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高血圧とSBP≧110-115mmHgによる世界的な健康損失(1990-2015年:GBD 2015)
meta-analysis

2015年におけるSBP≧110-115mmHgの推定成人数は世界で35億人,≧140mmHgは8億7,400万人。
不確実な推定もあるものの,SBP上昇例(≧110-115mmHg,≧140mmHg)は1990年からの25年間(-2015年)で増加し,SBP上昇に関連する死亡と障害調整生存年数も増加した。
Forouzanfar MH, et al. Global burden of hypertension and systolic blood pressure of at least 110 to 115 mm Hg, 1990-2015. JAMA. 2017; 317: 165-82. PubMed

コメント

これまで至適収縮期血圧は120mmHgとされてきたが,本論文はそれよりさらに低い110-115mmHgですら健康への負担になるレベルという世界規模869万人の疫学データのメタ解析結果である。
本論文は1990-2015年にかけての25年の間に収縮期血圧が110-115mmHgの割合は10万人当たり73,119人から81,373人に上昇し,140mmHg以上の人の割合は,17,307人から20,526人に上昇したという。110-115mmHgの死亡との関連でみると135.6から145.2/10万人へ上昇,140mmHg以上では97.9から106.3/10万人へと上昇したという。
血圧ともっとも関連の深かった疾患は,虚血性心疾患,次いで脳出血,脳梗塞であった。
血圧と死亡あるいは有病率を統計的一側面からのみ観測した結果である。血圧値のみの変遷に注目すると“血圧は血管に対する負荷である”,あるいは“the lower, the better”であることを示した点では理解できるが,身体活動,精神活動などを含めた生活の質は110-115mmHgはむしろ低下する。したがってこのレベルが血管にとって安全とは言えても,生活を営む上での最適血圧とは限らず,このレベルまで一律に下げるべきということではない。自動車に例えていうと,「自動車は時速30km以上で走ると車の寿命を縮めます」というような結果である。1990年から2015年の血圧値の変化は,世界人口の高齢化に伴うものであろう。(桑島

目的 収縮期血圧(SBP)≧110mmHgの上昇は虚血性心疾患や脳血管疾患などの心血管疾患(CVD),慢性腎臓病(CKD)などの腎疾患と関連する。世界的な肥満の増加でSBPの上昇が懸念される集団もあり,予防的介入,安価で有効な降圧薬による降圧治療が可能になったにもかかわらず,SBP≧110mmHgによる負担(健康の損失)はいまだに大きい。先に発表されたGBD 2015(Global Burden of Disease, Injuries and Risk Factor Study 2015. Lancet 2016; 388: 1659-724. PubMed)によると,障害調整生存年数(DALY)に対する危険因子の関連度は41%で,うちSBPの影響は肥満,喫煙よりも大きく最大の危険因子である。
GBD 2015の一環として,SBP≧110-115mmHgの上昇と年齢,性による死因別死亡,DALYとの関係を探索するため,世界的な1990-2015年のデータに基づき,25年間のSBP≧110-115mmHg,≧140mmHgのリスクを評価し比較した。
主要評価項目は,平均SBP,年齢,性,国,暦年別の死因別死亡,SBP(≧110-115mmHg,≧140mmHg)に関連する健康損失(危険因子,CVD)。
対象 869万人・844研究(154ヵ国)。1980-2015年に文献発表された研究。25歳以上。
方法 GBD 2010のレビューに,PubMedを検索し(2009年7月15日-’15年12月31日),血圧計でSBPを測定した住民ベースの研究を追加した。SBPとの関連を示す十分なエビデンスのある虚血性心疾患,虚血性・出血性脳卒中を主解析に含んだ。
喫煙率推定や肥満などの世界的な健康問題の推定に広く使用されている時空間ガウス過程回帰モデル(Spatiotemporal Gaussian process regression)で年齢,性,国,暦年で調整した平均SBPを推定した。
次の5項目を順に解析した。(1) 年齢,性,国ごとのSBPの推定分布(平均,ばらつき),(2) 前向きコホート研究の統合に基づくSBP 110-115mmHgに関連するCKDを含む10のCVD,腎転帰の推定相対リスク,(3) リスクが最低レベルのSBP値,(4) 最低リスクを超えるSBPに関連する原因別人口寄与割合(PAF),(5) 国,年齢,性,暦年ごとのPAFによるSBP≧110-115mmHgに関連する死亡,DALY。
結果 [SBPの変化]
SBP≧110-115mmHg 上昇例は1990年の18億7,000万人から2015年には34億7,000万人に,≧140mmHgのものは4億4,200万人から8億7,400万人に増加した。
1990-2015年の25年間で,≧110-115mmHgの成人は10万人当たり73,119人(95% uncertainty interval[不確実区間:UI]67,949-78,241)から81,373人(76,814-85,770)に,また≧140mmHgのものも17,307人(17,117-17,492)から20,526人(20,283-20,746)に増加した。

[SBP関連の死亡]
さらに,SBPに関連した年間推定死亡率も上昇した(≧110-115mmHg:1990年;135.6人[122.4-148.1]→2015年;145.2人[130.3-159.9]/10万人,≧140mmHg:97.9人[87.5-108.1]→106.3人[94.6-118.1]/10万人)。SBP≧110-115mmHg例増加に関連した年間推定死亡数は720万人から1,070万人に増加し,年間1.6%上昇した。
≧140mmHgは≧110-115mmHg関連死の73.2%を占め,全死亡におけるPAFは14.0%。

[SBP関連のDALY]
SBP≧110-115mmHg関連による損失DALYは,1990年の1億4,800万年(1億3,400万-1億6,200万)から2015年には2億1,100万年(1億9,300万-2億3,100万)に,≧140mmHg関連は9,590万年(8,700万-1億490万)から1億4,300万年(1億3,020万-1億5,700万)に増加した。
≧110-115mmHg関連DALYの29%がSBP 115-140mmHg例,26%は140-150mmHg例,45%が≧150mmHg例。

[死因別SBP関連死]
≧140mmHg関連死の41%(95%UI 35.9-45.4%)はCVDに関連した。
どの血圧レベルでももっとも多かったのは,虚血性心疾患死(490万例[400万-570万];PAF 54.5%),次いで出血性脳卒中死(200万例[160万-230万;58.3%]),虚血性脳卒中死(150万例[120万-180万];50.0%)。

[年齢,性別]
死亡およびDALYは加齢とともに増加した。年齢による増加は25-29歳から始まり(≧110-115mmHg関連男性DALYは250万年,女性は110万年),80歳以上まで増加した(それぞれ1,100万年,1,560万年)。75歳以降を除き,総健康損失は女性より男性のほうが大きかった。≧60歳では健康損失の>66%がSBP≧140mmHg例で,25-29歳ではCVDの30%が≧140mmHg例だった。

[国別のSBP≧110-115mmHgに関連するDALY]
年齢標準化DALY比率には地域,国により大きな開きがあった(アジア太平洋高所得地域:1,025.66年-オセアニア:7,022.18年)。
2015年のSBP≧110-115mmHgに関連するDALY全体の半数以上を中国,インド,ロシア,インドネシア,米国が占めていた。

(収載年月2017.04)
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