高リスク患者でのスタチン治療の一次予防における死亡抑制効果
meta-analysis
高リスク患者の一次予防において,スタチン治療は全死亡を抑制しなかった。
Ray KK, et al. Statins and all-cause mortality in high-risk primary prevention: a meta-analysis of 11 randomized controlled trials involving 65,229 participants. Arch Intern Med. 2010; 170: 1024-31. PubMed
目的 |
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スタチン系薬剤が冠動脈疾患既往患者において全死亡リスクを低下させることが示されている。しかし,一次予防における死亡に対するスタチンのベネフィットが二次予防と同等であるかは明確ではない。
2008年にJUPITER試験(登録基準の一つが心血管疾患[CVD]非既往)からrosuvastatinによる全死亡リスク20%低下が発表されたが,偶然あるいは誇張された観察によるものと疑問視するむきもある。
また,これまで発表された一次予防のシステマティックレビューは,主にスタチン薬剤間の有効性の不均一を評価しているため,スタチン試験での統合したスタチンの有効性の報告はなく,またCVD既往例も組み込まれていたり,ランダム化が不完全だったものがあった。
そこで,中等度~高リスクのCVD既往のない患者において,スタチン治療が全死亡を抑制するかを検証するために本メタ解析を実施した。 |
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対象 |
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6万5,229例。11のプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT*)
* ベースライン時にCVDではなかった患者においてスタチン系薬剤の有効性を検討し,全死亡に関するデータのあるもの:WOSCOPS(5,981例),ALLHAT(8,880例),AFCAPS/TexCAPS(6,605例),MEGA(7,832例),ASCOT(8,715例),CARDS(2,838例),ASPEN(1,905例),JUPITER(1万7,802例),PROSPER(3,239例),HYRIM(568例),PREVEND IT(864例)。
■患者背景:平均年齢62歳(51~75歳),男性65%,糖尿病19%(0~100%),喫煙23%,収縮期血圧141mmHg。 |
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方法 |
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1970年1月~2009年5月に発表された文献をMEDLINE,Cochrane Collaborationで,statins,clinical trials,cardiovascular end pointsに関連するMeSH termsで検索した。 |
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結果 |
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・平均追跡期間3.7年で,LDL-Cはベースライン時平均138mg/dL→スタチン群94mg/dL,プラセボ群134mg/dL。
・24万4,000人・年の追跡で死亡は2,793例:スタチン群1,346/32,623例,プラセボ群1,447/32,606例。スタチン群の全死亡に対するリスク比(RR)は0.91(95%信頼区間0.83-1.01)。
スタチン群:2.4(MEGA試験)~27.2(PROSPER試験)/1000人・年(加重平均死亡率10.7/1000人・年),プラセボ群:3.6(MEGA)~26.0(PROSPER)/1000人・年(加重平均死亡率11.4/1000人・年)。
試験間に有意な異質性はみられなかった(I 2=23%;0~61%,P=0.23)。糖尿病患者のみを登録したCARDS,ASPEN試験を除外しても同様の結果であった(RR:0.92;0.84-1.02)。
・また,ベースライン時のLDL-Cと全死亡の相対低下とに有意な関連は認められなかった(P=0.97)。同様に,LDL-Cの低下と全死亡率の低下にも関連はみられなかった。
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