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血管リスクの低い症例におけるスタチン治療によるLDL-C低下の効果
meta-analysis

推定5年主要血管イベントリスクが低い(<10%)患者では,LDL-C 38.7mg/dL低下あたりの主要血管イベントの絶対低下は5年間で約11/1,000人。
Mihaylova B, et al.; Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaborators. The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials. Lancet. 2012; 380: 581-90. PubMed

コメント

LDLコレステロール低下療法としてのスタチン治療の意義は,すでに2010年に発表されたCTTグループのメタ解析で示されているところであるが,いわゆる低リスク群での治療意義については十分に解明されていない。本メタ解析は27の試験(2010年のメタ解析では26試験であった)のうち,Framingham CHD risk scoreから計算された低リスク群(10年間のCHD発症率が10%未満)と,高リスク群(同20%以上)とでCAD発症抑制効果に差があるか検討したものである。結果的には,低リスク群でもスタチン治療で有意にCADの発症を抑制できることが確認された。また,その絶対リスクの低減化が,5年で1,000人の治療で11人が予防できることから医療経済的にも有効であるとしている。この結果から,現行のガイドラインでは低リスク群におけるスタチン治療は勧められていないが,今後,このような低リスク群でもスタチン治療を考慮すべきではないかとしている。もちろん,絶対リスクが極めて低いわが国で,そのまま受け入れることはできないのであるが,低リスク群としてわが国のMEGA studyが含まれていることは念頭に置く必要があろう。(寺本

目的 2010年にCholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaborationが発表したメタ解析では, 26のランダム化比較試験(RCT)のデータから,標準スタチン治療によるLDL-C 38.7mg/dL(1mmol/L)低下あたり主要血管イベント(非致死的心筋梗塞[MI],冠動脈疾患死,脳卒中,血行再建術)が約20%減少することが示された。しかし,血管イベントリスクが低い患者でのスタチンの正味の有効性は明らかでない。そこで,低リスク患者においてスタチンによるLDL-C低下の心血管イベント抑制効果を評価するメタ解析を実施した。
エンドポイントは,主要血管イベント,主要冠イベント(非致死的MI,冠動脈疾患死),脳卒中,血行再建術,癌,原因別死亡。
対象 27試験・17万4,149例(スタチン vs 対照:22試験*,13万4,537例;強化スタチン療法 vs スタチン通常療法:5試験**,39,612例)。
2009年末までに報告され,2011年5月までにデータが得られた試験のうち,少なくとも1つの介入の主効果がLDL-Cの低下で,介入に関する交絡因子がなく,対象者数1,000例以上,治療期間2年以上のもの。
* MEGA,LIPID,HPS,ALLHAT-LLT,ASCOT-LLA,JUPITER,CORONAなど。
** PROVE-IT,A to Z,TNT,IDEAL,SEARCH。
方法 Cox比例ハザードモデルによりベースライン時の5年主要血管イベントリスクを推定し,5群に層別(<5%,5%-<10%,10%-<20%,20%-<30%,≧30%)。
結果 追跡期間(中央値):22試験(4.8年),5試験(5.1年)。

[主要血管イベント]
LDL-Cの低下によりリスクは有意に低下(LDL-C 38.7mg/dL低下あたりのリスク低下率0.79;95%信頼区間[CI]0.77-0.81,P<0.0001)。これは年齢,性別,LDL-Cベースライン値,血管疾患既往,血管死/全死亡にかかわらず認められた。
主要血管イベントリスクの低下は,推定5年リスクが<10%と低い群(下位2群)でリスクの高い群(上位3群)と同等以上であった(<5%群:0.62;99% CI 0.47-0.81,5%-<10%群:0.69;0.60-0.79,10%-<20%群:0.79;0.74-0.85,20%-<30%群:0.81;0.77-0.86,≧30%群:0.79;0.74-0.84,傾向P=0.04)。

[主要冠イベント,血行再建術]
推定5年リスクが低い群では,主要冠イベント(<5%群:0.57;99% CI 0.36-0.89,P=0.0012,5-<10%群:0.61;0.50-0.74,P<0.0001),血行再建術(0.52;0.35-0.75,0.63;0.51-0.79,ともにP<0.0001)のリスク低下が大きく,これらが両群の主要血管イベントの低下となった。

[脳卒中]
推定5年リスクが<10%と低い群(下位2群)でのリスク低下(≦5%群+5%-<10%群:0.76;99% CI 0.61-0.95;P=0.0012)は高リスク群と同等であった(傾向P=0.3)。

[癌]
LDL-Cの低下による癌(1.00;95% CI 0.96-1.04),癌死(0.99;0.93-1.06),その他の非血管死(0.96;0.92-1.01)の増加は認められなかった。

[サブグループ]
血管疾患の既往のない患者では,スタチンは血管死(0.85;95%CI 0.77-0.95)と全死亡(0.91;0.85-0.97)のリスクをともに抑制した。ベースライン時の主要血管イベントリスク分類による差はみられなかった。

(収載年月2012.11)
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