aspirinの心血管疾患一次予防効果はベネフィット(閉塞性イベント抑制)/ リスク(重大な出血)比を考慮すると,総合的な有用性は確定できなかった。現在進行中のトライアルの結果が待たれる。
Antithrombotic trialists' (ATT) collaboration: Aspirin in the primary and secondary prevention of vascular disease: collaborative meta-analysis of individual participant data from randomised trials. Lancet. 2009; 373: 1849-60. PubMed
aspirin群 vs apirin非投与群(いずれの群にもその他の抗血小板薬は非投与)を比較したランダム化試験で,一次予防,二次予防を検討したものとした。
結果
[一次予防]
66万人・年の追跡で,重篤な血管イベント(MI,脳卒中,血管死[突然死,肺塞栓症,出血])が3554例発症。
aspirin群1671例(0.51%/年) vs 対照群1883例(0.57%/年)で,aspirin群で12%低下した:率比(RR)0.88(95%信頼区間[CI]0.82-0.94,P=0.0001)。
これはおもに非致死的MIの抑制によるものであった:0.18%/年 vs 0.23%/年;0.77(0.67-0.89,P<0.0001)。
・各血管イベントの結果は以下の通り。
主要冠イベント:0.82(0.75-0.90),CAD死:0.95(0.82-1.10),全脳卒中:0.95(0.85-1.06),脳出血:1.32(1.00-1.75),脳梗塞;0.86(0.74-1.00),原因不明の脳卒中:0.97(0.80-1.18),血管死:0.97(0.87-1.09),全死亡:0.95(0.88-1.02),頭蓋外大出血(消化管出血):1.54(1.30-1.82)。
(サブグループ)
年齢,性別,既往:血管疾患;糖尿病;高血圧,血圧,脂質,BMI,5年間のCAD発症リスクによるサブグループ間に有意な結果の違いはなかった(全体の不均一性:P=0.7)。
・<年齢>65歳未満:0.35%/年 vs 0.40%/年:0.87;0.78-0.98,65歳以上:1.37%/年 vs 1.53%/年:0.88;0.77-1.01。
・<5年間のCAD発症リスク><2.5%:0.26%/年 vs 0.30%/年;0.87(0.76-0.99),2.5~5%:1.02%/年 vs 1.23%/年;0.82(0.68-0.98),5~10%:2.04%/年 vs 2.28%/年;0.89(0.73-1.09),≧10%:3.59%/年 vs 3.44%/年;1.07(0.76-1.50)。
[二次予防]
43,000人・年の追跡で重篤な血管イベント3306例発症。
aspirin群6.69%/年 vs 対照群8.19%/年とaspirin群で抑制された:0.81(0.75-0.87,P<0.0001)。脳出血の有意な増加は認められず,全脳卒中および冠イベントの抑制が認められた。
・各血管イベントの結果は以下の通り。
主要冠イベント:0.80(0.73-0.88),非致死的MI:0.69(0.60-0.80),CAD死:0.87(0.78-0.98),全脳卒中*:0.81(0.71-0.92),脳出血:1.67(0.97-2.90),脳梗塞:0.78(0.61-0.99),原因不明の脳卒中:0.77(0.66-0.91),血管死:0.91(0.82-1.00),全死亡:0.90(0.82-0.99),頭蓋外大出血(消化管出血):2.69(1.25-5.76)。 * >84%が脳梗塞,TIA既往の再発高リスク例