ACS患者の30日死亡率には性差がみられるが,その差はACSの病型や血管造影上の重症度によって異なる。
Berger JS, et al. Sex differences in mortality following acute coronary syndromes. JAMA. 2009; 302: 874-82. PubMed
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今回のpooled analysisではランダム化試験 11件のデータベースを有する Duke Clinical Research Instituteからの136,247名に及ぶ膨大な症例が解析され,データの信頼性は非常に高く検出力も十分である。その結果改めて明らかになったのは,男性に比し女性の方で ACS発症年齢が高く,冠動脈病変は軽症例が多いことであった。短期死亡率に関しては,背景因子補正後に有意差がなくなるが,病型別に見ると ST上昇型心筋梗塞(STEMI)では有意に高く,非STEMI・不安定型狭心症では有意に低かった。さらに血管造影所見を補正すると性差はほとんど消失した。
最近,女性の生理学的/生物学的特性を加味した gender specific medicineが脚光を浴びているが,ACSの急性期予後については性差より背景因子や造影所見が重要ということになろう(中野・中村・永井)。
[一次エンドポイント:ACS発症から30日以内の全死亡]
調整前の30日死亡率は女性が男性に比べ有意に高かったが(女性9.6% vs 男性5.3%,調整前オッズ比[OR]1.91;95%信頼区間1.83-2.00),患者背景(臨床上の特徴)により多変量調整すると有意差は消失した(調整後OR 1.06;0.99-1.15)。
[血管造影上の重症度による結果]
女性は男性よりも非閉塞性疾患の有病率が高く,多枝病変の有病率が低い傾向がみられた(2枝病変:25% vs 28%,3枝病変:23% vs 26%)。
性差と30日死亡率の関連に血管造影上の重症度による違いは認められなかった(P for interaction=0.70)。