[患者背景]
糖尿病例は非糖尿病例より高齢(平均年齢:DAPT長期群63.7歳 vs 62.8歳;短期群63.6歳 vs 62.8歳)で,女性が多く(36% vs 28%;34.2% vs 27.8%),心血管疾患が多かった(高血圧:87.4% vs 75.1%;87.0 % vs 74.5%,高コレステロール血症:72.3% vs 60.7%;71.9 % vs 60.1%,MI既往:22.6% vs 21.2%;25.2 % vs 20.2%,PCI/CABG歴:19.5/7.7% vs 15.7/5.6%;21.4/7.3% vs 16.6/5.4%,脳卒中既往:4.4% vs 3.3%;6.2% vs 3.1%,クレアチニン>106.08μmol/L:10.9% vs 7.4%;8.2% vs 6.9%)。また糖尿病例は,罹患枝・治療血管・病変・分岐部病変治療数が多いなど冠動脈疾患がより重症で,留置ステント数,ステント長が大きく,ステント径は小さかった。
[糖尿病の一次エンドポイントへの影響]
糖尿病例は非糖尿病例にくらべ一次エンドポイント(MACE)が有意に多かった(3.3% vs 2.3%:調整ハザード比:2.30;95%信頼区間1.01-5.27[P=0.048])。
糖尿病(P=0.046),虚血血管数(P=0.004),ステント長/患者(P=0.002)はMACEの独立した予測因子であった。
[糖尿病合併有無による一次エンドポイントのDAPT長期 vs 短期]
糖尿病の有無にかかわらず,1年後のMACEにDAPT期間の長さによる有意差は認められなかった(糖尿病例3.3% vs 3.2%:1.05;0.62-1.76[P=0.86],非糖尿病例2.1% vs 2.5%:0.97;0.67-1.39[P=0.85];非糖尿病の交互作用P=0.33)。
サブグループ(性別,≧65歳,急性冠症候群,多枝病変)内でも同様だった。
[出血イベント]
糖尿病例,非糖尿病例間に有意な大・小出血差は認められなかった(1.6% vs 1.4%:0.62;0.19-2.02[P=0.43])。しかし,糖尿病例では長期DAPT例は短期例にくらべ大・小出血が有意に多く(2.1% vs 1.1%:1.89;1.10-3.27,[P=0.02]),非糖尿病例での増加は非有意であった(1.6% vs 1.2%:1.43;0.96-2.11[P=0.08]);非糖尿病の交互作用P=0.37)。
大出血は糖尿病例・非糖尿病例の長期DAPTで一貫して増加したが,有意な増加は非糖尿病例のみであった(0.8% vs 0.4%:2.56;1.08-6.07[P=0.03]);交互作用P=0.69)。
[心筋梗塞]
MIのリスクは糖尿病例で非糖尿病例にくらべ有意に上昇し(2.1% vs 1.5%:3.66;1.25-10.69[P=0.018]),MACE増加の大きな要因であった。しかし,DAPT期間による有意な違いはみられなかった(糖尿病例2.0% vs 2.1%:0.95;0.58-1.54[P=0.82],非糖尿病例1.4% vs 1.6%:1.15;0.68-1.94[P=0.60])。
[definite/ probableステント血栓症]
糖尿病例のほうが非糖尿病にくらべ有意ではなかったが多かった(0.6% vs 0.4%:1.89;0.31-11.38[P=0.49])。
糖尿病例では長期DAPT群のほうが短期よりもリスクが低かった(0.4% vs 0.9%:0.26;0.09-0.80[P=0.02])。一方で,非糖尿病ではこのような関連はみられなかった(0.4% vs 0.3%:1.42;0.68-2.98[P=0.35],交互作用=0.04)。
|