施行後の死亡率-CABG vs PCI
pooled analysis
多枝病変,特に糖尿病,複雑度の高い冠動脈病変例において,死亡抑制はPCI群よりCABG群のほうが大きかった。
Head SJ, et al. Mortality after coronary artery bypass grafting versus percutaneous coronary intervention with stenting for coronary artery disease: a pooled analysis of individual patient data. Lancet. 2018; 391: 939-48. PubMed
目的 |
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冠動脈疾患(CAD;多枝・左主幹部病変)患者においてCABGとPCI*のランダム化比較試験(RCT)は多く実施されているが,この両血行再建術間の死亡差を検出できる十分なパワーをもった試験はない。2009年発表の統合解析,その後2016年までに実施された比較試験では,死亡率において両治療間に有意差はなかった。
多枝病変あるいは左主幹部病変患者別に,PCI(ステント)群とCABG群との長期生命予後を比較検証するために,RCTの患者個人データの統合解析を実施した。
主要評価項目は全死亡率。
*バルーン血管形成術,ベアメタル(BMS)・薬剤溶出性(DES)ステント |
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対象 |
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11,518例・11 RCT(PCI群5,753例,CABG群5,765例)。多枝病変または左主幹部病変患者において急性心筋梗塞を除外して,PCI(BMS,DES)群とCABG群を比較し,>1年追跡したRCTで全死亡データのあるもの(多枝病変群は左主幹部病変を有さず,左主幹部病変群は罹病冠動脈病変枝数を問わないと定義)。
■患者背景:平均年齢(PCI群63.6歳,CABG群63.7歳),女性(23.9%, 23.8%),BMI>30kg/m²(28.1%, 28.3%),糖尿病(38.5%, 37.7%);インスリン治療例(12.9%, 11.9%),高血圧(67.6%, 68.1%),高コレステロール血症(69.5%, 67.3%[P=0.0112]),末梢血管疾患(8.2%, 8.5%),心筋梗塞既往(28.0%, 27.5%),EF 30-49%(15.2%, 14.3%),不安定狭心症(34.6%, 34.2%),3枝病変(58.6%, 61.8%),左主幹部病変(38.8%, 38.9%),SYNTAXスコア([6試験]平均はいずれも26):0-22(37.6%, 39.1%);23- -2(41.1%, 38.1%);≧33(21.3%, 22.8%)。
PCI群:BMS 26.6%,DES 73.4%(第一世代[4試験]39.2%;新世代[3試験]34.2%),CABG群:左内胸動脈(9試験)96.2%,両側内胸動脈(7試験)18.7%,オフポンプ(7試験)27.5%。退院時の治療:aspirin(97.3%, 95.5%),チエノピリジン系薬剤(96.7%, 45.1%),2剤併用抗血小板療法(95.1%, 44.0%),スタチン(88.1%, 84.0%),ACE阻害薬/ARB(63.7%, 46.9%);全P<0.0001,β遮断薬(79.1%, 76.2%[P=0.0040])。 |
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方法 |
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2017年7月19日まで,MEDLINE, Embase, Cochrane Libraryを検索。
該当RCTの研究者から入手した患者個人データを統合解析。Kaplan-Meier法で5年死亡を推定,トライアルで層別したランダム効果Cox比例ハザードモデルで,PCI群とCABG群を比較した。30日後,31日-5年後のランドマーク解析を実施。 |
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結果 |
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[全死亡]
平均追跡期間3.8年で976例が死亡。
5年全死亡率はCABG群のほうが有意に低かった(PCI群539例[11.2%] vs CABG群437例[9.2%]:ハザード比1.20;95%信頼区間1.06-1.37)。
30日後の全死亡率(76例[1.3%] vs 78例[1.4%]:0.97;0.71-1.33)には両群間に有意差はなかったが,31日-5年後の全死亡率はCABG群のほうが有意に低かった(463例[10.0%] vs 359例[8.0%]:1.26;1.09-1.44,P=0.0009)。
時間依存性モデルによると,追跡1年の死亡リスクは両群同等だったが,1年後以降の死亡率はCABG群のほうがPCI群より有意に低かった(1.39;1.17-1.62,P<0.0001)。推定frailtyのパラメータによる異質性は有意だった(θ=0.39,P<0.0001)。
[BMS,DES群の5年全死亡]
BMS例(3,051例)では両群は同等(8.7% vs 8.2%:1.05;0.82-1.34),DES例(8,467例)ではCABG群のほうが有意に低かった(12.4% vs 10.0%:1.27;1.09-1.47,P=0.0017)。BMS,DESによるPCI群,CABG群の有効性に対する交互作用はなかった(P for interaction=0.53)。
初代DES(4,300例:13.2% vs 11.1%:1.21;1.01-1.46)も,新世代DES(3,969例:10.3% vs 7.9%:1.27;0.98-1.64)も両群の有効性への有意な交互作用はみられなかった(P for interaction=0.78)。
[多枝病変患者(7,040例)での結果]
平均追跡期間4.1年で644例が死亡。5年全死亡率はCABG群のほうがPCI群より有意に低かった(365例[11.5%] vs 279例[8.9%]:1.28;1.09-1.49,P=0.0019)。糖尿病合併例でも同様の結果だったが,非糖尿病患者では両群は同等だった(8.7% vs 8.0%:1.08;0.86-1.36,P=0.49;P for interaction=0.0453)。
CABG群のPCI群を上回る死亡抑制は追跡期間が長いほど,SYNTAXスコアが高い例ほど大きかった。
[左主幹部病変患者(4,478例)での結果]
平均3.4年で322例が死亡した。5年全死亡は両群間に有意差はみられなかった(174例[10.7%] vs 158例[10.5%]:1.07;0.87-1.33,P=0.52)。
糖尿病の有無による治療に対する有意な交互作用はなかった(糖尿病合併例:16.5% vs 13.4%:1.34;0.93-1.91,P=0.11,非合併例:8.8% vs 9.6%:0.94;0.72-1.23,P=0.65)。
[サブグループ解析]
糖尿病のみが治療との交互作用が示された(糖尿病患者での5年全死亡率:15.7% vs 10.7%:1.44;1.20-1.74,P=0.0001,非糖尿病患者は8.7% vs 8.4%:1.02;0.86-1.21,P=0.81)。交互作用は有意ではなかったが,CABG群のPCI群を上回る死亡に対するベネフィットはSYNTAXスコアが高い例ほど大きい傾向がみられた。
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