非狭窄性CADに基づく狭心症患者における長期予後の決定因子
meta-analysis
狭窄度50%未満の非狭窄性冠動脈を責任病変とする狭心症患者の予後はさまざまだが,冠動脈アテローム性動脈硬化の存在が主要有害イベントの主たる決定因子であり,明らかな心筋虚血があれば,転帰はより不良となる。
Radico F, et al. Determinants of long-term clinical outcomes in patients with angina but without obstructive coronary artery disease: a systematic review and meta-analysis. Eur Heart J. 2018; 39: 2135-46. PubMed
目的 |
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有意病変を伴わない(主要心外膜側冠動脈≧50%狭窄を認めない)非狭窄性冠動脈疾患(CAD)に基づく狭心症患者は,心筋虚血診断の有無はさておき,冠動脈造影施行患者の20~30%で認められると報告され,比較的よく目にする病態である。’angina without obstructive CAD’,あるいは時として’ angina with normal coronary arteries’と称されるこの疾患群の予後については,いまだ意見の一致をみていない。症候性の安定狭心症あるいはそれに類する非狭窄性冠動脈疾患症例を対象とした観察研究の系統的レビューおよびメタ解析により,その長期転帰を評価する。主要評価項目は,全死亡と非致死性心筋梗塞(MI)の複合エンドポイント発生率。 |
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対象 |
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35,039例(うち5研究は全死亡のみの報告)。追跡期間中央値5年。安定狭心症(狭心症様も含む),冠動脈正常の冠攣縮性狭心症,冠動脈造影または冠動脈CTで非狭窄性CADと診断された有症候性症例で,心血管イベントの報告がある研究を抽出。
■患者背景:平均年齢56歳(男女比:0.51)。 |
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方法 |
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1980~2017年1月に収載された,PubMed, Cochrane Library, Embase, NIH Clinical Trials Registryの文献を検索し,系統的レビューおよびメタ解析を実施。random-effectsモデルを用いて複合エンドポイント発生率を推算した。
イベント発症率は,研究間の追跡期間の異質性を考慮し,イベント数はリスク/人・年の比で算出。
χ²検定を実施し,研究間の統計学的異質性を評価(I ² ≧50%:異質性あり)。 |
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結果 |
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[主要評価項目]
5年複合エンドポイント発生率0.98//100人・年(95%信頼区間 0.77~1.19;I ² =91%, P <0.01)。
[サブグループ解析およびメタ回帰解析]
臨床的および統計学的異質性が大きかったため,要因探索のため実施した。
・単変量メタ回帰解析の結果,主要評価項目の複合エンドポイント発生率は脂質異常症,糖尿病および高血圧の既往と有意に関連していた(P =0.011, P =0.049, P =0.038)が,その他の心血管リスク因子(年齢,性別,喫煙歴,肥満,BMI)とは有意な関連は示されなかった。
・狭窄度50%未満の非狭窄性CAD患者と正常冠動脈患者との比較
狭窄度50%未満の非狭窄性CAD患者のほうが有意に高かった[1.32(1.02~1.62)vs. 0.52/100人・年(0.34~0.79), P =0.01]。
・非侵襲的画像診断法(stress echocardiographyまたはnuclear imaging)で確認された心筋虚血は運動負荷心電図による心筋虚血よりもイベント発生率が高かった[1.52(0.45~2.58)vs. 0.56(0.23~0.88)/100人・年, P =0.02]。
[副次評価項目]
全死亡(/100人・年):推算統合死亡率0.65(0.50~0.79),I ²=88%, P <0.01。
非致死的MI(/100人・年):統合発症率0.32(0.24~0.39),I ²=74%, P <0.01。
心血管疾患による入院(/100人・年):統合発生率2.62(2.14~3.09,I ²=92%, P <0.01。
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