PRECISE-DAPT
pooled analysis
5項目(年齢,クレアチニンクリアランス,ヘモグロビン,白血球数,自然発生性出血既往)で出血リスクを評価するPRECISE-DAPTスコアは,PCI施行後のDAPT期間中の院外出血リスクを予測する標準ツールとなり得る。
Costa F, et al.; PRECISE-DAPT study investigators. Derivation and validation of the predicting bleeding complications in patients undergoing stent implantation and subsequent dual antiplatelet therapy (PRECISE-DAPT) score: a pooled analysis of individual-patient datasets from clinical trials. Lancet. 2017; 389: 1025-34. PubMed
目的 |
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ステント留置後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は虚血性イベントを予防するが,出血リスクが高まる。ガイドラインはDAPT期間を決める前に出血リスク評価の重要性を支持しているものの,DAPT期間中の出血リスクに特化した予測ツールも,ステント施行時の至適DAPT期間決定のための標準化アルゴリズムもない。
DAPT実施時の自然発生性出血リスクを評価し院外出血リスクを予測するために,ランダム化比較試験(RCT)の患者の個人データを統合してPRECISE-DAPTスコアを作成し,その予測能を抽出コホートで評価し,有用性を外部コホートPLATO試験とBernPCI Registryで検証した。さらに後ろ向きに,DAPT期間による出血リスクも評価した。
主要評価項目は,初回PCI後7日以降に発生した院外でのTIMI定義による大・小出血。 |
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対象 |
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14,963例・8 RCT(12ヵ国139施設),入院中に待機的・urgentあるいはemergent PCI(ステント)を施行した冠動脈疾患患者で,手技後のDAPT(aspirin+P2Y12阻害薬)実施例。
除外基準:長期抗凝固薬治療適応例。
■DAPT背景:退院時のDAPT実施例は14,590/14,848例(98.3%),P2Y12阻害薬の88%はclopidogrel,実施期間は中央値360日。 |
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方法 |
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大規模RCTの患者データを統合解析した抽出コホートにおいて,Cox比例ハザードモデルで,RCTで層別して同定した5つの院外TIMI大・小出血予測因子(ベースライン時の年齢,クレアチニンクリアランス,ヘモグロビン,白血球数,自然発生性出血歴)で出血リスクを評価するPRECISE-DAPTスコアを作成し,評価した。
検証コホートは,PLATO試験(8,595例:TIMI大・小出血1.69%;大出血1.09%)とスイスの登録研究BernPCI Registry (ベルン大学病院で2009年2月23日~’14年12月31日にPCIを施行した患者。6,172例:1.52%;1.00%)。 |
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結果 |
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追跡期間552日(中央値)後の院外TIMI基準出血発生は218例(1年後:12.5件/1,000人),うち大出血は124例(6.9件/1,000人)。
出血初発発生までの時間は中央値158日(57-333日),大出血は150日(62-326日)。
多変量解析で有意だった院外出血因子は,年齢(10歳加齢ごとのハザード比1.34,P=0.005),出血既往(4.14,P=0.023),白血球数(10³ cells/μL増加:1.06,P=0.078),ヘモグロビン(1g/dL増加:0.67,P=0.001),クレアチニンクリアランス(10mL/分増加:0.90,P=0.004)。
PRECISE-DAPTスコアのTIMI定義による院外大・小出血の抽出コホートにおけるc統計量は0.73(95%信頼区間0.61-0.85);大出血は0.71(0.57-0.85),検証コホートであるPLATOでは0.70(0.65-0.74);0.68(0.63-0.74),BernPCI registryでは0.66(0.61-0.71);0.65(0.58-0.71)であった。
PARISスコアとくらべたPRECISE-DAPTスコアのIDI(integrated discrimination improvement);NRI(net reclassification improvement)は改善した(PLATO:0.004 [P=0.007];0.16[P=0.047], BernPCI registry:0.004[P=0.01];0.21[P=0.037])。
スコアの識別能はPCI施行時の臨床所見,P2Y12阻害薬(clopidogrel,ticagrelor)による違いはなかったが,prasugrel治療例では低く,プロトンポンプ阻害薬治療例では高かった。Kaplan-Meir出血率は,超低リスク(スコア≦10),低リスク(11-17),中等度リスク(18-24),高リスク(≧25)でも一貫していた。
DAPT期間の長い(12-24ヵ月)群では短い(3-6ヵ月)群にくらべ,出血高リスク例で出血リスクが有意に上昇した(絶対リスク差+2.59%[95%信頼区間+0.82-+4.34;NNT 38])。しかし,低リスク例ではリスク上昇はみられず,有意な虚血性イベントに対する有効性がみられたのは後者のみであった(交互作用P=0.007)。出血リスクと虚血性イベント低下の正味(net)の効果として,出血非高リスク患者におけるDAPT 12-24ヵ月の実施の転帰が好ましいことが示唆された。
PCI施行時の急性冠症候群患者での感度解析の結果も,スコア≧25の高リスク例において長期DAPT後のTIMI出血リスクが有意に上昇したが,低リスク例での上昇はみられなかった(交互作用P=0.034)。低リスク例では長期DAPT群での虚血性イベントリスクが低下したが,高リスク例での低下はみられなかった(交互作用P=0.032)。
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