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日本人における血圧と全死亡との関係
evidence for cardiovascular prevention from observational cohorts in Japan: EPOCH-JAPAN
pooled-analysis

血圧の上昇に伴い総死亡のリスクも高くなるがリスク度は若い人(40〜49歳)で大きい。
Murakami Y et al for the evidence for cardiovascular prevention from observational cohorts in Japan research group (EPOCH-JAPAN): Relation of blood pressure and all-cause mortality in 180,000 Japanese participants: pooled analysis of 13 cohort studies. Hypertension. 2008; 51: 1483-91.PubMed

コメント

我が国で行われた13のコホート研究からの貴重なメタ解析であるが,年齢を問わず血圧が上昇すると総死亡が増加することが明瞭に示されている。前高血圧を基準としても血圧上昇が総死亡率は有意に増加することから,前高血圧からの血圧予防対策が必要であることが示されている(桑島)。

目的 日本人における血圧の死亡に及ぼす影響,年齢別,性別のリスク度を評価するために13のコホート観察研究を合わせて検討する。
対象 176,389人(男性65,463人,女性110,926人)。日本で実施された13のコホート研究*の参加者。
心血管疾患既往例除外前は188,141人(男性70,558人:平均年齢59.6歳,平均追跡期間9.6年で全死亡9,880例,女性117,583人:58.4歳,9.9年で7,877例)。
40〜90歳,心血管疾患既往のないもの(端野・壮瞥町コホートに心血管疾患既往の情報がなかったため),次の項目のデータがあるもの:性別,登録時の年齢,収縮期/拡張期血圧。

* 端野・壮瞥町研究(Atherosclerosis. 2004; 177: 83-8., Diabetes Care. 2006; 29: 1128-9.),大崎研究(JAMA. 2006; 296: 1255-65.),大迫研究(J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 508-11.),YKK workersコホート(J Hypertens. 2005; 23: 1485-90.),小矢部研究(Stroke. 2003; 34: 863-8.),SPMI(滋賀県国民健康保険コホート:J Hypertens. 2006; 24: 2305-9.),吹田研究(Stroke. 1997; 28: 518-25., Arch Intern Med. 2000; 160: 2297-303.),RERF(被ばく者コホート:Diabetologia. 2005; 48: 230-4.),久山町研究(Diabetologia. 1993; 36: 1198-203.),JACC(Circulation. 2002; 106: 1229-36.),NIPPONDATA 80(Stroke. 2004; 35: 1836-41.),90(Atherosclerosis. 2006; 184: 143-50.),茨城コホート(Hypertens Res. 2005; 28: 901-9, Kidney Int. 2006; 69: 1264-71.)。

方法 日本人において,健康診断の結果(検査値,生活習慣・行動因子)と疾患(死亡率,発症率)の関連を検討した研究,追跡期間がおよそ10年,参加者>1000人,全国レベルから単施設までの研究より選別して,個人データを統合した。
総死亡率のハザード比は男女別で算出。年齢(40〜80歳)を10歳ごとに,収縮期血圧(SBP)を<120mmHgから≧160mmHgまでを10mmHgごとに,拡張期血圧(DBP)を<70mmHgから≧100mmHgまでを10mmHgごとに層別し,最低値(<120/<70mmHg)を対照とした。ポアソン回帰モデルを使用。

各血圧の定義はJNC 7に拠り,前高血圧:120≦SBP<140mmHgあるいは80≦DBP<90mmHg,高血圧stage 1:140≦SBP<160mmHgあるいは90≦DBP<100mmHg,stage 2:SBP≧160mmHg,あるいはDBP≧100mmHgとした。

結果 ほとんどの年齢群で男女において血圧上昇に伴い全死亡も増加したが,血圧上昇による全死亡のハザード比は若い群の方が高齢群よりも大きかった(40〜49歳のSBPのハザード比は男性1.37 vs 80〜89歳1.09,女性1.19 vs 1.07,DBPは1.46 vs 1.12,1.40 vs 1.12)。

血圧最高値と最低値間の死亡率の絶対差は高齢群の方が若い群よりも大きかった。降圧薬を服用していない参加者を除外しても同様であった。

  • 平均追跡期間9.8年の性別,年齢別総死亡数
    年齢群:男性(女性);男性+女性
    40〜49歳:137例(128例);265例
    50〜59歳:566例(518例);1,084例
    60〜69歳:1,900例(1,392例);3,292例
    70〜79歳:3,782例(2,708例);6,490例
    80〜89歳:2,183例(2,258例);4,441例
  • 血圧が10mmHg上昇するごとの多変量調整後の全死亡ハザード比(HR)
    年齢群:男性(SBP上昇のHR;95%信頼区間[CI],DBP上昇のHR;95%CI),女性(SBP上昇のHR;95%CI,DBP上昇のHR;95%CI);男性+女性(SBP上昇のHR;95%CI,DBP上昇のHR;95%CI)
    40〜49歳:男性(1.37;1.15〜1.62,1.46;1.05〜2.03),女性(1.19;1.00〜1.41,1.40;1.00〜1.95);男性+女性(1.27;1.13〜1.44,1.42;1.12〜1.80)。
    50〜59歳:男性(1.23;1.14〜1.33,1.42;1.21〜1.65),女性(1.16;1.07〜1.26,1.38;1.17〜1.64);男性+女性(1.20;1.14〜1.27,1.40;1.25〜1.58)。
    60〜69歳:男性(1.16;1.11〜1.21,1.28;1.17〜1.40),女性(1.21;1.15〜1.27,1.29;1.16〜1.44);男性+女性(1.18;1.15〜1.22,1.29;1.20〜1.38)。
    70〜79歳:男性(1.14;1.11〜1.17,1.21;1.13〜1.29),女性(1.12;1.08〜1.16,1.25;1.15〜1.35);男性+女性(1.13;1.11〜1.16,1.22;1.16〜1.29)。
    80〜89歳:男性(1.09;1.05〜1.13,1.12;1.03〜1.22),女性(1.07;1.03〜1.11,1.12;1.03〜1.22);男性+女性(1.08;1.05〜1.11,1.12;1.05〜1.19)。

高血圧例の人口寄与度は正常血圧例を対照とした場合,男性は22.7%で80〜89歳群が低く(10.5%),女性では17.9%,寄与度の最も低いのは40〜49歳群,80〜89歳群。
対照に前高血圧を加えた場合は寄与度は低くなった。

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