心臓血管外科手術のできない施設でのPCI
meta-analysis
心臓血管外科手術のできない施設でのPCI施行により,できる施設でのPCI施行に比べ入院中の死亡,緊急CABG施行の増加はない。
Singh M, et al. Percutaneous coronary intervention at centers with and without on-site surgery: a meta-analysis. JAMA. 2011; 306: 2487-94. PubMed
Kinlay S: The trials and tribulations of percutaneous coronary intervention in hospitals without on-site CABG surgery. JAMA. 2011; 306: 2507-9. PubMed
目的 |
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現行のガイドラインでは,心臓血管外科手術のできない施設での待機的PCIは推奨しておらず(American Heart Association/ American Cardiology class III),ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者におけるPCIは容認できるとしている(class IIb)。しかし,臨床現場ではCABGのできない施設でPCIは施行されているため,心臓血管外科手術のできる施設での施行と安全性,転帰を比較するためにメタ解析を行った。検証しようと試みた仮説は,心臓血管外科手術のできない施設でのprimary PCIおよび待機的PCIの転帰は,手術のできる施設と違いはない。
評価項目は院内死亡率,緊急CABG。 |
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対象 |
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primay PCI例12万4,074例,非primay PCI例91万4,288例。
15試験:心臓血管外科手術のできる・できない施設で施行されたPCIの結果論文が英語で発表されたもの;転帰は心臓血管外科手術のできる施設での転帰との比較;STEMI患者を含む試験の場合,STEMIの定義が明確に記されているもの;症例対照とのマッチングデザイン,共変量による補正,propensityに基づく補正などで両群間差を調整した統計解析のあるもの。
除外試験:心臓血管外科手術のできない施設で施行されたPCIのみで行われた対照群のないもの;文献が出版されていないもの,学会発表;心筋梗塞の定義が他と異なる日本の試験など。 |
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方法 |
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meta-analysis of observational studies in epidemiology (MOOSE) に従い,1990年1月-2009年12月に発表された研究をMEDLINE,EMBASE,Cochrane Library databaseで検索。
検索用語は,“percutaneous transluminal coronary angioplasy or PTCA”, “primary angioplasty”, “ST-segment elevation myocardial infarction or STEMI”, “PCI”, “angioplasty”, “on-site surgery”, “coronary stents”, “drug-eluting stents”, “balloon angioplasy”。
試験のタイトル,実施期間,血管形成術の適応症例,転帰を手作業で抽出し,strengthening the reporting of observational studies in epidemiology (STROBE) チェックリストの項目で試験の質を評価し,質の高い試験を選んだ。
統合効果(pooled-effect)は変量効果モデルで推定した。 |
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結果 |
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[入院中の死亡率]
・primary PCI例
心臓手術のできない施設でのリスク上昇はなかった。
全例を統合した死亡率は心臓手術のできない施設群4.6% vs できる施設群7.2%:オッズ比(OR)0.96;95%信頼区間0.88-1.05。
試験間の異質性は認められなかった(I ²=0%)。
ファンネルプロット(出版バイアス)は狭く,推定有効性はどの試験でも一貫していた。
・非primary(待機的,urgent) PCI例
1.4% vs 2.1%:1.15;0.93-1.41。
やや異質性がみられた(I ²=46%)。
出版バイアス調整後の死亡率は心臓手術のできない施設で25%上昇した(1.25;1.01-1.53,P=0.04)。
[緊急CABG]
いずれの施設でも施行率は低かった。
最も高率だった試験で,primary PCI例1.2%,非primary PCI例0.3%,心臓手術のできる施設での成績であった。
primary PCI例(全例統合)は,心臓手術のできない施設群0.22% vs できる施設群1.03%:0.53;0.35-0.79。
非primary PCI例は,0.17% vs 0.29%:1.21;0.52-2.85。
異質性はいずれも小さかった(primary PCI例:I ²=20%,非primary PCI例:I ²=5%)。
出版バイアス調整後も,ORの違いはなかった。
[サブセット解析]
1999年以前に発表されたものを除き11試験のサブセット解析を実施したが,すべてのORは全例での一次解析と違いはなかった。
STEMI患者:死亡のOR;0.97;0.88-1.06,待機的PCI例の死亡:1.15;0.93-1.42,緊急CABG:0.56;0.37-0.84,待機的PCI例の緊急CABG:1.32;0.49-3.59。
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