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高用量スタチンの中等量スタチンと比べた糖尿病発症リスク
collaborative meta-analysis

高用量スタチンは中等量スタチンに比べて糖尿病発症リスクを増大。
Preiss D, et al. Risk of incident diabetes with intensive-dose compared with moderate-dose statin therapy: a meta-analysis. JAMA. 2011; 305: 2556-64.PubMed

コメント

スタチンを投与すると心血管疾患イベントは抑制されるが糖尿病を発症させてしまうという悩み多き命題を実際の臨床現場でどう考えるべきか? 2010年のメタ解析(Lancet. 2010; 375: 735-42)ではスタチンの投与により9%の糖尿病発症率増加があることが報告されたため,本研究ではそこに用量依存性があるのか?心血管イベント抑制と並行して解析している。いずれの結果も有意で,高用量スタチンは中等量に比し,糖尿病発症で増加,心血管系イベントで減少となった。しかし,糖尿病発症は高用量を使用すると1年間に498人治療した場合,中等量に比べて1人増えるという割合に対し,心血管イベント抑制はその3倍以上の効果,すなわち1年間で155人治療した場合に1人減るということで,単純計算(医療費の増加などを考慮に入れないとして)しても,より高用量のスタチンで治療することにメリットがあるといえるのではないだろうか。なお,この試験でLDLコレステロール低下度は中等量に比べて高用量ではベースライン比約20%低下させている(弘世)。

目的 2010年に発表されたメタアナリシス(Lancet. 2010; 375: 735-42)で,スタチン治療は標準治療またはプラセボに比べて糖尿病発症リスクを増大させることが示された。また,大規模臨床試験で強化スタチン療法群における血糖コントロールの悪化が認められたほか,小規模試験では高用量のスタチンで治療した高コレステロール血症患者でインスリン抵抗性の増大,インスリン値およびHbA1cの上昇が認められており,これらの影響の用量依存性が示唆されている。LDL-Cの低下度と糖尿病発症の有意な関連性は示されていないが,ほとんどの試験は中等量のスタチンを使用しており,試験対象も異なるため,スタチンと糖尿病発症リスクの明確な関連性を示す大規模なエビデンスが待たれている。そこで,高用量スタチン療法,中等量スタチン療法と糖尿病新規発症リスクおよび心血管イベントリスクの関連性を評価するメタアナリシスを実施した。
対象 5試験*,32,752例。1,000例以上の成人非糖尿病患者を対象に,高用量と中等量のスタチンを比較した追跡期間≧1年のランダム化比較試験。
* TNT(atorvastain 80mg vs 10mg),IDEAL(atorvastain 80mg vs simvastatin 20/40mg),A to Z(simvastatin 40/80mg vs 20mg/プラセボ),PROVE IT-TIMI 22(atorvastain 80mg vs pravastatin 40mg),SEARCH(simvastatin 80mg vs 20mg)。
方法 MEDLINE,EMBASE,Cochrane Central Register of Controlled Trials(1996年1月1日~2011年3月31日)を検索。研究者から未発表データを取得。検索用語は,statin,HMG CoA reductase inhibitor,個々のスタチン名とintensive,aggressive。
糖尿病の発症は,試験期間中に糖尿病と診断,血糖低下薬の投与を開始,あるいは2回測定した空腹時血糖値≧126mg/dLの場合と定義した。心血管イベントについては,心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中+CABG+PCIの複合エンドポイントと複合エンドポイントを構成する個々のイベント,全死亡に関するデータを抽出。
結果
追跡期間(加重平均)4.9年で,糖尿病発症は2,749例(高用量スタチン群1,449例,中等量スタチン群1,300例),心血管イベント発生は6,684例(それぞれ3,134例,3,550例)。

[糖尿病発症リスク]
高用量スタチン群は中等量スタチン群に比べて有意に糖尿病発症リスクが高く(オッズ比1.12;95%信頼区間1.04~1.22),発症率は2.0例/1,000人・年多かった(平均18.9例 vs 16.9例/1,000人・年)。高用量スタチン群の有害作用必要数(NNH)は498/年ということになる。
試験間の異質性(I 2=0%,P=0.60),出版バイアス(P=0.54)はともに認められなかった。

[心血管イベント抑制]
高用量スタチン群は中等量スタチン群に比べて心血管イベント発生リスクが有意に低く(0.84;0.75~0.94),発生率は6.5例/1,000人・年少なかった(44.5例 vs 51.0例/1,000人・年)。高用量スタチン群における心血管イベント1例/年回避するための治療必要数は155/年。
試験間に有意な異質性が認められたが(I 2=74%,P=0.004),出版バイアスは認められなかった(P=0.70)。


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