STEMI患者におけるDES,BMS
meta-analysis
ステントの進化に伴いST上昇型心筋梗塞患者のprimary PCI施行後の転帰は着実に改善しており,現時点でもっとも安全性と有効性に優れるのはコバルト-クロムeverolimus溶出ステント。
Palmerini T, et al. Clinical outcomes with drug-eluting and bare-metal stents in patients with ST-segment elevation myocardial infarction: evidence from a comprehensive network meta-analysis. J Am Coll Cardiol. 2013; 62: 496-504. PubMed
目的 |
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ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者は,血小板活性化と血栓の形成により,安定冠動脈疾患患者よりもステント血栓症のリスクが高い。この安全性の課題を克服すべく第二世代薬剤溶出性ステント(DES)が開発されたが,これらがベアメタルステント(BMS)や第一世代DESにくらべSTEMI患者の転帰を改善するかどうかは確立されていない。
米国で承認されているDESとBMSをSTEMI患者において評価したランダム化比較試験(RCT)を用いて,ネットワークメタ解析*の手法により各ステントの安全性と有効性を相対的に評価した。
安全性のエンドポイントは1年後の死亡,心臓死,心筋梗塞(MI),死亡+MI,心臓死+MI,definiteあるいはdefinite+probableステント血栓症(ARC基準)。
有効性のエンドポイントは1年後の標的血管再血行再建術(TVR)。
* ステントAとステントBを比較するにあたって,A,Bを直接比較する試験だけでなく,ステントAとステントCおよびステントBとステントCを比較する試験を用いて,間接的にステントAとステントBを比較することも含めたメタ解析。 |
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対象 |
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22試験*,12,453例。米国で承認されてSTEMI患者に広く使用されているDES** 2-3種類を比較,またはそれらのDESとBMSを比較したRCT。
* BASKET PROVE, COMPARE, EXAMINATION, HORIZONS-AMI, MISSION, MULTISTRATEGY, PASSION, PRODIGY, SESAMI, STRATEGY, TYPHOONなど。
** sirolimus溶出ステント(SES), paclitaxel溶出ステント(PES), コバルト-クロムeverolimus溶出ステント(CoCr-EES), ホスホリルコリンベースのzotarolimus溶出ステント(PC-ZES)。 |
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方法 |
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MEDLINE, PubMed, Cochrane Collaboration database, Embase, TCTMD.com, ClinicalTrials.gov, Clinical Trials Results.org, CardioSource.com, 主要学会の抄録と発表を検索。言語,出版日,出版状態の制限は設けず。大規模RCTのSTEMIサブグループも,STEMIによりステントの割付けを層別できるものに限り対象とし,この場合のデータは試験統括医師から直接入手した。
各ステントでイベント発生率がもっとも低くなる確率を,Bayesian Markov chain Monte Carloモデルにより算出した。 |
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結果 |
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[死亡,MI,TVR]
死亡,MIにおいてはいずれの比較でも有意差はなかった。
ステント間比較において有意差が認められた項目は下記の通り。
・CoCr-EES vs BMS
全死亡/MI:1年後:オッズ比0.65;95% credible interval(確信区間)0.46-0.90,長期(>1年):0.69;0.53-0.91。
心臓死/MI:1年後:0.63;0.42-0.92,長期:0.70;0.50-0.96。
1年後のMI:0.55;0.34-0.93。
TVR:1年後:0.45;0.29-0.66,長期:0.43;0.28-0.62。
・CoCr-EES vs PES
長期の全死亡/MI:0.73;0.54-0.98。
・SES vs BMS
1年後の心臓死/MI:0.70;0.49-0.98。
TVR:1年後0.35;0.26-0.46,長期0.47;0.35-0.60。
・SES vs PES
1年後のTVR:0.63;0.45-0.88。
・PES vs BMS
TVR:1年後0.56;0.42-0.73,長期0.65;0.48-0.81。
CoCr-EES vs SES/PC-ZES,PC-ZES vs BMS/SES/PESはすべてのイベントで有意差を認めず,長期のMIについてはどのステント間にも差がなかった。
1年後の心臓死/MI,MI,definiteステント血栓症の発生確率がもっとも低いのはCoCr-EES(それぞれ59%,56%,63%)で,TVRの確率がもっとも低いのはSES(82%)であった。
[ステント血栓症]
definite/probableステント血栓症のリスクはCoCr-EESがBMSよりも低く(1年後:0.36;0.18-0.66,長期:0.41;0.16-0.88),PES(0.44;0.22-0.83,0.32;0.12-0.71)よりも低かった。また,1年未満でみるとこれらの差は早期(≦30日)から認められたが(CoCr-EES vs BMS:0.28;0.12-0.61 vs PES:0.38;0.15-0.83),30日-<1年はどのステント間にも差がなかった。
definiteステント血栓症も同様の結果であった。
[出版バイアス]
funnel plotから,small study effectや出版バイアスは認められなかった。
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(収載年月2013.10) |