1試験:1:2.9)。
・その他の試験
胆汁酸吸着薬試験,食事療法試験,回腸バイパス術試験はそれぞれ1試験のためベイズモデルによる評価はしなかったが,各治療の95%信頼区間はnon-HDL-C低下とリスク低下に1:1の相関がみられた。

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