[全死亡]
RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべ全死亡リスクが低かった(発症比0.84;95%信頼区間0.72-0.98)が,実薬対照群との比較では低下はみられなかった(1.05;0.94-1.17)(交互作用P=0.006)。
RAS阻害薬群のプラセボ群にくらべた全死亡抑制効果が認められたのは,イベント発生率の高い(>14.10例/1,000患者・年)試験のみで,低発生率試験では認められなかった(ベイズメタ回帰分析)。
累積Z曲線からRAS阻害薬群の実薬対照群とくらべた15%の低下は示されなかった(逐次解析)。プラセボ対照試験は中等度の異質性があったが,実薬群対照試験では有意な異質性はなかった。
[心血管死]
RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべ心血管死リスクが低かった(0.74;0.59-0.94)が,実薬群とは同等であった(1.08;0.93-1.25)(交互作用P<0.001)。
RAS阻害薬群のプラセボ群に対する有効性は,イベント高発生率(>7.65/1,000患者・年)試験のみでみられた。
累積Z曲線からRAS阻害薬群の実薬対照群とくらべた15%の低下は示されなかった(逐次解析)。
[心筋梗塞]
RAS阻害薬群はプラセボ群よりも心筋梗塞リスクが低かった(0.82;0.76-0.88)が,実薬群とは同等であった(0.99;0.87-1.12)(交互作用P=0.01)。
RAS阻害薬群の有効性は,イベント率の高い試験のみで,またプラセボ対照試験,主に試験終了時のSBP群間差が大きい試験でみられた。
累積Z曲線からRAS阻害薬群の実薬対照群とくらべた20%の低下は示されなかった(逐次解析)。
試験に統計的異質性はみられなかった。
[脳卒中]
RAS阻害薬群はプラセボ群にくらべ脳卒中リスクが低下した(0.79;0.70-0.89)が,実薬対照群とくらべた低下はみられなかった(1.10;0.93-1.31)(交互作用P=0.002)。
プラセボ群とくらべたRAS阻害薬群の脳卒中に対する有効性は,イベント抑制効果の高い試験ではみられたが,低い試験では認められなかった。
統計的異質性はみられない,あるいは低かった。
[狭心症]
RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべ狭心症リスクが低かった(0.94;0.89-0.99)が,実薬対照群とは同等だった(1.07;0.85-1.35)(交互作用P=0.03)。
プラセボ対照試験では異質性が低かったが,実薬対照試験では中等度であった。
[心不全]
RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべ心不全リスクが低かった(0.78;0.71-0.86)が,実薬対照群との比較での低下はみられなかった同等(0.89;0.62-1.29)(交互作用P=0.49)。
異質性は,プラセボ対照試験では中等度であったが,実薬対照試験ではみられなかった。
[その他]
血行再建術:RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべリスクが低かった(0.93;0.89-0.98)が,実薬対照群とは同等だった(1.02;0.94-1.12);交互作用P=0.07。解析の異質性は低かった。
糖尿病:RAS阻害薬群はプラセボ群とくらべても(0.84;0.76-0.92),実薬対照群との比較(0.39;0.16-0.93)でもリスクが低かった(交互作用P=0.09)。異質性は中等度であった。
有害事象による試験薬投与中止:ACE阻害薬群は対照群より有意に多かった(1.57;1.25-1.99)が,ARB群に増加はみられなかった(0.66;0.34-1.28)(交互作用P<0.001)。異質性は高かった。
[感度解析]
プラセボ対照試験では,RAS阻害薬群の有効性はベースラインSBPとは独立していた(交互作用P>0.05)。RAS阻害薬群のプラセボ群を上回る有効性は最近の心筋梗塞発症例,安定虚血性心疾患患者でみられた(交互作用P>0.05)が,死亡(交互作用P=0.004),心血管死(交互作用P<0.001)抑制効果は心筋梗塞発症例のほうが大きかった。
実薬対照試験ではベースラインSBPにかかわらず(交互作用P>0.05),RAS阻害薬群の有効性はみられなかった。また,最近発症した心筋梗塞患者における試験はなかった。
固定効果モデルでACE阻害薬群が実薬対照群にくらべ狭心症の増加がみられたが,ランダム効果モデルではみられなかった。
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