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抗血小板薬clopidogrelの有効性,安全性の性差
collaborative meta-analysis

clopidogrelは男女いずれにおいても心血管イベントリスクを低下したが,重大な出血リスクが増大した。
Berger JS et al. The relative efficacy and safety of clopidogrel in women and men. A sex-specific collaborative meta-analysis. J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 1935-45. PubMed

コメント

抗血小板薬であるaspirinは男性においては心筋梗塞発症予防効果が,女性においては脳卒中発症予防効果がメタ解析により示され,有効性の性差の存在が示唆された。clopidogrelの有効性の性差を過去の試験のメタ解析により検証したのが本試験である。各種細胞に存在するcyclooxygenaseを阻害するaspirinと異なり,clopidogrelの効果はほぼ血小板のみに存在するP2Y12阻害に依存している。血小板の生理機能に性差がないことを考えれば,clopidogrelの薬効に性差がないことも当然と考えられる。(後藤

目的 さまざまな循環器疾患において,血小板活性化阻害薬が心血管疾患(CVD)による合併症,死亡を抑制することが示されているが,いくつかの抗血小板薬に対する反応に性差があることを報告している試験もある。
2006年にaspirinによるCVD一次予防における性差が報告されたが(JAMA; 295: 306-13.),イベント数は男女同等であったものの,もっともリスクを低減したのが女性は脳卒中,男性は心筋梗塞(MI)であった。GP IIb/IIIa受容体拮抗薬にも同様の報告がある。
clopidogrelは最もよく使われている抗血小板薬で,ACS最新ガイドラインではさまざまな臨床状態においてclass I・グレード(エビデンスレベル)Aの推奨であるにもかかわらず,性差に関するデータはほとんどない。また女性の結果は複合エンドポイントをまとめたもの(主要CVDなど)が多く,個々のイベント結果の報告は少ない。
clopidogrelに対する反応の性差をより理解するためにメタ解析を行った。
対象 7万9,613例(女性2万3,522例[30%])。
試験選別基準:1) 前向きプラセボ対照ランダム化試験,盲検あるいはオープン試験,2) 参加者をclopidogrel群,プラセボ群に割付けた試験,3) 全死亡,心血管死,MI,脳卒中,大出血のデータがある試験。

プラセボ対照・二重盲検の5試験(CURE[2001年発表・女性38.5%・国際協同研究],CREDO[2003年・28.6%・アメリカで実施],CLARITY-TIMI 28[2005年・19.7%・国際協同],COMMIT[2005年・27.8%・中国],CHARISMA[2006年・29.8%・国際協同])の対象。
3試験はclopidogrel 300mgをローディング投与,全5試験の投与量/日は75mg。全試験でaspirinも投与:CHARISMA試験は75~162mg/日,あとの4試験は75~325mg/日。
方法 1999年~2007年5月に発表された試験をインターネットによる検索エンジン(PubMed,OVID)を利用してMedline,Cochrane Central Register of Controlled Trialsを包括的に検索した。
検索用語はclopidogrel,cardiovascular disease,MI,stroke,percutaneous coronary intervention,randomized controlled trialsで,これらの組合わせでも行った。
random-effects(変量効果)モデルを使用して,clopidogrelの心血管イベント(心血管死,MI,脳卒中)の相対抑制効果・安全性を推定した。
結果

・主要心血管イベント(心血管死,非致死的MI,非致死的脳卒中の複合)
(女性)2,680例発生し,clopidogrel群,プラセボ群間に有意差はなかった(11.0% vs 11.8% : オッズ比0.93 ; 95%信頼区間0.86-1.01)。
(男性)4,704例発生し,clopidogrel群はプラセボ群に比べ有意に16%抑制した(7.8% vs 9.0% : 0.84 ; 0.78-0.91)。
男女間に弱い不均一の傾向がみられたが(P=0.092),統計的な有意には至らなかった。

・死亡率
(女性)死亡は2,069例でclopidogrel群でのリスク低下はみられなかった(8.7% vs 8.8% : 0.99 ; 0.90-1.08)。
5試験中4試験の死因を解析したが,clopidogrelと心血管死とに関連は認められなかった(1.04 ; 0.86-1.25)。
(男性)死亡は3,197例で,clopidogrel群で全死亡リスクが有意に9%低下した(5.4% vs 6.0% : 0.91 ; 0.84-0.97)。心血管死のリスク低下も同等であった(0.92 ; 0.80-1.06)が,有意な低下ではなかった。
男女間に異質性は認められなかった(P=0.158)。

・MI
(女性)766例発症(2.9% vs 3.6% : 0.81 ; 0.70-0.93)。MIリスクが低下したどの試験もclopidogrel投与と関連していた。
(男性)1,729例発症(2.8% vs 3.4% : 0.83 ; 0.76-0.92)。
男女間に異質性は認められなかった(P=0.733)。

・脳卒中
(女性)399例発症し,clopidogrel群でリスクが低下したものの有意ではなく(1.6% vs 1.9% : 0.91 ; 0.69-1.21),病型別では脳梗塞(0.89 : 0.71-1.12),脳出血(1.2% vs 1.4% : 0.82 ; 0.29-2.32)。
(男性)739例発症し,clopidogrel群はプラセボ群より有意に低下し(0.83 ; 0.71-0.96),病型別にみると脳梗塞は有意に16%低下(0.84 ; 0.71-0.99),脳出血は有意差はなかった(0.95 ; 0.66-1.36)。
男女間に異質性は認められなかった(P=0.552)。

・重大な出血(各試験の定義に拠る)
(女性)333例発生し,clopidogrel群で有意にリスクが増大した(1.7% vs 1.2% : 1.43 ; 1.15-1.79)。重大な出血リスクが増大したいずれの試験でもclopidogrel投与と関連した。
(男性)683例発生し,clopidogrel群で有意にリスクが増大した(1.3% vs 1.1% : 1.22 ; 1.05-1.42)。
男女間に異質性は認められなかった(P=0.243)。

・サブグループ解析
[ACS例におけるオッズ比]
主要心血管イベント : (女性)0.93 ; 0.85-1.01,(男性)0.83 ; 0.74-0.93,全死亡 : 0.99 ; 0.90-1.09,0.89 ; 0.82-0.97,MI : 0.80 ; 0.68-0.94,0.82 ; 0.73-0.91,脳卒中 : 0.80 ; 0.45-1.45,0.83 ; 0.68-1.00,重大な出血 : 1.50 ; 1.14-1.97,1.18 ; 0.96-1.44。
[心血管疾患例におけるオッズ比]
主要心血管イベント : (女性)0.93 ; 0.85-1.01,(男性)0.84 ; 0.78-0.92,全死亡 : 0.98 ; 0.89-1.07,0.90 ; 0.83-0.96,MI : 0.81 ; 0.70-0.94,0.82 ; 0.74-0.90,脳卒中 : 0.92 ; 0.67-1.27,0.81 ; 0.69-0.94,重大な出血 : 1.43 ; 1.14-1.79,1.19 ; 1.02-1.40。


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