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末梢動脈疾患(PAD)患者におけるaspirinの心血管疾患抑制
meta-analysis

PADにおいてaspirin治療(単独投与,dipyridamoleとの併用投与)は心血管イベントを抑制(非有意),非致死的脳卒中を有意に抑制した。
統計的な不十分さがあるため,aspirinのベネフィットと出血リスクを確定するにはさらなるランダム化試験が必要である。
Berger JS, et al. Aspirin for the prevention of cardiovascular events in patients with peripheral artery disease: a meta-analysis of randomized trials. JAMA. 2009; 301: 1909-19. PubMed

コメント

末梢血管疾患は難しい疾患である。末梢血管疾患にまで動脈硬化性変化が起こる症例では,冠動脈,脳血管にも異常のある症例が多い。「冠動脈疾患+末梢血管疾患」,「脳血管疾患+末梢血管疾患」の症例はいずれもハイリスクであるが,「末梢血管疾患」単独では必ずしもハイリスクとは言えない。
疾患自体が多様であるため,抗血小板薬の効果も均一ではない。このため,「末梢血管疾患」という疾患グループは必ずしもaspirinによる心血管イベント抑制効果が明確にならない。今後,「末梢血管疾患」をサブグループ化し,aspirinが有用性を発揮する症例群に対して選択的な使用が推奨されることになろう。現在はランダム化試験による「グループに対する治療」から個人の特性に基づいたテイラーメード医療の中間に居ることが理解できる。(後藤

目的 aspirinが症候性冠動脈疾患,脳血管疾患患者において心血管イベントを抑制することはランダム化試験(RCT)で確認されている。末梢動脈疾患(PAD)における有効性は明確になっていない。
287トライアル・高リスク13万5000例の最大規模のメタ解析であるAntithrombotic Trialists’ Collaboration (ATC)では,症候性心血管疾患患者で抗血小板治療の心筋梗塞,脳卒中,死亡抑制効果が示された。しかしながら,PADでの試験で検討されている抗血小板療法のおよそ2/3はaspirin以外の薬剤を使用しているため,全体的な有効性はaspirin以外の治療法による可能性がある。PADにおけるaspirinの有効性は依然不明瞭である。
以上の状況を踏まえ,PADにおいてaspirinの心血管イベント抑制効果がプラセボあるいは対照薬と同等であるという仮説を検証するため本メタ解析を実施した。
対象 18試験・5269例(aspirin群2823例,うち1516例は単独投与,プラセボ群あるいは対照群2446例)。
前向きRCT試験でオープン,盲検化は問わない;PAD例をaspirin群,プラセボ群あるいは対照群に割り付けている試験;全死亡,心血管死,心筋梗塞,脳卒中,重大な出血の結果がある試験;dipyridamoleの併用の有無は問わない。
除外基準:イベント非発生試験。
■試験背景:aspirin単独投与群 vs プラセボ群あるいは対照群;7試験,aspirin+dipyridamole群 vs プラセボ群あるいは対照群;7試験,2群以上での群間比較(aspirin単独投与群 vs aspirin+dipyridamole群 vs プラセボ群);4試験。
追跡期間:10日~6.7年。
aspirin投与量:単独投与(100mg/日~1500mg/日),併用投与(aspirin 25~325mg×3回/日+dipyridamole 75mg×3回/日)。
登録患者:間欠性跛行,PCIあるいはCABG施行例,足関節-上腕血圧係数(ABI)≦0.99の無症候性の患者も含んだ。糖尿病とPADを併発している症例のみでのRCTが2試験。
方法 1966~2008年に発表されたRCTを,MEDLINE,Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL),EMBASE,Web of Science,Social Science Citation Index (SSCI)で検索した。
検索用語は,“aspirin”,“peripheral artery disease”,“peripheral arterial occlusive disease”,“claudication”,“randomized controlled trials”,およびこれらの組み合わせ。
2002年に発表されたATCメタ解析に含まれたPADにおけるaspirin試験も相互参照した。
結果 [主要評価項目である心血管イベント:非致死的心筋梗塞(MI),非致死的脳卒中,心血管死の複合]
aspirin群(単独投与,dipyridamoleとの併用投与を含む)251例(8.9%) vs 対照群269例(11.0%)でaspirin群の方が抑制したが有意差には至らなかった:統合相対リスク(RR)0.88(95%信頼区間0.76-1.04)。
[副次評価項目:非致死的脳卒中,非致死的MI,全死亡,心血管死]
・非致死的脳卒中:aspirin群で34%有意に抑制された。
52例(1.8%) vs 76例(3.1%):RR 0.66;0.47-0.94(P=0.02)。
・非致死的MI(92例 vs 89例:1.04,P=0.81),全死亡(225例 vs 216例:0.98,P=0.85),心血管死(129例 vs 128例:0.94,P=0.59)は有意差はなかった。
[安全性の主要評価項目:重大な出血]
aspirin群と対照群は同等であった。
51例(1.8%) vs 44例(1.8%):0.99(P=0.98)。しかしながら,出血に関してはほとんどの試験が報告,解析が不十分なためPADにおけるaspirinの重大な出血リスクを確定することはできない。

[aspirin単独投与]
心血管イベント:aspirin群125/1516例(8.2%) vs プラセボ・対照群144/1503例(9.6%)とaspirin群で低下したが有意差はなかった(RR 0.75;0.48-1.18)。
非致死的脳卒中はaspirin群で有意に抑制された(32例[2.1%] vs 51例[3.4%]:0.64[0.42-0.99],P=0.04)が,その他の副次評価項目とaspirinに有意な関連はみられなかった。
[aspirin投与量別]
aspirin低用量単独投与(100mg/日投与)群 vs プラセボ群(2試験):心血管イベント112/823例(13.6%) vs 127/819例(15.5%);RR 0.64(0.25-1.68)。低用量aspirinの抑制効果は有意ではなかったが,試験規模が小さく,95%信頼区間が広いことから,心保護効果を見出すのは難しい。
糖尿病およびPADのみを対象にしたのは2試験で,両試験とも心血管イベントのRRはほぼ1.00であった。症例数最大(1276例)で追跡期間最長(6.7年)の試験(POPADAD)を除外して解析すると,心血管イベントはaspirin群6.7% vs 対照群8.9%(RR 0.83;0.67-1.02)で全体の解析結果と違いはなかった。主な結果に差の出る試験背景はなかった。

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