高用量の非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の有効性および安全性に,心臓弁膜症合併の有無による違いはない。
Renda G, et al: Non-viamin K antagonist oral anticoagulants in patients with atrial fibrillation and valvular heart disease. J Am Coll Cardiol. 2017; 69: 1363-71. PubMed
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弁膜症ことに僧帽弁狭窄症,機械弁置換術を合併した心房細動は,塞栓症リスクが高く,抗凝固療法の適応とされている。弁膜疾患でも上記以外のものは経験的に塞栓症リスクが低く,NOACのグローバル開発試験でも対象に組込まれている。個々のNOACの開発試験のサブ解析で,対象に組込まれた弁膜疾患に対するNOACとwarfarinの効果については,全体の試験の結果と同様であることが報告されている。今回,4つのNOACの開発試験を対象にしたメタ解析の結果,NOACとwarfarinの効果に関して弁膜疾患合併例と非合併例の間に差がないことが明らかにされた。
このメタ解析に含まれた弁膜疾患は大部分(73%~88%)が僧帽弁閉鎖不全症で,大動脈弁閉鎖不全がこれに次いでいる(13%~24%)。僧帽弁狭窄症・機械弁置換例以外の弁膜疾患合併例は,「弁膜症性」心房細動とは別に扱うべきことが示された。弁膜疾患でありながら,「非弁膜症性」と形容することには問題があり,MARM-AF(mechanical and rheumatic mitral valvular AF)という呼称の提案もある。(井上)
PubMed,ClinicalTrials.gov,Cochrane Library,Web of Science,主要な心臓学会の抄録,theheart.org,escardio.org,ResearchGate等のウェブサイトで英語の文献を検索(2007年1月~’16年8月)。SSEE,大出血,頭蓋内出血(ICH),全死亡について,NOAC群のwarfarin群に対する95%信頼区間(CI)での推定リスク比(RR)をVHDの有無別に各試験より抽出し統合した。
結果
[VHD合併例の患者背景]
非合併例にくらべ,高リスク(71-75歳 vs 69-72歳,持続性AF:80-88% vs 74-84%,既往:心不全:40-74% vs 30-61%;冠動脈疾患:17-40% vs 13-32%;高血圧:77-93% vs 79-94%,CHADS2スコア[ROCKET AFを除く]:2.2-2.9 vs 2.1-2.8)だった。