循環器トライアルデータベース
HOME
トライアル検索
フリーワード検索
*検索について
トライアル名検索
1 4 5
A B C D E F
G H I J K L
M N O P Q R
S T U V W X
Y Z
疾患分類検索
薬効分類検索
薬剤名検索
治療法検索
キーワード検索
掲載トライアル一覧
学会情報
meta-analysis, pooled analysis
日本のトライアル
Trial Review
用語説明
Topic
開設10周年記念座談会
開設5周年記念座談会
AHA2012/ISH2012特別企画
このサイトについて
ライフサイエンス出版のEBM関連書籍
meta-analysis, pooled analysis
← meta-analysis, pooled analysis のトップページへもどる
心不全のない安定CAD患者におけるRAS阻害薬
meta-analysis

心不全非発症の安定CAD患者において,RAS阻害薬群でCVイベント,死亡リスクの低下が認められたのはプラセボ対照試験のみで,実薬対照試験では認められなかった。プラセボ対照試験でも,RAS阻害薬の有効性は主に対照群のイベント発生率が高い試験でみられ,低い試験ではみられなかった。
Bangalore S, et al. Renin angiotensin system inhibitors for patients with stable coronary artery disease without heart failure: systematic review and meta-analysis of randomized trials. BMJ. 2017; 356: j4. PubMed

コメント

心不全のない安定CAD患者に対するRAS阻害薬の有効性については,海外のガイドラインでもIaに分類されている。今回のメタ解析で,プラセボ群に比較すると優越性があるが,他の降圧薬などの実薬群(active control)と比較すると差がなかったという成績が報告された。これは,PCIが頻回に実施されるようになり,スタチンが広く投与されるようになったため残余リスクの低下により,RAS阻害薬の有効性が顕在化しにくくなっているためである。心筋梗塞患者に対するβ遮断薬の有効性についても同様の傾向がみられる。それだけ,標準治療の有効性が高くなっていることを意味しているが,RAS阻害薬の重要性は変わっていないことを銘記すべきであり,今回の解析で糖尿病リスクが低下していることも見逃してはならない。(


目的 American College of Cardiology Foundation (ACCF) / AHAガイドラインでは,安定虚血性心疾患患者に対し,高血圧,糖尿病,EF≦40%,慢性腎臓病合併患者(class I, level A)は禁忌を除き,または他の血管疾患合併患者(class IIa)にはレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬を推奨している。しかし,推奨の参照文献は心不全のない冠動脈疾患(CAD)患者において心血管イベント,全死亡リスクをプラセボより低下させたという早期の報告(HOPE,EUROPA)で,ベースライン時の収縮期血圧(SBP)が<140mmHgの患者においてであり,対照群との血圧差も小さかった。また,その後実施された試験(PEACE,QUIET,CAMELOT,IMAGINE)では,血行再建術や脂質低下治療など併用治療が改善しイベント発生率が低く,RAS阻害薬群のプラセボ群とくらべた有効性は示せなかった。
心不全を発症していないCAD患者において,実薬対照群,プラセボ群とくらべたRAS阻害薬群の有効性を厳密に評価した。
主要評価項目は,全死亡,心血管死,心筋梗塞,脳卒中,狭心症,心不全。
対象 61,961例・24試験。心不全(EF≧40%あるいは臨床的心不全)のないCAD患者におけるRAS阻害薬(ACE阻害薬あるいはARB)をプラセボまたは実薬と比較したランダム化比較試験で,≧100例を登録し,≧1年追跡し,転帰(主要評価項目の他,血行再建術,糖尿病,有害事象による試験薬投与中止)の報告のあるもの。
除外試験:いかなる理由であれ編集されたもの,あるいはACE阻害薬とARBを比較したものなど。
■試験背景:平均追跡期間3.2年(198,275例・年)。急性心筋梗塞発症から3ヵ月以内の患者登録;5試験,プラセボ対照試験;18試験,実薬対照試験;対照群がCa拮抗薬は4試験,ベースライン時のSBP<140mmHg;19試験。
方法 PubMed,EMBASE,CENTRALを2016年5月1日まで検索した。
固定効果モデルとランダム効果モデル(DerSimonian-Laird法)を使用しメタ解析サマリー推定(率比)を算出し,RAS阻害薬群と実薬対照群が比較できる十分な検出力があるかを評価するためsequential analysis(逐次解析)を行った。治療効果とイベントコントロールの相関関係を適切に示すベイズメタ回帰分析(Bayesian meta-regression)を実施した。
結果 [全死亡]
RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべ全死亡リスクが低かった(発症比0.84;95%信頼区間0.72-0.98)が,実薬対照群との比較では低下はみられなかった(1.05;0.94-1.17)(交互作用P=0.006)。
RAS阻害薬群のプラセボ群にくらべた全死亡抑制効果が認められたのは,イベント発生率の高い(>14.10例/1,000患者・年)試験のみで,低発生率試験では認められなかった(ベイズメタ回帰分析)。
累積Z曲線からRAS阻害薬群の実薬対照群とくらべた15%の低下は示されなかった(逐次解析)。プラセボ対照試験は中等度の異質性があったが,実薬群対照試験では有意な異質性はなかった。

[心血管死]
RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべ心血管死リスクが低かった(0.74;0.59-0.94)が,実薬群とは同等であった(1.08;0.93-1.25)(交互作用P<0.001)。
RAS阻害薬群のプラセボ群に対する有効性は,イベント高発生率(>7.65/1,000患者・年)試験のみでみられた。
累積Z曲線からRAS阻害薬群の実薬対照群とくらべた15%の低下は示されなかった(逐次解析)。

[心筋梗塞]
RAS阻害薬群はプラセボ群よりも心筋梗塞リスクが低かった(0.82;0.76-0.88)が,実薬群とは同等であった(0.99;0.87-1.12)(交互作用P=0.01)。
RAS阻害薬群の有効性は,イベント率の高い試験のみで,またプラセボ対照試験,主に試験終了時のSBP群間差が大きい試験でみられた。
累積Z曲線からRAS阻害薬群の実薬対照群とくらべた20%の低下は示されなかった(逐次解析)。
試験に統計的異質性はみられなかった。

[脳卒中]
RAS阻害薬群はプラセボ群にくらべ脳卒中リスクが低下した(0.79;0.70-0.89)が,実薬対照群とくらべた低下はみられなかった(1.10;0.93-1.31)(交互作用P=0.002)。
プラセボ群とくらべたRAS阻害薬群の脳卒中に対する有効性は,イベント抑制効果の高い試験ではみられたが,低い試験では認められなかった。
統計的異質性はみられない,あるいは低かった。

[狭心症]
RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべ狭心症リスクが低かった(0.94;0.89-0.99)が,実薬対照群とは同等だった(1.07;0.85-1.35)(交互作用P=0.03)。
プラセボ対照試験では異質性が低かったが,実薬対照試験では中等度であった。

[心不全]
RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべ心不全リスクが低かった(0.78;0.71-0.86)が,実薬対照群との比較での低下はみられなかった同等(0.89;0.62-1.29)(交互作用P=0.49)。
異質性は,プラセボ対照試験では中等度であったが,実薬対照試験ではみられなかった。

[その他]
血行再建術:RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべリスクが低かった(0.93;0.89-0.98)が,実薬対照群とは同等だった(1.02;0.94-1.12);交互作用P=0.07。解析の異質性は低かった。
糖尿病:RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべても(0.84;0.76-0.92),実薬対照群との比較(0.39;0.16-0.93)でもリスクが低かった(交互作用P=0.09)。異質性は中等度であった。
有害事象による試験薬投与中止:ACE阻害薬群は対照群より有意に多かった(1.57;1.25-1.99)が,ARB群に増加はみられなかった(0.66;0.34-1.28)(交互作用P<0.001)。異質性は高かった。

[感度解析]
プラセボ対照試験では,RAS阻害薬群の有効性はベースラインSBPとは独立していた(交互作用P>0.05)。RAS阻害薬群のプラセボ群を上回る有効性は最近の心筋梗塞発症例,安定虚血性心疾患患者でみられた(交互作用P>0.05)が,死亡(交互作用P=0.004),心血管死(交互作用P<0.001)抑制効果は心筋梗塞発症例のほうが大きかった。
実薬対照試験ではベースラインSBPにかかわらず(交互作用P>0.05),RAS阻害薬群の有効性はみられなかった。また,最近発症した心筋梗塞患者における試験はなかった。
固定効果モデルでACE阻害薬群が実薬対照群にくらべ狭心症の増加がみられたが,ランダム効果モデルではみられなかった。

(収載年月2017.06)
▲pagetop
    --------------------
© 2001-. Life Science Publishing Co., Ltd
 
携帯版 EBM LIBRARY