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抗凝固薬治療下の心房細動患者における死因
meta-analysis

近年の心房細動患者における臨床試験では,死亡の大半が心臓死で,脳卒中や出血による死亡は死因のごく一部を占めるに過ぎない。さらなる死亡率低下のためには抗凝固療法以外の介入が必要である。
Gómez-Outes A, et al: Causes of death in anticoagulated patients with atrial fibrillation. J Am Coll Cardiol. 2016; 68: 2508-21. PubMed

コメント

心房細動に対する抗凝固療法中は,塞栓症・出血の発生率がこれまでは注目されてきた。抗凝固療法中の死亡が,塞栓症・出血に劣らず重要なエンドポイントであると認識されるようになった。塞栓症・出血を発症する以前に死亡した場合,塞栓症・出血は生じないので,これらのイベント発生率は見かけ上低く評価されてしまう。塞栓症や出血によって死亡した場合,死因が塞栓症・出血によると評価されなければ,やはりエンドポイント発生率を誤ることになる。このため昨今は,塞栓症・出血・死亡を複合エンドポイントとして評価されることが多くなっている。
4つのNOACの臨床試験における死亡に関する本解析の結果,抗凝固療法中の死因として最多であったのは心臓死であり,全体の半分弱を占めた。対象が高齢なこともあり,悪性腫瘍(11%)と感染症(9%)を合わせると全体の1/5を占めている。血栓塞栓症や出血が原因での死亡はそれぞれ6%に過ぎない。
死因別にNOACとwarfarinの効果を検討すると,NOACの優れた死亡抑制効果は主に致死性出血の抑制によることが明らかになった。また抗凝固療法関連の出血は,直後には予後に影響しなくても,長期予後には悪影響を及ぼしうる。抗凝固薬の効果を議論する際には,これらのことを考慮する必要がある。(井上

目的 経口抗凝固薬は心房細動(AF)患者の死亡リスクを低下するが,最近使用できるようになった直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)治療下でも死亡率は約8%と高い。死亡リスクをさらに低下させる新治療戦略を検討するためには,AF例におけるwarfarinとくらべたDOACの死亡リスクに対する特有の影響(死因)を明らかにすることが必須である。
AF患者における死因を明確にし,さらにDOACとwarfarinで死因に違いがあるかを探索するために,AF患者において脳卒中/全身性塞栓症(SE)予防を検討したDOACのランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施した。
主な評価項目は,全死亡,原因別死亡。
対象 71,683例・4試験*。脳卒中高リスクAF患者において,承認されている新規DOAC(dabigatran,rivaroxaban,apixaban,edoxaban)をwarfarinと比較したRCTで,追跡期間が≧1年のもの。pivotal RCTの試験薬群で検討された全用量も含んだ。
■試験・患者背景:非盲検化試験であったRE-LY以外の3試験は低バイアスリスク。
年齢(平均または中央値)70-73歳,男性:60-65%,永続性/持続性AF:67-83%,CHADS2スコア(2.1-3.5),うっ血性心不全(CHF):32-63%,高血圧:79-94%,糖尿病:23-40%,脳卒中/SE既往:19~55%,ビタミンK拮抗薬(VKA)投与歴:50-63%。
*RE-LY(dabigatran),ROCKET AF(rivaroxaban),ARISTOTLE(apixaban),ENGAGE AF-TIMI 48(edoxaban)。
方法 Medline,CENTRAL(2016年5月まで),規制当局,臨床試験登録のウェブサイト,学会抄録を検索した。さらに未発表データを研究責任者に問い合わせた。
メタ解析はPRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)推奨に従って実施。ランダム効果モデルで各試験を統合し,全死亡率,原因別死亡率を算出した。主解析は変量効果モデル(Der-Simonian and Laird)を使用。
致死的出血性脳卒中は致死的出血に分類し,死亡は独立した委員会が盲検化して判定した。
結果 [全死亡,死因別死亡のdescriptive analysis]
134,046例・年の追跡で,死亡は6,206例(9%)でDOAC群3,579例,warfarin群2,627例。うち血管死は64%(DOAC群,warfarin群いずれも64%),心臓死46%(それぞれ47%,44%),突然死・不整脈死が28%(29%,27%),次いで心不全死15%,心筋梗塞死3%。全死亡の5.7%が虚血性脳卒中/SE,5.6%が出血関連死。一方,非血管死は30%(31%,28%)で,悪性腫瘍による死亡11%(12%,10%),感染による死亡9%(9%,8%),不明が6%(5%,8%)であった。
年間の平均死亡率は4.63%/年(3.99-5.32)であったが,試験間に有意な異質性がみられた(P<0.0001,I ²=95.5%)。
死因別年間死亡率は,心臓死:2.07%/年(95%信頼区間1.55-2.68%/年),非血管死:1.37%/年(1.18-1.57%/年)。出血関連死は0.27%/年(0.19-0.35%/年),虚血性脳卒中/SEは0.26%/年(0.20-0.32%)。
抗凝固薬による年間死亡率は,DOAC群4.46%/年(3.85-5.12%/年) vs warfarin群4.87%/年(4.15-5.64%/年)で,死因の主な違いは致死的出血であった(0.19%/年[0.13-0.26%/年] vs 0.38%/年[0.28-0.49%/年])。

[患者背景]
死亡例は生存例とくらべ有意に高齢で(+3.2歳),クレアチニンクリアランスが低く(-9.9mL/分),男性(オッズ比1.24)・CHF既往(1.75)・糖尿病(1.37)・永続性/持続性AF(1.38)が多く,VKA使用歴が少なかった(0.88)。

[死因別死亡におけるDOAC群とwarfarin群の違い]
全死亡に対するDOAC群はwarfarin群とくらべ相対リスク差において有効性が認められた(リスク比0.90;95%信頼区間0.86-0.95)。血管死(0.89;0.84-0.95)も同様で,両群間差は主にDOAC群の致死的出血(出血性脳卒中,その他の頭蓋内外出血)の低下によった。しかし,出血性血管死(0.49;0.40-0.61),非出血性血管死(0.95:0.89-1.01)には有意な異質性がみられた(P<0.00001,I ²=97%)。
DOAC群による全死亡抑制は,42例/10,000例・年で,年間1例の死亡を予防するためにはwarfarinに代えDOACで約238例治療する必要がある。

(収載年月2017.02)
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