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everolimus溶出ステントとステント血栓症
meta-analysis

everolimus溶出ステントはそれ以外の薬剤溶出性ステントに比べ,ステント血栓症,標的血管血行再建術,心筋梗塞を有意に抑制する。
Baber U, et al. Impact of the everolimus-eluting stent on stent thrombosis a meta-analysis of 13 randomized trials. J Am Coll Cardiol. 2011; 58: 1569-77. PubMed

コメント

これまでのpivotal試験の結果から,durable polymerを有する各種DESの内膜増殖抑制効果はEES≒SES>PES>ZESと考えられる。一方動物実験では,早期内皮化率は EES>ZES>PES>SESと報告されている。従ってEESは,再狭窄予防とステント血栓症というDES特有のパラドックスを解決する最も有力なデバイスの可能性があった。
このメタ解析は,ほとんどが2009年以降のRCTを取り扱っているためステント血栓症の定義や抗血小板剤の継続期間にバイアスが少なく,また両群とも7,000例以上と頻度の少ないエンドポイントを比較するに十分な検出力を有している。さらに従来のpivotal試験だけのメタ解析と異なり,病変・患者の重症度(“off-label use”)や二重抗血小板剤投与期間がよりreal worldに近い。
結果は,non-EESを凌駕するEESの有効性(TVR),安全性(ステント血栓症・心筋梗塞) が示され, DES別に検討すると,有効性はEES≧ZES≧SES>PES,安全性はEES≒SES>ZES>PESの順となった。これらの結果は,DES構成要素である薬剤・ポリマー・ステントプラットホームの優越性で説明されている。今回のメタ解析には含まれていないが,ESC 2011で発表されたRESETでもTVR・ステント血栓症は EES≒SES,死亡・心筋梗塞は EES≧SESであり,本メタ解析に加えてもEESの優位性は動かないであろう。また RCTではないが,同じく ESC2011で報告されたBern-Rotterdam cohort studyでもSES・PESよりステント血栓症を6-7割減じることが示された。
患者レベルの解析ではないこと,DESのデータが均等でない(EES vs ZESのデータが1つしかない)こと,追跡期間が短いことなどの限界はあるが,本メタ解析により「durable polumerのDESの中では EESが最強」と証明されたことになる。(中野中村永井


目的 新世代の薬剤溶出性ステント(DES)は前世代のDESに比べ,抗再狭窄効果が持続し全体的な安全性が改善している。everolimus溶出ステント(EES)は,薄いストラットで,コバルト合金製のステントプラットフォームを,抗増殖剤everolimusを溶出する生体適合性フルオロポリマーでコーティングした新世代DESである。動物実験で他のDESよりも早期の内皮化が示され,臨床試験でも臨床・冠動脈造影上の再狭窄の抑制が示唆されている。
理論的にはEESが血栓リスク低下に優れているとされているものの,早期の臨床試験は検出力が不足していたため,EESのステント血栓症への効果はいまだに明確になっていない。
そこで,EESをEES以外のDESと比較したランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施した。
主要評価項目:Academic Research Consortium(ARC)の定義によるdefinite,probable ステント血栓症の頻度。
その他の評価項目:心筋梗塞(MI),標的血管再血行再建術(TVR),心臓死。
対象 17,101例。13*のRCT(EES[9,764例] vs EES以外のDES[7,337例])。
試験選別基準:EESと対照DES(非EES)のRCT,臨床転帰の結果のあるもの,ステント血栓症の頻度の結果があるもの。
除外基準:非永久残存ポリマー(生体吸収性,生体分解性)使用DESのRCT。
* EES vs paclitaxel溶出ステント(PES)4試験:SPIRIT II,III,IV,COMPARE(文献発表,学会発表年2007-2010年)。
EES vs sirolimus溶出ステント(SES)8試験:BASKET-PROVE,ESSENCE DM,EXCELLENT,ISAR-TEST-4,SORT OUT IV,LONG-DES III,Burzotta et al.,Park et al.(2009-2011年)。
EES vs zotarolimus溶出ステント(ZES)1試験:RESOLUTE All Comers(2010年)。
文献化されたものは6試験,非文献化は7試験。
■患者背景:平均年齢は62-67歳,大半が男性,糖尿病が14-100%,追跡期間は9-48ヵ月,clopidogrel継続期間6-12ヵ月。
方法

MEDLINE,Scopus,Cochrane Library,インターネット情報源で検索した。
検索用語は,“Xience V”,“everolimus-eluting”,“Promus”,“stent thrombosis”。
さらに,次の学会:American College of Cardiology (ACC),American Heart Association (AHA),Transcatheter Cardiovascular Therapeutics (TCT),European Society of Cardiology (ESC)の年次総会録,レビュー,先に実施されたメタ解析の参照文献も検索した。

結果 加重平均追跡期間は21.7ヵ月。

[ステント血栓症]
ステント血栓症が発生しなかった2試験を除く11試験を解析。
EESはEES以外のDESに比べ有意に抑制した。
EES群72/9,655例(0.7%) vs 非EES群112/7,230例(1.5%):相対リスク0.55;95%信頼区間0.38-0.78(P=0.001),絶対リスク差:-0.5%(EES群が有意に抑制);-1.0%-0.0%(P=0.04)。
試験間に異質性はみられなかった(heterogeneity P=0.26)。

[MI,TVR,心臓死]
・MI:EES群はEES以外のDES群に比べ有意に抑制した。
282/9,764例(2.9%) vs 289/7,337例(3.9%):0.78;0.64-0.96(P=0.02),-0.7%(EES群が非有意に抑制);-1.5%-0.1%(P=0.08)。
試験間に異質性はみられなかった(heterogeneity P=0.18)。
・TVR:EES群はEES以外のDES群に比べ有意に抑制した。
559/9,764例(5.7%) vs 563/7,337例(7.7%):0.77;0.64-0.92(P=0.004),-1.5%;-2.6%--0.4%(P=0.009)。
試験間に異質性がみられた(heterogeneity P=0.05)。TVRが最も有意に抑制されたのは,ACS例が多かったCOMPARE試験(vs PES)で,この試験を除外すると,相対リスク0.83;0.73-0.93(P=0.001)で,試験間の異質性はなくなった(heterogeneityP=0.44)。
・心臓死:両群間に有意差はなかった。
153/9,540例(1.6%) vs 142/7,111例(1.9%):0.92;0.74-1.16(P=0.38),-0.1%;-0.5%-0.2%(P=0.41)。
試験間に異質性はみられなかった(heterogeneity P=0.78)。

[その他の結果]
・変量効果,定量効果モデル,clopidogrel 6ヵ月,12ヵ月投与,追跡期間の差(≦1年,>1年)による各エンドポイントに対するEES群の有効性は一貫していた。しかし,ステント血栓症(heterogeneity P=0.03),TVR(heterogeneity P=0.007),MI(heterogeneity P=0.006)には対照DESによる差がみられた。各エンドポイントに対するEESによるリスク低下はPESが対照の場合が最も大きく,ZESが対照の場合に中等度,SESの場合は最も小さかった。
・加重線形解析によると,ベースライン時のリスクが大きい例でEES群のステント血栓症に対する絶対ベネフィットが増加した(R²=0.89,P<0.001)。度合いは小さいが同様の関連がMI,TVRでもみられた。


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