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男性,女性におけるLDL-C低下療法の有効性と安全性 (CTT)
pooled analysis

ベースライン時の心血管リスクが同等の男女において,スタチンの主要血管イベント抑制効果は同等(Cholesterol Treatment Trialists':CTT)。
Fulcher J, et al.; Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaboration. Efficacy and safety of LDL-lowering therapy among men and women: meta-analysis of individual data from 174,000 participants in 27 randomised trials. Lancet. 2015; 385: 1397-405. PubMed

コメント

本解析はあらかじめ設定された条件に合致する27試験のメタ解析であり,かつ女性約5万人の個々人のデータから再解析したものであり,評価の高いメタ解析といえる。このような手法により,以前より問題となっていた女性におけるスタチン治療の有効性について一定の結論を高いエビデンスレベルで示したというという意味では評価できる。しかし,重要なことは男性と同等の冠リスクの場合であり,LDL-C低下(男性とほぼ同等)に対する心血管イベントの“低下率”が男性とほぼ同等ということは念頭におくべきであろう。周知のように冠リスクの決定因子としては,年齢と性が大きく寄与しており,男性と同等の冠リスクを有する女性はリスクが高いということであり,その絶対数は少ないということである。
もう一点,問題として挙げられるのは副作用と有効性の関係である。もちろんスタチンの副作用が非常に少ないことは実証済みではあるが,きわめて多くの患者で,きわめて長期に観察された比較試験はないのであり,このような限られた期間の臨床試験からは伺い知ることのできない副作用もありうることは,常に念頭におく必要がある。特に女性のように比較的冠リスクの低い患者(日本人も同様であるが)における有効性と副作用の問題に関しては,大規模な観察的な研究に頼らざるを得ない。このように,確立された治療法については,長期にわたるビッグデータを用いて,大規模な副作用調査などをすることが要請されるものと思われる。(寺本

目的 女性におけるスタチンの有効性が男性と同等かについては議論がわかれている。
Cholesterol Treatment Trialists'(CTT)データベースに含まれているスタチンのランダム化比較試験(RCT)のデータを用いて,スタチンの血管・非血管転帰に対する有効性を男女別に詳細に検証するメタ解析を実施した。
評価項目は,主要血管イベント,主要冠イベント(非致死的心筋梗塞[MI],冠動脈疾患[CVD]死),脳卒中,血行再建術(血管形成術,CABG),癌,死因別死亡。
対象 27試験・174,149例(うち女性46,675例[26.8%])*。スタチン群 vs 対照群,強化治療群 vs 標準治療群のRCTで,介入の主効果がLDL-Cの低下であり,この介入に対する交絡因子がなく(LDL-C以外の危険因子の改善が意図されていない),目標登録症例数≧1,000例,治療期間≧2年の試験。
* スタチン群 vs 対照群(22試験・134,537例):4S(女性19%),LIPID(17%),HPS(25%),PROSPER(52%),ALLHAT-LLT(49%),ASCOT-LLT(19%),4D(46%),MEGA(68%),JUPITER(38%),GISSI-HF(23%),CORONA(24%)など;強化治療群 vs 標準治療群(5試験・39,612例):PROVE-IT(22%),A to Z(24%),TNT(19%),IDEAL(19%),SEARCH(17%)。
■背景:年齢(女性65.1歳,男性61.8歳),現喫煙(16.3%,20.4%),BMI中央値(27.2kg/m²,27.0kg/m²),高血圧(60.0%,47.5%),血圧(140.4/80.1,137.8/81.3mmHg),総コレステロール(216.6,205.0mg/dL),LDL-C(131.5,127.6mg/dL),HDL-C(50.3,42.5mg/dL),トリグリセライド(115.1,97.4mg/dL),MI既往(23.6%,41.5%),他の症候性CAD既往(29.5%,41.2%),糖尿病(23.6%,17.8%);全P<0.0001,追跡期間中央値4.9年。
方法 CTTデータベース内のスタチン試験を特定(2010年まで)。
男女別に1年後の脂質値の絶対差を算出し,LDL-C 1.0mmol/L(38.67mg/dL)低下ごとのイベント率比を算出。ベースライン時の血管リスクが同等の男女間で比較するため,ベースライン時の各イベントの5年推定リスクによる層別解析も実施(<10%,10-<20%,20-<30%,≧30%)。
結果 [LDL-Cの低下]
スタチン・強化治療によるベースラインから1年後までの脂質値(総コレステロール,LDL-C,トリグリセライド)の低下は,男女で同等であった(スタチン群 vs 対照群の試験でのLDL-C低下:約43mg/dL,強化治療群 vs 標準治療群:約19mg/dL)。

[血管イベント]
主要血管イベントリスクは男女ともに有意に低下し,有意な性差は認められなかった(女性:性差以外の因子で調整後のLDL-C 1.0mmol/L低下ごとの率比0.84;99%信頼区間0.78-0.91,P<0.0001,男性:0.78;0.75-0.81,P<0.0001;性差P=0.331)。
試験のタイプ別の解析結果も,スタチン群 vs 対照群では女性の低下のほうがわずかに小さかったものの,同様であった(スタチン群 vs 対照群:性差P=0.051;強化治療群 vs 標準治療群:P=0.570)。
5年主要血管イベントリスクによる層別解析では,10~<20%群でのみ有意な性差を認めたが(女性:0.88;0.77-1.00,男性:0.76;0.70-0.83;性差P=0.03),その他では<10%群も含めて性差は認められなかった。
主要冠イベント(女性0.83;0.74-0.93,男性:0.74;0.70-0.78;P=0.10),血行再建術(0.76;0.66-0.87,0.75;0.71-0.80;P=0.15),脳卒中(0.90;0.78-1.04,0.83;0.76-0.90;P=0.31)の結果も同様であった。

[死亡]
全死亡リスクは男女ともに有意に低下した(女性:0.91;0.84-0.99,男性:0.90;0.86-0.95;性差P=0.43)。
死因別では,スタチン治療により血管死(全例0.88;95%信頼区間0.84-0.91),原因不明の死亡(0.87;0.77-0.99)は有意に低下したが,非血管死の低下は認められず(0.96;0.92-1.02),いずれの死亡においても有意な性差は認められなかった。

[非血管イベント]
癌の発症率,癌死にも性差は認められなかった。

(収載年月2015.07)
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